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天国は自由なのか
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願ってはいけないものがあると最初に知っていたら、そう、今の俺のようにこうなることを知っていたら、決してこの能力が欲しいなんて言うことはなかったはず。
俺はしがない会社員だった。通っていた会社はブラックではなかったが上司が無能過ぎてフォローに回るのがいちいち疲れるそんな毎日だった。大学に通っていた時には彼女がいたけど会社に入った途端に結婚を迫られて別れた。いくらそこそこの規模の会社であっても新入社員がどれだけお金を稼げると思っているのか。
そしてあの上司の無能っぷり。先ずそんなことが通るわけがないという話を聞かない。ゴリ押しだけがまともな道筋だと勘違いしていあがる。勤務時間は守られていた。残業もなかった。が、話を聞かない上司にはいい加減うんざりしていた。
結局退社してから実家に戻ることにした。部署を変えて欲しいと頼んだこともあるが聞き届けてもらえなかったからだ。
だが実家に戻る列車から降りた先に急な雨。家は山道を通らないといけない。早く家に帰りたいという気持ちだけで急いで走った先に土砂崩れが起きた。それで俺はあっけなく亡くなったのである。
なんて人生だ、まだ俺はこんなに若いのにという嘆きが最後の感想だった。
そして気が付くと俺は星空が見える草原の真ん中にジーパンとTシャツ姿で立っていた。俺の前にはかなりと整った顔の美しい女性が立っていた。人種はよくわからない。肌色が青かったので。彼女は変な服を着ていた。見た目は黒いボディースーツだけどオレンジ色の幾何学模様がたくさん描かれていて、そのオレンジ色のところだけ薄っすらと光っていた。背丈は俺より少し高い。俺が172だからそんな俺より高いのは結構高い気がする。
エイリアン?
「女神です。」と思った瞬間に彼女から答えが返ってきた。これは考えが読まれているなと俺は瞬時に悟った。別に困ることはない。なくはないが、別に女神ならそれくらい平気だと思うし。
「なんで青いんですか。」気になったので聞いてみる。
「知らなかったんですか?女神の肌は青いんですよ?」
女神の肌の色は青いってどうやって知ればいいんだろうか。
「冗談はこの辺にして、本格的にここに対して説明することにします。いいですね?」
確かに。彼女が女神であるのならそれが本題なんだろう。
「あなたはたった今死にました。」まさかの異世界転生定番のパターンを女神様から直々と聞いたことに俺は少し興奮した。が、
「なので死後の世界であるここでずっと生活することになります。」
転生じゃないのか。
「転生とかじゃないんですね。」
「生きるのは死後の世界より大分苦しいはずです。辞めた方がいいかと。」
「死後の世界ってどんな感じなんですか。」
「ボタンを入力したら該当する快楽が得られる椅子と、このように景色が変えられる無限に広い空間が与えられます。」そう女神様が言うと、次々とこの星空が見える草原から砂漠、摩天楼の夜景が綺麗などこかの街並み、桜並木が美しい古い日本の大通り、綺麗な海の夏の砂浜、はたまたは月の上の景色にまで変えられた。
「未来のテクノロジー見たいな感じですね。」
「よくわかりましたね。」
「えっ」と俺は驚愕。死後の世界じゃないの?
「今のあなたが住んでいる文明は21世紀を基準にして大体3億年後、時空間と人の魂を自在に扱えるように進化します。私は女神と言いましたが、実はその時代で生きている未来人の一人なんです。超時空間多重世界宇宙連邦の管理局に努めているハイパーインテリジェンスサイボーグ。それが私こと地球担当の女神のアイエラです。」
「アイエラさんですね。」
「はい。そう呼んでいただけて結構かと。」
「えっと、じゃあ俺の魂は未来の発達した文明によって回収されている感じなんですか?」
「そのままにしたら魂はアストラルラインと言う地球を取り囲む精神エネルギーだけで作られた輪の中に入って、他人と知識や経験がごっちゃ混ぜになってから強制的にどここあに輪廻転生をすることになります。酷い罪を犯した人物などはそうなるよう放っておいています。魂が今まで培ってきた記憶が完全に消えて別の魂となってしまう。そっちのほうが良かったんですか?」
それはちょっと、辛いことかもしれない。自分の知識と経験がごっちゃになるなんて。と言うか、生まれ変わったら全部忘れるんじゃないのか。そうでなかったら今頃の地球はきっと大変なことに…。
「ならないんです。脳が神経回路を構築するのと魂が覚えることは同じではありませんからね。けど既視感を感じてしまう時はなかったんですか?なぜか無性に懐かしい気持ちになったり、特定の物や食べ物、匂いに強い執着を感じたり。それはあなたの魂がそれを覚えているからなんです。ちなみにあなたの前世は猫でした。だから魚に対しての執着が人一倍なんですよ。」
まじか。俺の前世は猫だったのか。
「前世が人間ではなかったんですね。」
「はい、考えてみるとわかると思いますが、今の地球の人口は100年前より3倍以上に膨らんでいるのです。そうなってしまった世界は前世が人間だった人より動物だった人が多いのは当然だと思いませんか?」
確かに。だとすると人ととして生きたことが二回以上の人間のほうがマイノリティになるのでは?
