皇国竜王恋物語◆白竜王のツガイだったせいでループｎ回目、最終的には溺愛されてます◆

08 暇を慰める相手（2）

　午前の剣術の稽古を一通り終えると、湯浴みをして着替えてから礼儀作法の授業を受けるべく王宮の応接の間のひとつへ向かう。
　着用するのは準正装だった。

「……ヴェルティス、すごく嫌な予感がするんだけど」
「俺もです」

　離れを出ているからヴェルティスの言葉遣いは外向けに変わった。そんなことも気にならないくらいの異変。
　何しろ応接の間へ向かう広い廊下には、煌びやかな――公式行事に出るような鎧をまとった王宮付きの騎士たちが、等間隔に並んでいる。
　ただ三王子が揃っただけで、こんなに警戒警備配置がされるわけがない。
　一体、何が。
　その理由を薄々と感じながら、透かし彫りの扉の前で一度呼吸を整える。

「……第三王子レーファ、参りました」

　作法通りに中へ声をかけてから、音を立てないように木製の透かし扉を開ける。

「こちらへ」
「はい」

　扉を閉めると、そこで一度拱手。なんでもない顔を繕って返事をしていたが、内心は嵐の海を征く小舟のように、ひどく動揺していた。

（な……なんでラージュナ様までいらっしゃるのかな……？）

　竜官三人がいるのは三人の王子にそれぞれ付きっきりになってくれるのかもしれないから当然と納得できるとして、何故かラージュナがいる。テュホン伯爵がいないのは、伯爵としての務めか何かで忙しいのかもしれないが。
　だからといってラージュナがいる理由にはならないだろう。

（……暇なの……？）

　遊学というなら、学ぶべきところで学んで欲しい。子どもの礼儀作法の授業で彼のような青年の竜人が得るようなものなど、何ひとつとしてないはず。まさか彼も師となり教えてくれるわけでもないだろうに。

　考えられうる、もっともらしい答えが浮かばないでもないのだけれど。

　間を置いて、時間ちょうどくらいにふたりの兄もやってきた。レーファより音は立ったが、子どもだということを考えれば充分及第点ではないかと思う。だが、竜官により入室をやり直させられた。

　そうして始まった授業は、休憩を入れて二時間にわたった。