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10 暇を慰める相手(4)

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「レーファ様、大丈夫ですか?」

 廊下に控えていたヴェルティスと、後から来てくれたらしいサンディラがすぐに傍へやってくる。レーファは溜息を吐いた。

「……とりあえず、部屋にもどろう。そこでいろいろ話すね」
「承知しました」

 気遣わしそうなふたりを連れて離宮へと引き上げる。

(どうして、オレなんだろう)

 皇国の竜人が礼儀作法を重んじるのはわかる。身を以て知っている。
 レーファの作法ができているのは当たり前だ。これは若干ズルい気がするが。けれど、兄たちだってぎこちなかったかもしれないが、そう悪くはなかったはずだ。レーファの目にはそう映った。

 血統まで重んじる竜人としても、妾腹の自分より正妃の子のほうが好ましいと思うはずだが。本当に兄ふたりと自分を同列扱いにしたのなら、正妃が憤死しそうだ。
 他に何か、考えがあるのだろうか。

(だとすると、それはオレにはわからない)

 ついつい早足になりつつ、部屋へ戻った。

「あんまり出てこないから、心配したぞ」

 ベルティスと一緒にサンディラも傍に心配顔をしている。

「おまえの礼儀作法がダメだったことなんてないけど……何か言われたのか?」
「うん……」
「なんて?」

 ヴェルティスの問いに、レーファはまず溜息を吐いた。

「…………ラージュナ様が滞在中、お相手して差し上げてくれって」

 口に出して言うと、やはり六歳の子どもには役目が重すぎるのではないかと思う。
 ふたりは互いの顔を見合わせてから真顔になった。

「……それは第一王子の役割じゃないのか?」
「子どもにやらせることか?」

 それぞれ口にしたことは、レーファが思っていたことと同じだ。やはり他人でもそう思うものなのだ。自分の感性が間違っていなかったことにホッとする。

「第一王子にやらせるにしたって十歳だが……レーファは六歳だぞ」
「来月には七歳だ。ようやく俺の歳の半分だな」
「一桁の歳の子に、竜人の相手とは……」
「……そういう趣味でもお持ちなのか……?」

 あたりを憚ってひそりとした声でヴェルティスが言う。だがこれにはさすがにサンディラが拳骨を落とした。

「いっ……」
「滅多なことを言うもんじゃない。誰が聞いているかわかんねえからな。王妃派のやつが聞いてたらここぞとばかりに歓喜で踊るぞ」
「悪かったよ。……上のふたりにレーファが負けるところなんて何ひとつないが、それにしたって、わかりやすいのはレーファの容姿だろう? 育てば絶対に国で一、二を争う美形になるのは間違いないし……いや、これは二がいるのかって話になるが……」
「おまえは時々親馬鹿のようになるな……」

 ヴェルティスの発言に、サンディラは腕を組んで感心したように言う。

「サンディラはそう思わないのか?」
「思っているが。基本的に竜人はヒトのことを見下しているからな……それだけが理由になるかどうか」

 ふたりから見目をものすごく褒められているのはわかるが、かなり複雑な気持ちもあった。
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