「そうですね。実際にあなたが生きている時代の人間は殆どそうなっています。だから文化や思想、複雑な思考、労働により作られるものの質などが過去に比べたら技術的進展があるのにもかかわらずかなり廃れているという状況となっています。例えば今は過去の建築物のように美しい装飾をしたり、複雑かつ繊細な線で描いた絵画などを見つけるのが難しくなっているのです。」
それはなんとも言えないことだった。つまり今の地球は魂的に未熟なもので溢れていて、それにより精神文化が退化しているような状態ってことなんだろうけど。
「俺は別にその状態を悪いとは感じませんでしたけど。」
「それはあなたの前世が猫だったからですね。猫は単純な生き物。それから人になったんですから、何もかも不思議で、そうですね。あなたは好奇心旺盛で、自分の感情を人に見せるのが苦手でした。それはあなたの猫としての記憶が魂に残っているから。それがなくなってしまった状態で輪廻転生をするなんて辛いでしょう。だから我々はそうならないよう、魂の記憶を保存するようにしているのですよ。」
「けど輪廻転生じゃなくここで過ごすことになるって言ったではありませんか。」
「そうです。美しい景色を見ながら、好きなだけ快楽が楽しめます。」
めちゃくちゃ退屈そうだと思ったのは俺だけじゃないはずだけど。そんな人たちは輪廻転生を選んだのかな。そもそも選択肢ってあるのか。これも強制的と言えば強制的な気がしなくもないけど。
「それだけですか?」
「すべての痛みから解放されます。睡眠も食事も必要ありません。いくらでも情報を習得できる小さな端末が支給されます。」
いくらでも情報を習得って、漫画とか読めるってことかな。
「漫画とか読めますか。」
「映画も見れますよ。」
「ゲームとかも出来ますか。」
「出来ます。」
「ゲーム作れたりしますか。」
「作ることは出来ませんね。」
「なんでですか。」
「あなたが今まで生きて来た惑星、そうですね、地球からの情報ならすべて習得できます。例えばガチャゲーとかあるでしょう?無限に回せますよ。」
それはいいかもしれない。
「未来のゲームとかも出来ますか?」
「出来ませんね。あなたが死んだ自転であなたの魂の時間はあなたが生きていた時代に固定されますから。」
「ええ…。じゃあ来年に発売するゲームとかがプレイしたいと思ったら…。」
「転生するしかありません。」
「なんでですか。未来の技術で何とかなるんじゃないですか。」
「そうしたらあなたは転生することを選ばなくなるでしょう。」
「ここに永遠に過ごすほうを進めてきたのはアイエラさんなんですよね。」
「ちょっと違います。ここで好きなだけ過ごして、これでいいと思ったら転生する。そう言うのがおすすめです。」
「なんでですか。」
「気になりませんか?世界はあなたが見ていない景色で溢れている。あなたが知らなかった情報で溢れている。なのにあなたは死んでしまった。無限のような景色と無限のような情報があります。今ままで人類が書いた物語、作った映画や音楽、絵画。それらを知らないまま次の人生に行きたいんですか?」
確かにそれは、勿体ないかもしれない。俺が猫から人間になろうとした時だって、ああ、そうだ。思い出した。
俺はとあるおじいちゃんい飼われていた。彼は物静かな人で、死んだおばあちゃんを懐かしみながら涙を流しているのを見ていた時、俺はその涙を拭いてあげたいと思っていた。だが俺の手は猫のままで、お爺ちゃん、悲しまないでって、人になって伝えたかった。俺まで、まあ、前世で猫だったころは雌だったが、死んでしまって、お爺ちゃんはどうしていたんだろうか。
「そう、あなたはそうやって人になったんです。そしてここに来たこともあります。その時の担当は私ではありませんでしたけど。」
「そうですね。青い肌の、別の女神さまにあいました。」
そして俺は猫のまま人間になってしまったら何もかもわからないままなはずだからと、人間の知性を持たされてから色んなことを学んでもらった。人類の歴史を勉強して…。そして、お爺ちゃんの最後も見てもらった。お爺ちゃんは亡くなった俺を庭に埋めていた。泣いていた。
その顔を見て、また生まれたら彼の基へと女神様にお願いしたんだっけ。
「もしかして。」
「はい。あなたの妹です。大事にしていましたね。」ああ、なのに俺はまた死んでしまった。
彼女は今どうしているんだろうか。
「見てみますか?」
「見たら、また彼女の基へ行けるようになりますか。」
