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01 はじまり(1)
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急に目が覚めた。
レーファは瞬きを繰り返し『見える』ことを確認する。
「……ここは……」
ぐるりと見回した室内には見覚えがある。けれど、レーファの意識がブラックアウトする直前に見たものたちではない。
意識があった時、最後に見たものはお茶会の様子だったと思う。
どこかの令嬢の招きで参加した。多分そこで口に入れた菓子か茶に毒が入っていたのだ。
(いつもなら続きか、戻っても国を出るあたりからなのに)
今はどう見ても自分の部屋で――。
(いや、でも何かおかしい……?)
あのレースのカーテンは気に入っていたものだが、何かの時に汚れたかボロボロになってしまって、けれど捨てるには惜しくてしまい込んだはず。
(なんで……?)
体を起こすと、迷いがちに足を床に着けた。刺繍が施された小さなサンダルがあり、それを引っかけて突っかけ、ふらつきながら窓辺に立つ。
奥庭に植えられた草花が色とりどりで風に揺れている。あの花たちや花壇には見覚えがあった。その向こうに見える建物もだ。
(どういうこと……?)
自分の体を強く抱きしめる。
「……あれ?」
ふと自分の手を見下ろし、それから足許を見下ろす。そして周囲を――部屋の中をぐるりと見回した。
よく見れば手が、脚が、小さい。そればかりではない。なんだかすべての家具の背が高い。いや、家具の高さなんてそう簡単に変わるはずがない。
だとすれば、どういうことだ?
慌てて部屋の隅に置いてある大きな姿見に己の姿を映した。
「えええ……?!」
思わず声が出たのも無理はない。
琥珀のように明るく、深いオレンジ色の髪。
健康的な肌の色。
まんまるに見開かれた空のように青い双眸。
特徴は同じなのに――。
「オレ……子ども……?!」
目の前に映されたのは、十にも満たないだろうと思われる、小さな子どもの姿。
卒倒するかと思った。
(なんで……どういうこと? どうして……?)
疑問の海に飲まれそうになったが、レーファを現実に引き戻す声がかけられる。
「レーファ? 起きたのか?」
飛び上がるほど驚かされた。振り向くと見慣れた男、いや今は少年の姿がそこにあった。彼の姿は見覚えがある。
「……ヴェルティス?」
彼は今十四歳でレーファよりずっと年上だからか、ずっと兄か保護者のような顔をして傍に仕えてくれている。明るくて陽気な、レトの国民らしい男だ。ツガイの報があった後、皇国に随伴として一緒に来てくれた。
今はどうやら慌てているらしい。
「目が覚めたんだな、よかった……」
「……オレ、どうしたんだっけ……?」
現状を確認するなら質問したほうが早い。幸い、ヴェルティスにはおかしく思われなかった。
レーファは瞬きを繰り返し『見える』ことを確認する。
「……ここは……」
ぐるりと見回した室内には見覚えがある。けれど、レーファの意識がブラックアウトする直前に見たものたちではない。
意識があった時、最後に見たものはお茶会の様子だったと思う。
どこかの令嬢の招きで参加した。多分そこで口に入れた菓子か茶に毒が入っていたのだ。
(いつもなら続きか、戻っても国を出るあたりからなのに)
今はどう見ても自分の部屋で――。
(いや、でも何かおかしい……?)
あのレースのカーテンは気に入っていたものだが、何かの時に汚れたかボロボロになってしまって、けれど捨てるには惜しくてしまい込んだはず。
(なんで……?)
体を起こすと、迷いがちに足を床に着けた。刺繍が施された小さなサンダルがあり、それを引っかけて突っかけ、ふらつきながら窓辺に立つ。
奥庭に植えられた草花が色とりどりで風に揺れている。あの花たちや花壇には見覚えがあった。その向こうに見える建物もだ。
(どういうこと……?)
自分の体を強く抱きしめる。
「……あれ?」
ふと自分の手を見下ろし、それから足許を見下ろす。そして周囲を――部屋の中をぐるりと見回した。
よく見れば手が、脚が、小さい。そればかりではない。なんだかすべての家具の背が高い。いや、家具の高さなんてそう簡単に変わるはずがない。
だとすれば、どういうことだ?
慌てて部屋の隅に置いてある大きな姿見に己の姿を映した。
「えええ……?!」
思わず声が出たのも無理はない。
琥珀のように明るく、深いオレンジ色の髪。
健康的な肌の色。
まんまるに見開かれた空のように青い双眸。
特徴は同じなのに――。
「オレ……子ども……?!」
目の前に映されたのは、十にも満たないだろうと思われる、小さな子どもの姿。
卒倒するかと思った。
(なんで……どういうこと? どうして……?)
疑問の海に飲まれそうになったが、レーファを現実に引き戻す声がかけられる。
「レーファ? 起きたのか?」
飛び上がるほど驚かされた。振り向くと見慣れた男、いや今は少年の姿がそこにあった。彼の姿は見覚えがある。
「……ヴェルティス?」
彼は今十四歳でレーファよりずっと年上だからか、ずっと兄か保護者のような顔をして傍に仕えてくれている。明るくて陽気な、レトの国民らしい男だ。ツガイの報があった後、皇国に随伴として一緒に来てくれた。
今はどうやら慌てているらしい。
「目が覚めたんだな、よかった……」
「……オレ、どうしたんだっけ……?」
現状を確認するなら質問したほうが早い。幸い、ヴェルティスにはおかしく思われなかった。
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