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11 暇を慰める相手(5)
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レーファの容姿がヒトの中でも優れている部類だとしても、竜人の中に混ざれば一際目立つというほどでもないのではないか。かつて見たことがある竜人たちは、誰もが清潤ほどではないにしても美しかったと思う。
だから、容姿を見初められて、ということはない、はずだ。きっと。
相手をするというのも、ラージュナの暇な時間の暇潰しの相手になれということ。疚しい意味もない。だからここの意味は深く考える必要はないだろう。
問題は竜人の暇潰しになるようなことを、考えなければならないというだけで。
このあたりはサンディラとヴェルティスにも手伝ってもらうことにする。
「他に何かあったか?」
「お茶とお菓子を頂いただけだよ。……あまり味はしなかったけど」
緊張して味わうどころではなかった。零すと、ふたりとも同情的に頷いてくれた。
「じゃあ今日の夕餉は鶏肉を焼いたものに……トマトのソースをかけてもらおう。味の濃い肉料理、好きだろ?」
「スープは卵のがいい」
「伝えておく。米はどうする?」
「ピタのほうがいい。ふたりは好きに食べていいよ」
「わかった」
ヴェルティスが早速と厨房へ向かう。
サンディラは護衛でヴェルティスは従者だが、食事は基本的に三人一緒にとる。亡くなった母がそうしていたからということもあるが、ひとりで食事するより大勢で食べたほうが絶対に美味しいからだ。
サンディラが大きな手でレーファを撫でてくれた。
「今日はもう予定はないだろう? 少し休んだほうがいい」
「んん……魔術の本、読みたい」
「まだ勉強するのか?」
「オレ、魔術うまく使えないから……」
「あれは素養も関わってくるからなぁ……おまえの得意にできる分野があればいいが。魔術じゃなくて、別の分野に得意があるかもしれないしな」
「別の分野って?」
「あー……符術とか、道術とか」
「……皇国の術は皇国でないと学べないじゃないか」
思わず口を尖らせた。それに、竜人の使う術だから、基本的にヒトには扱えないものだ。それもわかっているだろうに、サンディラは意地悪だと腹のあたりをぺしりと叩いた。
だから、容姿を見初められて、ということはない、はずだ。きっと。
相手をするというのも、ラージュナの暇な時間の暇潰しの相手になれということ。疚しい意味もない。だからここの意味は深く考える必要はないだろう。
問題は竜人の暇潰しになるようなことを、考えなければならないというだけで。
このあたりはサンディラとヴェルティスにも手伝ってもらうことにする。
「他に何かあったか?」
「お茶とお菓子を頂いただけだよ。……あまり味はしなかったけど」
緊張して味わうどころではなかった。零すと、ふたりとも同情的に頷いてくれた。
「じゃあ今日の夕餉は鶏肉を焼いたものに……トマトのソースをかけてもらおう。味の濃い肉料理、好きだろ?」
「スープは卵のがいい」
「伝えておく。米はどうする?」
「ピタのほうがいい。ふたりは好きに食べていいよ」
「わかった」
ヴェルティスが早速と厨房へ向かう。
サンディラは護衛でヴェルティスは従者だが、食事は基本的に三人一緒にとる。亡くなった母がそうしていたからということもあるが、ひとりで食事するより大勢で食べたほうが絶対に美味しいからだ。
サンディラが大きな手でレーファを撫でてくれた。
「今日はもう予定はないだろう? 少し休んだほうがいい」
「んん……魔術の本、読みたい」
「まだ勉強するのか?」
「オレ、魔術うまく使えないから……」
「あれは素養も関わってくるからなぁ……おまえの得意にできる分野があればいいが。魔術じゃなくて、別の分野に得意があるかもしれないしな」
「別の分野って?」
「あー……符術とか、道術とか」
「……皇国の術は皇国でないと学べないじゃないか」
思わず口を尖らせた。それに、竜人の使う術だから、基本的にヒトには扱えないものだ。それもわかっているだろうに、サンディラは意地悪だと腹のあたりをぺしりと叩いた。
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