「それは地球の事情とかもありますし。魂同士の縁が深くなりすぎるのはお勧めしません。もっと熟考して決めたほうがいいかと。」
「なんで魂同士の縁が深まるのはいけないんですか?」
「行けないわけではありませんけど、そうですね。旅人のようなものだと考えてみてください。人生と言う名の旅を経験し、また次へ行ける。けど魂同士の関係が深まるばかりだと、結びつきが強くなって、ずっと同じ場所で生まれるようになって、挙句には体さえも共有してしまったりと…。見たことありませんか?」
ああ、確かに、一つの体に頭が二つある人とかネットで見たことある。
「しまいには魂が同化してしまうことになります。それでもいいと?」
文字通り二人が一つになるってことか。ロマンティックに感じる人、魂?もいそうではあるけど。俺は確かにそれはちょっと厳しいかもしれないと思いなおした。
「それにあなたの妹はあなたから大切にされたことで、あなたが猫として大切にされた分のことをその魂に与えることが出来ました。それで魂同士での貸し借りはなくなったんです。忘れてもいいではありませんか。」
そう言われてはい、そうですねなんて言えそうにはなかったけど、逆に別の魂にしつこく付きまとうのもよくない気がしたのは事実だった。だから俺は話題を今の状況に変えた。
「その快楽のボタンが付いた椅子とかは何ですか?」
「座ってボタンを押すと全種類のオーガズムと麻薬による覚醒効果が体験できます。時間も指定できますよ。食事の味や好きな匂いも再現できます。」美しい女神の口からオーガズムと言う単語を聞いたのでちょっとドキッと、なんてすることはなく。心臓がないからか。
「天国か。」
「そうですよ。天国みたいなものです。だから誰も転生なんてしないってなるのです。」
「じゃあ人口とか増えないじゃないですか。皆どうしているんですか?二回目に生まれたりする人がなくなると思いますけど。」
「この生活に飽きたら転生を選ぶことになるのです。それはすぐ後のことになります。ここでの時間は相対的なもの。あなたの魂こそ世界の観測者。観測するものがなくなった世界の時間はあなたにとって止まったのと同然です。」
止まったのと当然?少し気になる言い方である。
「はい、実際は宇宙が膨張する相対速度による倍率がかかってしまいますが、その速度は刹那を生きる人間にとっては無限に等しいので。相対性理論の話は聞いたことありませんか?」聞いたこともあるし少しは学んだ。と言うか、それがこんな死後の世界?の領域にも該当するものだなんて思湧かなったもので。
「その宇宙の膨張する速度はどれくらいなんですか?」
「光の速さの2.4倍ほどです。」
「秒速72万キロメートルほどってことですか。」
「その倍率が適応されるので、ここでの72万秒は地球での一秒となります。」
な…なんと…。
「つまりここで72万年を過ごしても地球では…。」
「一年過ぎたことになりますね。だから時間は無弁に等しいのです。」
「じゃあ、えっと。72万年経ったら、1年後に発売されるゲームとかの情報も…。」
「それはあなたの魂の問題なので、1年経った後でもその情報を得られることは許容範囲を超えています。」
なるほど、そうなるのか。ここで72万年も過ごす人がいるのか疑問だけど、いるかもしれないけど、俺はそこまでの時間を過ごせそうになかった。10万年くらいなら過ごせなくもないかもしれない。快楽の椅子と今までの人類が培ってきたすべての著作物を閲覧できるとなると。こんな環境ってありか。
ニートは生きるより死んでここに来るほうがいいんじゃないか…?いや、まあ。最新のゲームとか最新のアニメとか漫画とか映画とか小説とかが気になるなら地球でニートとして生きるほうがいいかもしれないけど。
「ちなみに異世界に転生するとかはできないんですか?」
「似たようなことは出来ますけど、おすすめはしません。」
「と言うと?」
「例えば宇宙の物理法則がもう一つ存在していて、それが魔法のような事象を起こせる世界があるとします。実際にいますけど、その世界はファンタジー世界のようになると思いますか?」
「なるんじゃないですか?」
「地球の文明を考えてみるとわかると思いますけど、人は必要の応じて建物や衣服などを作ってきました。魔法が使える人間にそれが必要だと思いますか?そして人の前の段階、もっとも単純な生物でさえ想像したものを事象に変える力を行使できるとして、その生物が人間のように不便な、二足歩行をするのですぐ転んでしまうような形で進化すると思いますか?」
