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20 囮と罠(1)

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 翌日、礼儀作法の授業後にラージュナに呼ばれ、お茶の相手をした。
 帰りはヴェルティスと一緒で、街に出ていたサンディラも合流してから部屋に戻った。

「良さそうな服はあった?」
「明日には新しいのが入荷するっていうから、服はそっちを見てからって感じだなァ。他のアイテムは良さそうなやつを見繕ったから……」
「……あれ?」

 部屋の入口でレーファが立ち止まる。自然、サンディラとヴェルティスも立ち止まった。

「どうした?」
「部屋、なんだかおかしくない?」
「……そういえば……」

 三人が部屋を見回す。
 一見何の変哲も、変化もないように見える。けれど、違和感があった。

「……花瓶の位置が変わってるのと……カーテンの開け方が変わってる、か」

 サンディラが顎をさすり、ヴェルティスが頷く。
 それからレーファを入口に残し、ふたりはぐるりと部屋の中を確かめた。誰かが潜んでいないか。何かを仕込まれていないか。

「ん……? ……サンディラ、これ」

 ベッドの足許の壁側に、小さな木箱が置かれていたらしい。蓋はズレているので開けられる。
 危険がないか、ふたりが蓋を開けて確認すると。

「これは……」
「うわ……」

 箱の中身を見て絶句したようだ。

「何があったの?」
「……楽器が壊されてる」
「え?!」

 慌ててふたりのところへ駆け寄った。
 レーファはふたつの楽器を持っている。
 ひとつは横笛、ひとつは胡弓だ。
 見下ろした木箱の中に収まっていたのは、棹が折れ、胴も無残に折られ、穴が空いた胡弓だ。もちろん自然の壊れ方であるはずがなかった。

「…………母様のじゃない」

 壊された胡弓は艶のある焦げ茶だが、母の胡弓は黒だ。ホッと胸を撫で下ろす。楽器を仕舞っている場所も確認したが、ふたつとも無事でそこにあった。
 母の形見の楽器は代わりがない。壊されなくて良かったと心底から思った。

 ――だが。

「じゃあ……これは、誰のだ……?」

 当然の疑問をヴェルティスが口にする。腕を組んだサンディラが難しい顔をした。
 よくよく観察すると、この胡弓も高価そうな雰囲気がある。趣味が良い者が持つような楽器だ。

「……面倒なことになりそうだな」
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