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02 はじまり(2)

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「覚えてないのも無理はない。三日前に急な高熱で倒れて、そこからずっと寝込んでたんだ。薬がちゃんと効いたんだな、本当によかった……」

 抱きしめられて背を撫でられる。見た目は子どもかもしれないが、中身は成人しているので、少し面映ゆい。

「……心配かけて、ごめんね」

 ぽそりと言うと、ヴェルティスは「いいんだよ」とレーファの髪をぐしゃぐしゃにするように撫でてくれた。大人になってからはそんな風に撫でられたことはない。余計に照れてしまう。

 彼は従者だが、必要以上にレーファを主として遠ざけることもせず、兄貴分のように接してくれていた。嫌味のない彼の言動は心地良く、だからレーファも彼に懐いた。

 それにしても。

(三日も、寝込んで……?)

 小さい頃にそんな熱を出したことはあっただろうか。覚えていないだけかもしれない。

「今、医者を呼んでくる。ちゃんと診てもらって、良くなってたら、まず風呂と……食事だな。大人しくしているんだぞ」

 ヴェルティスはどうも過保護な気がする。けれど積極的に逆らう余裕も理由も見つからず、頷いて寝台へ戻った。
 出て行くヴェルティスを見送るところりと寝転び、天蓋を見上げる。

(考えることが多い……ような……)

 今までレーファが人生を何度もなぞっていたのは、ツガイが判明してから皇国で白竜王と会うあたりまでだった。期間としてはせいぜい一年前後だ。
 だからこんな子供に戻ったことは、今までにない。いや、すべての人生を覚えているわけではないから覚えていないだけかもしれないが、少なくとも今のレーファの記憶にはなかった。

(どうして……)

 今までにないくらい戻ったのだろう。
 ここまで時間を遡ることに、何か意味はあるのだろうか。それとも、何かの悪戯で戻りすぎただけなのだろうか。
 いや、そもそも何故レーファが人生を何度もやり直しているのかという理屈もわからないのだから、考えるだけ無駄かもしれない。

「……何か、違うのかな」

 成人の儀以降を何度もなぞったせいで、それ以前の記憶は曖昧だ。違うことがあってもわからない・気付かないことのほうが多いかもしれない。

(……そうだ)

 今度はどんな風に死に至るのかはわからないが、色々試せることがあるのではないか。
 それによって、少しは生きながらえられるのではないだろうか。
 違うことが多くなれば、自分の未来も変わるのではないか。

(……もしかしたら、死ななくて済む可能性だって、あるだろうし)

 せめて不用意なことで簡単に、あっさりと死ぬのは避けたいし、防ぎたい。どこまで生き残れるか、何歳まで生きられるか。
 何十回も死んでは生きてを繰り返すと、我が事ながらゲーム感覚になってしまうのだなとレーファは溜息を吐いた。
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