それは確かに難しいと思うけど。
「じゃあその世界での生物はどんな形をしていますか?」
「触手怪物です。」
「えっと…。タコみたいな?」
「クトゥルフ神話みたいな。」
「なるほど…。」考えてみると魔法のある世界は文明すらも必要ない気がする。何もかも魔法で簡単に出来たら、食べ物とか気温とか魔法で何とかすればいいだけだし。
「じゃあ、えっと。素敵な世界とかありませんか?冒険とか出来て、綺麗な人たちが多い世界とか。」
「未来ですね。」
「未来では冒険なんて出来ないんじゃないですか?」
「仮想現実で出来ますよ。」
「VRMMOみたいな?」
「そんな感じです。」
「じゃあそんな世界で生まれ変わることは出来ませんか?」
「別の惑星や別の銀河、別の宇宙になりますけど。それでいいんですか?地球にはもう戻らないと?」
地球か。いいことも確かにあった。家族との時間は楽しかったし、面白いゲームや美味しい食べ物、好きな歌とかも多かった。けどどこか窮屈で、庶民には何の力もなく、自分より無能な人間が自分を命令する立場になれることが出来るような世界に怒りを覚えたことは否定できない。それとワクワクが足りないというか、冒険もないし、勇気を試される場面も少なかった。彼女とは心が深く通じ合っていたわけでもないのに簡単に結婚を迫られるし、バカで粗暴な人達も多かったし。
だけど、そう。
「まだわからないことが多いので、ここでえっと、いつになるかわかりませんけど、飽きるまで時間を過ごした後で決められませんか。まだ人類の歴史とか、人々のことでわからないことも多い気がするので。」
「それで構いません。椅子の使用方法はあなたが知りたいと思ったらわかるようになると思います。これがその椅子です。」アイエラさんがそう言うと歯医者さんに行ったら座るような椅子が俺の隣に出現した。
「そしてこれが端末です。」彼女からタブレット端末にしか見えないものを貰う。不思議と手に馴染んで、落とすこともなくふよふよと浮いていた。
「この空間のどこへでも念じたら表れますし、画面は好きな場所に投影できます。本は背景を図書館に帰れば中に入って見つけることも出来ますし、端末から直接読むことも可能です。」
なんて便利な未来技術。
けど気になることがあった。
「寂しくなったらどうすればいいんですか。」
「端末で人も作れます。魂は入ってませんが。人格と見た目、表情や感触などを完全に再現できます。何なら殺したり犯しても構いません。」
女神なのにそれでいいのか。
「あなた方は我々からしたら原始人以下ですからね。例えるなら、そうですね。私とあなたの感覚や意識はあなたと昆虫ほどに離れているんですよ。」
「そんなに?」
「ちなみに今私は9万人と同時に似たような会話をしているのです。想像できますか?ここにいる私も実体ではありません。」
「実態は触手怪物ですか。」
「もっと恐ろしいと思います。想像はしないでください。発狂しますよ。」
「冗談ですよね?」
アイエラさんはふふっと笑った。
もしかしたら俺は触手怪物に魂を食べられているだけなのかもしれない。甘い刺激と誘惑で…。
「それはありませんね。第一そうだとするならここまでする理由がない。ただ快楽の溢れる刺激と幻想を見せるだけでいい。ここまでややこしい説明をするわけないでしょう?」
「味付けとか…。」
「あのですね…。まあいいでしょう。信じられないというのならずっとここで過ごしてみればどうですか。流石に数十億年もここに過ごしてたら全く知らない時代で生まれることになると思いますが。それとも本当に永遠にここで過ごしてみます?いるんですよ、実は。西暦336年に死んだ人間が、まだここで過ごしている。」
72万×1680年…。
「ざっと12億年ですね。」
12億年もこんなところで過ごしているのか…。しかも読める本とか聞ける音楽とかも336年まで作られているものに限定されて…。地獄かな?
「天国ですから。信じるも信じないも自由ですけど、せめて永遠を過ごす前に転生をしてください。何ならあのクトゥルフ神話のような魔法のある世界で構いませんから。」
いやいや、さすがにそれはしないって。
「じゃあ私はこれにて。何か必要なことがあれば端末を操作して確認してみてください。何もかも手に入りますから。何ならここにすべての人類を再現して疑似的な社会を作ってからあなた自身の記憶を任意に削除し暮らすことも可能ですよ。」
ええ、そこまで出来るの?
「そのための天国ですからね。なんでもできずにして何が天国ですか。」
確かに。
「ほかの魂をここに呼ぶことだけは出来ませんので。再現は出来ますけど。」
中身のない人形みたいなものってことか。と言うか記憶消したら大変なことになるじゃん。
「それは自己責任ですね。自力でここが作られた現実であることを自覚するか、それとも永遠にここに囚われるか。」
「やっぱやばいところなんじゃ。」
「嫌だった今からまた転生します?」
「いいえ、俺はまだ食べたことのない食べ物とかありますし。」
種類の違うオーガズムとかも気になるし。
「それで結構です。では、私はこれで。最後に、天国へようこそ。楽しんでいってください。」そう言い、アイエラさんはすっと消えた。
俺の隣には椅子が、手の中にはタブレット端末があった。
操作してみよう。先ずは椅子に座って…。
やばい。これは確かに天国かも。
俺はいつまで続くかは知らないが、取り敢えず今は楽しむことにしたのだったのである。
俺はしがない会社員だった。通っていた会社はブラックではなかったが上司が無能過ぎてフォローに回るのがいちいち疲れるそんな毎日だった。大学に通っていた時には彼女がいたけど会社に入った途端に結婚を迫られて別れた。いくらそこそこの規模の会社であっても新入社員がどれだけお金を稼げると思っているのか。
そしてあの上司の無能っぷり。先ずそんなことが通るわけがないという話を聞かない。ゴリ押しだけがまともな道筋だと勘違いしていあがる。勤務時間は守られていた。残業もなかった。が、話を聞かない上司にはいい加減うんざりしていた。
結局退社してから実家に戻ることにした。部署を変えて欲しいと頼んだこともあるが聞き届けてもらえなかったからだ。
だが実家に戻る列車から降りた先に急な雨。家は山道を通らないといけない。早く家に帰りたいという気持ちだけで急いで走った先に土砂崩れが起きた。それで俺はあっけなく亡くなったのである。
なんて人生だ、まだ俺はこんなに若いのにという嘆きが最後の感想だった。
そして気が付くと俺は星空が見える草原の真ん中にジーパンとTシャツ姿で立っていた。俺の前にはかなりと整った顔の美しい女性が立っていた。人種はよくわからない。肌色が青かったので。彼女は変な服を着ていた。見た目は黒いボディースーツだけどオレンジ色の幾何学模様がたくさん描かれていて、そのオレンジ色のところだけ薄っすらと光っていた。背丈は俺より少し高い。俺が172だからそんな俺より高いのは結構高い気がする。
エイリアン?
「女神です。」と思った瞬間に彼女から答えが返ってきた。これは考えが読まれているなと俺は瞬時に悟った。別に困ることはない。なくはないが、別に女神ならそれくらい平気だと思うし。
「なんで青いんですか。」気になったので聞いてみる。
「知らなかったんですか?女神の肌は青いんですよ?」
女神の肌の色は青いってどうやって知ればいいんだろうか。
「冗談はこの辺にして、本格的にここに対して説明することにします。いいですね?」
確かに。彼女が女神であるのならそれが本題なんだろう。
「あなたはたった今死にました。」まさかの異世界転生定番のパターンを女神様から直々と聞いたことに俺は少し興奮した。が、
「なので死後の世界であるここでずっと生活することになります。」
転生じゃないのか。
「転生とかじゃないんですね。」
「生きるのは死後の世界より大分苦しいはずです。辞めた方がいいかと。」
「死後の世界ってどんな感じなんですか。」
「ボタンを入力したら該当する快楽が得られる椅子と、このように景色が変えられる無限に広い空間が与えられます。」そう女神様が言うと、次々とこの星空が見える草原から砂漠、摩天楼の夜景が綺麗などこかの街並み、桜並木が美しい古い日本の大通り、綺麗な海の夏の砂浜、はたまたは月の上の景色にまで変えられた。
「未来のテクノロジー見たいな感じですね。」
「よくわかりましたね。」
「えっ」と俺は驚愕。死後の世界じゃないの?
「今のあなたが住んでいる文明は21世紀を基準にして大体3億年後、時空間と人の魂を自在に扱えるように進化します。私は女神と言いましたが、実はその時代で生きている未来人の一人なんです。超時空間多重世界宇宙連邦の管理局に努めているハイパーインテリジェンスサイボーグ。それが私こと地球担当の女神のアイエラです。」
「アイエラさんですね。」
「はい。そう呼んでいただけて結構かと。」
「えっと、じゃあ俺の魂は未来の発達した文明によって回収されている感じなんですか?」
「そのままにしたら魂はアストラルラインと言う地球を取り囲む精神エネルギーだけで作られた輪の中に入って、他人と知識や経験がごっちゃ混ぜになってから強制的にどここあに輪廻転生をすることになります。酷い罪を犯した人物などはそうなるよう放っておいています。魂が今まで培ってきた記憶が完全に消えて別の魂となってしまう。そっちのほうが良かったんですか?」
それはちょっと、辛いことかもしれない。自分の知識と経験がごっちゃになるなんて。と言うか、生まれ変わったら全部忘れるんじゃないのか。そうでなかったら今頃の地球はきっと大変なことに…。
「ならないんです。脳が神経回路を構築するのと魂が覚えることは同じではありませんからね。けど既視感を感じてしまう時はなかったんですか?なぜか無性に懐かしい気持ちになったり、特定の物や食べ物、匂いに強い執着を感じたり。それはあなたの魂がそれを覚えているからなんです。ちなみにあなたの前世は猫でした。だから魚に対しての執着が人一倍なんですよ。」
まじか。俺の前世は猫だったのか。
「前世が人間ではなかったんですね。」
「はい、考えてみるとわかると思いますが、今の地球の人口は100年前より3倍以上に膨らんでいるのです。そうなってしまった世界は前世が人間だった人より動物だった人が多いのは当然だと思いませんか?」
確かに。だとすると人ととして生きたことが二回以上の人間のほうがマイノリティになるのでは?
