15 / 160
15 勉強(2)
しおりを挟む
「ふむ」
改めて皇国玉皇上帝・竜王の家系図を眺める。このうちのこれだけの竜人が真名を持つ、と小さな指でぐるりと円を描く。
「真名だけで考えると、玉皇上帝の血が特殊、ってことかな……一番いいのは、竜王同士の結婚なんだろうけど」
竜王は互いに兄弟とは限らない。皇帝の息子や娘が四人に満たない場合は、大公や公爵家から優秀な者が選抜されて竜王位を継ぐことがある。
「……清潤様と、義兄君の洪聖様がそうだったかな」
長兄で青竜王である滄寧と末弟の黒竜王洵澤は義兄弟で現上帝の実子だったはずだが、二番目の紅竜王洪聖と三番目の清潤は公爵家の出自だ。
青竜王と紅竜王とはほとんど面識がない。黒竜王の洵澤は偶然の出会いだったが、穏やかで優しく、男だが嫋やかと表現するのがぴったりの性質の竜王だった。
レーファにとって、彼だけが唯一の味方だったと言える。
(……今回も仲良くしてもらえるかな)
そこまで生きていることが前提になるが、と自分の考えに溜息を吐き、またページをめくった。
「勉強熱心なのは結構だが、そろそろ例の御方が帰ってくるってよ」
サンディラがレーファの部屋に顔を出す。レーファは本を閉じると慌てて立ち上がる。
「ありがとう、サンディラ」
「支度はほとんどできてるだろ?」
いつ帰ってくるかわからない以上、衣装だけは先に着てしまっている。手入れが念入りにされた橙の髪もととのえた。
「一応、鏡でチェックしないとね」
「いつも通りのかわいくて綺麗な俺たち自慢の王子様だよ」
サンディラの後ろから入ってきたヴェルティスが笑いながら言う。部屋の隅に置いた姿見に自分の姿を映してチェックしていたレーファはあははと笑った。
「皇国の竜人に、それだけで通じるといいんだけどね。……ラージュナさまはお戻りになられたら少しは休息をとられるだろうし、そんなにいそいで支度する必要はないと思うんだけど……」
言い切らぬうちから、廊下を走る音が聞こえてきた。すでに溜息を吐きたい気持ちになってくる。
息切らしやってきたのは、王宮の伝令官だった。
「レーファ王子! ラージュナ様がお戻りになられ、お部屋へお呼びです!」
「……わかった……」
はぁ、と肩を落としたレーファの背中を、ヴェルティスとサンディラは慰めるように軽く叩いた。
「俺たちも、部屋の前まではついていくから」
「うん……ありがとう……」
ラージュナが竜官経由で贈ってきた耳飾りも着けないとな。テーブルに置いたままの箱を手に取りつつ、はぁと溜息が漏れた。
改めて皇国玉皇上帝・竜王の家系図を眺める。このうちのこれだけの竜人が真名を持つ、と小さな指でぐるりと円を描く。
「真名だけで考えると、玉皇上帝の血が特殊、ってことかな……一番いいのは、竜王同士の結婚なんだろうけど」
竜王は互いに兄弟とは限らない。皇帝の息子や娘が四人に満たない場合は、大公や公爵家から優秀な者が選抜されて竜王位を継ぐことがある。
「……清潤様と、義兄君の洪聖様がそうだったかな」
長兄で青竜王である滄寧と末弟の黒竜王洵澤は義兄弟で現上帝の実子だったはずだが、二番目の紅竜王洪聖と三番目の清潤は公爵家の出自だ。
青竜王と紅竜王とはほとんど面識がない。黒竜王の洵澤は偶然の出会いだったが、穏やかで優しく、男だが嫋やかと表現するのがぴったりの性質の竜王だった。
レーファにとって、彼だけが唯一の味方だったと言える。
(……今回も仲良くしてもらえるかな)
そこまで生きていることが前提になるが、と自分の考えに溜息を吐き、またページをめくった。
「勉強熱心なのは結構だが、そろそろ例の御方が帰ってくるってよ」
サンディラがレーファの部屋に顔を出す。レーファは本を閉じると慌てて立ち上がる。
「ありがとう、サンディラ」
「支度はほとんどできてるだろ?」
いつ帰ってくるかわからない以上、衣装だけは先に着てしまっている。手入れが念入りにされた橙の髪もととのえた。
「一応、鏡でチェックしないとね」
「いつも通りのかわいくて綺麗な俺たち自慢の王子様だよ」
サンディラの後ろから入ってきたヴェルティスが笑いながら言う。部屋の隅に置いた姿見に自分の姿を映してチェックしていたレーファはあははと笑った。
「皇国の竜人に、それだけで通じるといいんだけどね。……ラージュナさまはお戻りになられたら少しは休息をとられるだろうし、そんなにいそいで支度する必要はないと思うんだけど……」
言い切らぬうちから、廊下を走る音が聞こえてきた。すでに溜息を吐きたい気持ちになってくる。
息切らしやってきたのは、王宮の伝令官だった。
「レーファ王子! ラージュナ様がお戻りになられ、お部屋へお呼びです!」
「……わかった……」
はぁ、と肩を落としたレーファの背中を、ヴェルティスとサンディラは慰めるように軽く叩いた。
「俺たちも、部屋の前まではついていくから」
「うん……ありがとう……」
ラージュナが竜官経由で贈ってきた耳飾りも着けないとな。テーブルに置いたままの箱を手に取りつつ、はぁと溜息が漏れた。
20
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる