【完結/番外編更新】皇国竜王恋物語◆白竜王のツガイだったせいでループn回目、最終的には溺愛されてます◆

オジカヅキ・オボロ

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07 暇を慰める相手(1)

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 窓から朝陽が斜めに差し掛かる明るい部屋の中、レーファは寝台から上体を起こすと大きく伸びをした。ふぁ、と小さく欠伸が漏れるのはご愛敬だ。

「よく起きれたな、レーファ」

 ヴェルティスが洗顔や朝食の用意を調えてくれる。
 よく覚えていないが、夢見は悪かったと思う。こういう感じの寝起きなら、見た夢はたいてい悪夢だ。きっと過去の生の嫌なところを夢に見たのだろう。予想通りだ。

 どんな夢を見たのか、誰にも言えない。

 もしかしたら、サンディラやヴェルティスは慰めてくれるかもしれないが。

「んー……」

 もともと、朝は弱い。起きたてではまだうまく喋ることができないが、思考はそれなりに回っている。口を開くのが億劫なだけだ。

(今日の予定……は、剣術の稽古と……魔法の授業と……礼儀作法の授業……これは竜官閣下のご指導で兄上たちも一緒の……最後が薬学と、服薬……)

 礼儀作法は皇国スタイルが大陸のスタンダードだ。普段の礼儀作法の授業では、竜官から資格を得た礼官が指導する。

 だが、今は皇国の伯爵が来訪し、その甥が長期滞在する。

 彼らへの対応は竜官へとは同等以上になるし、失礼があっては国の威信にも関わるし、その国に駐在している竜官の威信にも関わる。
 ――というわけで、今日からは礼儀作法の授業が強化されることになった。

(強化されるのはいいんだけど……兄上たちと一緒っていうのがなぁ……)

 レーファは過去の生の記憶があるため、皇国の礼儀作法もおおむね問題ない、と思う。そもそも、座学で得られるような指導の内容はレーファは物覚えと要領が良いために、最初の生でも苦労をした覚えがない。キツく指導されたことは記憶にある限りではなかった。
 それに対し、兄たちはレーファほど器用ではない、とヴェルティスからは聞いている。侍女たちからの噂話を聞いた発言のようだが、王宮では王妃の子に忖度があるにも関わらずそんな噂があるということは、せいぜい人並みなのだろう。

 レーファは側妃の子になるため正妃の子である兄ふたりとは生活区域が違う。だから兄たちのレベルがどれほどなのか、本当のところはわからない。
 王妃の当たりが強くなっても困るし、普段から目立たないように生活しているが、礼儀作法に関しても彼らより目立ちすぎるのは良くない。これは人生二桁やり直しているのがバレるからなどというかわいい理由ではない。

 普通に考えて第三王子である自分がいずれ王太子になる第一王子やその補佐になるかもしれない第二王子の、ひいては王妃に目障りに映られても困るからだ。

(……兄上たちを参考に、適度にしなきゃ……)

 せっかく普段は王宮内の離宮で大人しく(時に抜け出して)暮らしているのに、政争に巻き込まれたくもない。
 まさかこんな悩みができるとは思わなかった。
 レーファは溜息を吐くと、夜着から普段着へ着替えた。
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