「そうですね。実際にあなたが生きている時代の人間は殆どそうなっています。だから文化や思想、複雑な思考、労働により作られるものの質などが過去に比べたら技術的進展があるのにもかかわらずかなり廃れているという状況となっています。例えば今は過去の建築物のように美しい装飾をしたり、複雑かつ繊細な線で描いた絵画などを見つけるのが難しくなっているのです。」
それはなんとも言えないことだった。つまり今の地球は魂的に未熟なもので溢れていて、それにより精神文化が退化しているような状態ってことなんだろうけど。
「俺は別にその状態を悪いとは感じませんでしたけど。」
「それはあなたの前世が猫だったからですね。猫は単純な生き物。それから人になったんですから、何もかも不思議で、そうですね。あなたは好奇心旺盛で、自分の感情を人に見せるのが苦手でした。それはあなたの猫としての記憶が魂に残っているから。それがなくなってしまった状態で輪廻転生をするなんて辛いでしょう。だから我々はそうならないよう、魂の記憶を保存するようにしているのですよ。」
「けど輪廻転生じゃなくここで過ごすことになるって言ったではありませんか。」
「そうです。美しい景色を見ながら、好きなだけ快楽が楽しめます。」
めちゃくちゃ退屈そうだと思ったのは俺だけじゃないはずだけど。そんな人たちは輪廻転生を選んだのかな。そもそも選択肢ってあるのか。これも強制的と言えば強制的な気がしなくもないけど。
「それだけですか?」
「すべての痛みから解放されます。睡眠も食事も必要ありません。いくらでも情報を習得できる小さな端末が支給されます。」
いくらでも情報を習得って、漫画とか読めるってことかな。
「漫画とか読めますか。」
「映画も見れますよ。」
「ゲームとかも出来ますか。」
「出来ます。」
「ゲーム作れたりしますか。」
「作ることは出来ませんね。」
「なんでですか。」
「あなたが今まで生きて来た惑星、そうですね、地球からの情報ならすべて習得できます。例えばガチャゲーとかあるでしょう?無限に回せますよ。」
それはいいかもしれない。
「未来のゲームとかも出来ますか?」
「出来ませんね。あなたが死んだ自転であなたの魂の時間はあなたが生きていた時代に固定されますから。」
「ええ…。じゃあ来年に発売するゲームとかがプレイしたいと思ったら…。」
「転生するしかありません。」
「なんでですか。未来の技術で何とかなるんじゃないですか。」
「そうしたらあなたは転生することを選ばなくなるでしょう。」
「ここに永遠に過ごすほうを進めてきたのはアイエラさんなんですよね。」
「ちょっと違います。ここで好きなだけ過ごして、これでいいと思ったら転生する。そう言うのがおすすめです。」
「なんでですか。」
「気になりませんか?世界はあなたが見ていない景色で溢れている。あなたが知らなかった情報で溢れている。なのにあなたは死んでしまった。無限のような景色と無限のような情報があります。今ままで人類が書いた物語、作った映画や音楽、絵画。それらを知らないまま次の人生に行きたいんですか?」
確かにそれは、勿体ないかもしれない。俺が猫から人間になろうとした時だって、ああ、そうだ。思い出した。
俺はとあるおじいちゃんい飼われていた。彼は物静かな人で、死んだおばあちゃんを懐かしみながら涙を流しているのを見ていた時、俺はその涙を拭いてあげたいと思っていた。だが俺の手は猫のままで、お爺ちゃん、悲しまないでって、人になって伝えたかった。俺まで、まあ、前世で猫だったころは雌だったが、死んでしまって、お爺ちゃんはどうしていたんだろうか。
「そう、あなたはそうやって人になったんです。そしてここに来たこともあります。その時の担当は私ではありませんでしたけど。」
「そうですね。青い肌の、別の女神さまにあいました。」
そして俺は猫のまま人間になってしまったら何もかもわからないままなはずだからと、人間の知性を持たされてから色んなことを学んでもらった。人類の歴史を勉強して…。そして、お爺ちゃんの最後も見てもらった。お爺ちゃんは亡くなった俺を庭に埋めていた。泣いていた。
その顔を見て、また生まれたら彼の基へと女神様にお願いしたんだっけ。
「もしかして。」
「はい。あなたの妹です。大事にしていましたね。」ああ、なのに俺はまた死んでしまった。
彼女は今どうしているんだろうか。
「見てみますか?」
「見たら、また彼女の基へ行けるようになりますか。」
「それは地球の事情とかもありますし。魂同士の縁が深くなりすぎるのはお勧めしません。もっと熟考して決めたほうがいいかと。」
「なんで魂同士の縁が深まるのはいけないんですか?」
「行けないわけではありませんけど、そうですね。旅人のようなものだと考えてみてください。人生と言う名の旅を経験し、また次へ行ける。けど魂同士の関係が深まるばかりだと、結びつきが強くなって、ずっと同じ場所で生まれるようになって、挙句には体さえも共有してしまったりと…。見たことありませんか?」
