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14 勉強(1)
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昼餉を食べた後、食休みをしてからは自習の時間だ。
いつラージュナが王宮に帰ってきても対応できるようにしておく必要があるから、いつでも切り上げられる自習を割り当てた。
レーファの暮らす王宮内の奥庭にある離宮は、迎賓宮に近い。奥庭を隔てて向かい側と言っていい場所だ。
迎賓宮を挟んだ向こう側が、王や王妃、王子たちが住む本宮となっているから、レーファは王妃たちと基本的には関わらずに済み、迎賓宮の出入口は本宮側にあるから、やはり関わらずに済む。
(今まで気楽だったんだけどな……)
竜人の寿命はヒトに比べれば遙かに長い。本当かどうかはわからないが、一番長命だった竜人は、記録にある限り千歳を超えていたとか。
(だから十年なんて一ヶ月くらいの感覚なんだろうなあ)
できれば十年より早く帰京してもらいたいものだけれど。
「…………」
レーファが今ページをめくったのは、皇国の歴史書だ。皇帝の名は基本的に諱が使われている。真名には力が宿るため、滅多なことでは他人に教えないという慣習によるもの。
竜人はただでさえヒトが使わない術を使い、四海竜王ともなれば自然や気象にまで影響を及ぼすとも言われるような、人知を超えた力を持つ者を戴く者たちだ。
その彼らが真名でどんな力を発揮するのか。レーファには到底考えもつかない。
「……真名を知るのは両親以外は伴侶だけ……、……一般の竜人はそんな力がないのか」
竜王の下に下がる身分としては、いわゆる公候伯子男がある。
玉皇上帝が代替わりする時、竜王も代替わりする。
ひとりが上帝となり、他の竜王たちは大公となり、その次の代からは公爵になり、取り立てて功績がない場合は侯爵に落ち着く。これは代限りはない。
公爵の例外として、降嫁した公主が産んだ子から三代までに与えられることがある。以降は侯爵に落ち着く。同様に代限りはない。
玉皇上帝の子が男子女子が五人以上であった場合は、優秀な四人をそれぞれ竜王に封し、残った者は王爵を賜ることがある。王には封じられなかったため、自動的に上帝にはなれない。だが、空いている大公位には収まることができた。現在の白大公がそうらしい。
上帝位を狙えるのは、常に四人の竜王のみだ。竜王に男女の区別はない。
「竜人は多産系ではないみたいだけど……あれ」
記述に塗り潰しがある。家系図のところだ。
先代皇帝の子は五人。皇国にいなくてもその程度の情報、歴史は習う。けれど、皇国の歴史書――写本だが――には、五人の他に墨で明らかに消された名前があった。
「……? 何かしたのかな」
きっと問いかけても誰も答えないか、不敬だと怒られてしまうだろう。だから気付いたことも忘れてしまうのが良い。
いつラージュナが王宮に帰ってきても対応できるようにしておく必要があるから、いつでも切り上げられる自習を割り当てた。
レーファの暮らす王宮内の奥庭にある離宮は、迎賓宮に近い。奥庭を隔てて向かい側と言っていい場所だ。
迎賓宮を挟んだ向こう側が、王や王妃、王子たちが住む本宮となっているから、レーファは王妃たちと基本的には関わらずに済み、迎賓宮の出入口は本宮側にあるから、やはり関わらずに済む。
(今まで気楽だったんだけどな……)
竜人の寿命はヒトに比べれば遙かに長い。本当かどうかはわからないが、一番長命だった竜人は、記録にある限り千歳を超えていたとか。
(だから十年なんて一ヶ月くらいの感覚なんだろうなあ)
できれば十年より早く帰京してもらいたいものだけれど。
「…………」
レーファが今ページをめくったのは、皇国の歴史書だ。皇帝の名は基本的に諱が使われている。真名には力が宿るため、滅多なことでは他人に教えないという慣習によるもの。
竜人はただでさえヒトが使わない術を使い、四海竜王ともなれば自然や気象にまで影響を及ぼすとも言われるような、人知を超えた力を持つ者を戴く者たちだ。
その彼らが真名でどんな力を発揮するのか。レーファには到底考えもつかない。
「……真名を知るのは両親以外は伴侶だけ……、……一般の竜人はそんな力がないのか」
竜王の下に下がる身分としては、いわゆる公候伯子男がある。
玉皇上帝が代替わりする時、竜王も代替わりする。
ひとりが上帝となり、他の竜王たちは大公となり、その次の代からは公爵になり、取り立てて功績がない場合は侯爵に落ち着く。これは代限りはない。
公爵の例外として、降嫁した公主が産んだ子から三代までに与えられることがある。以降は侯爵に落ち着く。同様に代限りはない。
玉皇上帝の子が男子女子が五人以上であった場合は、優秀な四人をそれぞれ竜王に封し、残った者は王爵を賜ることがある。王には封じられなかったため、自動的に上帝にはなれない。だが、空いている大公位には収まることができた。現在の白大公がそうらしい。
上帝位を狙えるのは、常に四人の竜王のみだ。竜王に男女の区別はない。
「竜人は多産系ではないみたいだけど……あれ」
記述に塗り潰しがある。家系図のところだ。
先代皇帝の子は五人。皇国にいなくてもその程度の情報、歴史は習う。けれど、皇国の歴史書――写本だが――には、五人の他に墨で明らかに消された名前があった。
「……? 何かしたのかな」
きっと問いかけても誰も答えないか、不敬だと怒られてしまうだろう。だから気付いたことも忘れてしまうのが良い。
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