ああ、確かに、一つの体に頭が二つある人とかネットで見たことある。
「しまいには魂が同化してしまうことになります。それでもいいと?」
文字通り二人が一つになるってことか。ロマンティックに感じる人、魂?もいそうではあるけど。俺は確かにそれはちょっと厳しいかもしれないと思いなおした。
「それにあなたの妹はあなたから大切にされたことで、あなたが猫として大切にされた分のことをその魂に与えることが出来ました。それで魂同士での貸し借りはなくなったんです。忘れてもいいではありませんか。」
そう言われてはい、そうですねなんて言えそうにはなかったけど、逆に別の魂にしつこく付きまとうのもよくない気がしたのは事実だった。だから俺は話題を今の状況に変えた。
「その快楽のボタンが付いた椅子とかは何ですか?」
「座ってボタンを押すと全種類のオーガズムと麻薬による覚醒効果が体験できます。時間も指定できますよ。食事の味や好きな匂いも再現できます。」美しい女神の口からオーガズムと言う単語を聞いたのでちょっとドキッと、なんてすることはなく。心臓がないからか。
「天国か。」
「そうですよ。天国みたいなものです。だから誰も転生なんてしないってなるのです。」
「じゃあ人口とか増えないじゃないですか。皆どうしているんですか?二回目に生まれたりする人がなくなると思いますけど。」
「この生活に飽きたら転生を選ぶことになるのです。それはすぐ後のことになります。ここでの時間は相対的なもの。あなたの魂こそ世界の観測者。観測するものがなくなった世界の時間はあなたにとって止まったのと同然です。」
止まったのと当然?少し気になる言い方である。
「はい、実際は宇宙が膨張する相対速度による倍率がかかってしまいますが、その速度は刹那を生きる人間にとっては無限に等しいので。相対性理論の話は聞いたことありませんか?」聞いたこともあるし少しは学んだ。と言うか、それがこんな死後の世界?の領域にも該当するものだなんて思湧かなったもので。
「その宇宙の膨張する速度はどれくらいなんですか?」
「光の速さの2.4倍ほどです。」
「秒速72万キロメートルほどってことですか。」
「その倍率が適応されるので、ここでの72万秒は地球での一秒となります。」
な…なんと…。
「つまりここで72万年を過ごしても地球では…。」
「一年過ぎたことになりますね。だから時間は無弁に等しいのです。」
「じゃあ、えっと。72万年経ったら、1年後に発売されるゲームとかの情報も…。」
「それはあなたの魂の問題なので、1年経った後でもその情報を得られることは許容範囲を超えています。」
なるほど、そうなるのか。ここで72万年も過ごす人がいるのか疑問だけど、いるかもしれないけど、俺はそこまでの時間を過ごせそうになかった。10万年くらいなら過ごせなくもないかもしれない。快楽の椅子と今までの人類が培ってきたすべての著作物を閲覧できるとなると。こんな環境ってありか。
ニートは生きるより死んでここに来るほうがいいんじゃないか…?いや、まあ。最新のゲームとか最新のアニメとか漫画とか映画とか小説とかが気になるなら地球でニートとして生きるほうがいいかもしれないけど。
「ちなみに異世界に転生するとかはできないんですか?」
「似たようなことは出来ますけど、おすすめはしません。」
「と言うと?」
「例えば宇宙の物理法則がもう一つ存在していて、それが魔法のような事象を起こせる世界があるとします。実際にいますけど、その世界はファンタジー世界のようになると思いますか?」
「なるんじゃないですか?」
「地球の文明を考えてみるとわかると思いますけど、人は必要の応じて建物や衣服などを作ってきました。魔法が使える人間にそれが必要だと思いますか?そして人の前の段階、もっとも単純な生物でさえ想像したものを事象に変える力を行使できるとして、その生物が人間のように不便な、二足歩行をするのですぐ転んでしまうような形で進化すると思いますか?」
それは確かに難しいと思うけど。
「じゃあその世界での生物はどんな形をしていますか?」
「触手怪物です。」
「えっと…。タコみたいな?」
「クトゥルフ神話みたいな。」
「なるほど…。」考えてみると魔法のある世界は文明すらも必要ない気がする。何もかも魔法で簡単に出来たら、食べ物とか気温とか魔法で何とかすればいいだけだし。
「じゃあ、えっと。素敵な世界とかありませんか?冒険とか出来て、綺麗な人たちが多い世界とか。」
「未来ですね。」
「未来では冒険なんて出来ないんじゃないですか?」
「仮想現実で出来ますよ。」
「VRMMOみたいな?」
「そんな感じです。」
「じゃあそんな世界で生まれ変わることは出来ませんか?」
「別の惑星や別の銀河、別の宇宙になりますけど。それでいいんですか?地球にはもう戻らないと?」
地球か。いいことも確かにあった。家族との時間は楽しかったし、面白いゲームや美味しい食べ物、好きな歌とかも多かった。けどどこか窮屈で、庶民には何の力もなく、自分より無能な人間が自分を命令する立場になれることが出来るような世界に怒りを覚えたことは否定できない。それとワクワクが足りないというか、冒険もないし、勇気を試される場面も少なかった。彼女とは心が深く通じ合っていたわけでもないのに簡単に結婚を迫られるし、バカで粗暴な人達も多かったし。
だけど、そう。
「まだわからないことが多いので、ここでえっと、いつになるかわかりませんけど、飽きるまで時間を過ごした後で決められませんか。まだ人類の歴史とか、人々のことでわからないことも多い気がするので。」
「それで構いません。椅子の使用方法はあなたが知りたいと思ったらわかるようになると思います。これがその椅子です。」アイエラさんがそう言うと歯医者さんに行ったら座るような椅子が俺の隣に出現した。
「そしてこれが端末です。」彼女からタブレット端末にしか見えないものを貰う。不思議と手に馴染んで、落とすこともなくふよふよと浮いていた。
「この空間のどこへでも念じたら表れますし、画面は好きな場所に投影できます。本は背景を図書館に帰れば中に入って見つけることも出来ますし、端末から直接読むことも可能です。」
なんて便利な未来技術。
けど気になることがあった。
「寂しくなったらどうすればいいんですか。」
「端末で人も作れます。魂は入ってませんが。人格と見た目、表情や感触などを完全に再現できます。何なら殺したり犯しても構いません。」
女神なのにそれでいいのか。
「あなた方は我々からしたら原始人以下ですからね。例えるなら、そうですね。私とあなたの感覚や意識はあなたと昆虫ほどに離れているんですよ。」
「そんなに?」
「ちなみに今私は9万人と同時に似たような会話をしているのです。想像できますか?ここにいる私も実体ではありません。」
「実態は触手怪物ですか。」
「もっと恐ろしいと思います。想像はしないでください。発狂しますよ。」
「冗談ですよね?」
アイエラさんはふふっと笑った。
もしかしたら俺は触手怪物に魂を食べられているだけなのかもしれない。甘い刺激と誘惑で…。
「それはありませんね。第一そうだとするならここまでする理由がない。ただ快楽の溢れる刺激と幻想を見せるだけでいい。ここまでややこしい説明をするわけないでしょう?」
「味付けとか…。」
「あのですね…。まあいいでしょう。信じられないというのならずっとここで過ごしてみればどうですか。流石に数十億年もここに過ごしてたら全く知らない時代で生まれることになると思いますが。それとも本当に永遠にここで過ごしてみます?いるんですよ、実は。西暦336年に死んだ人間が、まだここで過ごしている。」
72万×1680年…。
「ざっと12億年ですね。」
12億年もこんなところで過ごしているのか…。しかも読める本とか聞ける音楽とかも336年まで作られているものに限定されて…。地獄かな?
「天国ですから。信じるも信じないも自由ですけど、せめて永遠を過ごす前に転生をしてください。何ならあのクトゥルフ神話のような魔法のある世界で構いませんから。」
いやいや、さすがにそれはしないって。
「じゃあ私はこれにて。何か必要なことがあれば端末を操作して確認してみてください。何もかも手に入りますから。何ならここにすべての人類を再現して疑似的な社会を作ってからあなた自身の記憶を任意に削除し暮らすことも可能ですよ。」
ええ、そこまで出来るの?
「そのための天国ですからね。なんでもできずにして何が天国ですか。」
確かに。
「ほかの魂をここに呼ぶことだけは出来ませんので。再現は出来ますけど。」
中身のない人形みたいなものってことか。と言うか記憶消したら大変なことになるじゃん。
「それは自己責任ですね。自力でここが作られた現実であることを自覚するか、それとも永遠にここに囚われるか。」
「やっぱやばいところなんじゃ。」
「嫌だった今からまた転生します?」
「いいえ、俺はまだ食べたことのない食べ物とかありますし。」
種類の違うオーガズムとかも気になるし。
「それで結構です。では、私はこれで。最後に、天国へようこそ。楽しんでいってください。」そう言い、アイエラさんはすっと消えた。
俺の隣には椅子が、手の中にはタブレット端末があった。
操作してみよう。先ずは椅子に座って…。
やばい。これは確かに天国かも。
俺はいつまで続くかは知らないが、取り敢えず今は楽しむことにしたのだったのである。
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