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第二幕 旅の始まり
黒い子守歌
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『ぐじゃっ!』
嫌な音がした。さっきまで怖い顔でこっちを睨んでいたライオンの真ん中の頭は爆散した。辺りに血しぶきと肉片が飛び散り、頭のなくなった首がだらんと下に垂れた。
あっけない。何なんだこいつ。見かけより弱いのか?
しかし何故か、やってやった感よりも、やっちまった感の方が強い。3つある頭の1つを倒したところで、ライオン本体は倒れない。しかも中途半端なダメージを受けるとかえってパワーアップするのがモンスターのお約束だよな。
……案の定だ。残り2つの頭がぎょろっと目を剥いてこちらを見た。血しぶきを浴びて顔が真っ赤に染まりものすごい形相だ。その目力だけで生き物を殺せるぐらいの圧がある。
それでもまだ俺の頭の中に走馬灯は巡らなかった。俺はすぐライオンの向かって右側の頭に手をかざし、再びテンポを落としてグルーヴィーなラップを歌い出した。
もう土下座して『ごめんなさい』で済む話ではない。俺は殺されるだろう。でもどうせ死ぬなら精一杯戦って相手にダメージを与えて死んでやる。
ライオンはダッシュで一気に間合いを詰めてきた。背中を向けて全力で逃げたいところだが、こんな奴に背中を向けたらその時点で死ぬ。俺は後ずさりしながらも右手を構えて震歌を歌い続けた。
ライオンは俺のすぐ手前まで来て、がばっと後ろ足で立ち上がった。でかい。象ぐらいの大きさはあるな。そして向かって右側の頭で俺を威圧するように睨みつけた。
「痛いな、小僧。痛かったぞ」
あっ、こいつもしゃべるんだ。まあ狼がしゃべるぐらいだからライオンだってしゃべるだろう。しかし声がでかい上にダミ声だ。
「ふん、お前が今度来た黒髪の歌い手だな。黙呪王様の所へ連れて行く前に遊んでやろう」
あ、黒髪だってバレてる。頭に巻いていたニコのスカーフは……外れてどこかに行ってしまってた。ごめん、ニコ。あれはニコのお気に入りのスカーフだったのに。
ライオンは前足を腕のように広げ、大きく息を吸い込んだ。そしてそれを一気に吐き出しながら歌った。
「吹けや風よ、吹けや風よ、切り裂けっ、細切れにしろっ、細切れにしろおっ♪」
メロディーは綺麗なのに声が低くダミ声なのでデスメタルにしか聞こえない。いや別にデスメタルを悪く言うつもりはないんだが。
しかしその瞬間、どおおっと冷たい風が吹き付けて来ると同時に何かがいっぱい飛んできて俺の身体に容赦なくぶち当たってきた。痛い、痛い、痛い、何だこれはっ!
仕方なく俺は震歌を諦め地面に伏せた。それでも背中にガツガツ固いものがぶつかってくる。いっそ転がればマシになるかと思い、風が吹き付けるまま後にごろごろ転がってみた。それで何かがぶつかってくる勢いは若干緩くなった。
しばらくしてようやっと風が吹き止んだ。どっこしょと立ち上がって周囲を見回し驚いた。ススキの茂みは本当に切り刻まれ吹き飛んでしまったようで辺り一帯何もなくなってしまっている。その辺にいたはずの黙呪兵すら細切れにされてしまったのか姿がない。
全身あちこちが痛い。見ると上着のあちこちが切れてしまっている。いや、上着だけじゃなく肌着も切れて素肌が見えている。ただ幸い深手を負ったところはなさそうで、身体の動きには支障がない。
「ちっ、乱風刃を浴びせてその程度か。属性耐性だな。面白くない奴だ」
ライオンのもう一方の頭がしかめ面で吐き捨てた。何だ? ランフウジンって。ゾクセイタイセイって。何か俺、ライオンの気に入らないようなことしたのか? だったらごめんなさい。
いや、謝ってる場合じゃないって。俺はとりあえず再び距離をとるため速攻でハイスピードのリズムを刻み、震刃を放った。右手、左手ばらばらに切り刻み、ライオンを足止めした上で後に後に下がって行く。
「ちっ、乱震刃か、うっとおしい。小僧、もういい。一気に燃やしてやる」
さすがにボスキャラだ。狼や黙呪兵とは違う。これ、乱震刃っていうのか? 俺が震刃をいっぱい食らわせてもさっぱり効いてない。ライオンの後のススキはスパスパ切れてるから、震刃そのものはちゃんと発動してるのに。
ライオンはまた前足を腕のように広げ、今度は左右の頭が同時に大きく息を吸い込んだ。何だ? 今度は何が来るんだ? また風が来るのか。「燃やしてやる」って言ったよな。炎が来るのか。ひょっとして両方いっぺんに来るのか。まずい。さすがにそれはまずい。俺は後を向いて全力で走ろうとした。
しかしその時だった。
『ばっしいいいいいいいいいいん!!』
頭の上で強い閃光と轟音が響き、俺は激しく地面に叩きつけられた。息ができない。身体がびりびり痺れて動けない。
こ、これは……先日、あの黒い鳥女が至近距離に雷を落とした時と同じ感覚だ。何だ、ライオンが雷を使ったのか?
「きひひひひ! 頭の悪い奴はビリビリの刑だよ。いっひひひひ!」
ああ、この鼓膜に突き刺さるような笑い声は……
無理矢理身体をねじって空を見上げ、俺の心は絶望で真っ暗になった。何でだ? ライオンだけでもう十分死にかけてるのに、何でボスキャラがもう一体飛んでくるんだ?
鳥女は気持ちの悪い笑い声を響かせながら上空を旋回している。『ヌエ』っていったっけ、こいつ。
しかしライオンの方はどうしたのかと思ったら、雷を食らったのか、その場でぶっ倒れてピクピクしている。俺よりもダメージが大きそうだ。
あれ? 何だこいつら、仲間じゃないのか? 単なる誤爆? いや「頭の悪い奴はビリビリの刑だ」って言ったよな。わざとやったのか? 仲間割れか? 意味が分からん。
立ち上がり、とりあえずライオンから離れようとするが身体が言うことを聞かない。二三歩、歩きかけたところでどっと倒れてしまう。
バサッバサッという羽音がして俺の目の前に黒い鳥女が降り立った。
「きひひひひ! お前、ちょっと歌えるようになったな。しかし震の歌術ばっかりで、歌い手にしちゃレパートリーが狭いんじゃないかえ? いひひひひ!」
鳥女は地面に這いつくばる俺を見下ろしてからかうように言う。また俺のことを歌い手と呼ぶんだな。っていうか、何でこいつが『レパートリー』なんて概念を知ってるんだ?
しかしやっぱり顔は美人だ。ブロンドの髪を後にまとめているが、少しほつれた所があって、アホ毛が出ているところなどごく普通の人間女性に見える。羽根の収まりが悪いのか、時々羽根を動かす度に形の良い乳房がふるんと揺れる。胸から上だけ見たらただの裸の美女だ。
「きひひひひ! いひひひひ! お前、私の美しさに見とれてるのかえ?」
そ、そんなわけないだろう! しかしこいつに会うのは二度目だし、前は結局見逃してくれたからか、あの時ほどの恐怖感や嫌悪感は感じない。しかし何しに来たんだ? ライオンを倒してしまったということは、俺を助けに来てくれたのか?
「お前に良いものをくれてやろう」
は?
俺に反応する間を与えず鳥女は歌い出した。ダメだ、こいつ歌うと良い声なんだ。妙に可愛い声なんだ。つい聴いてしまう。
「まぶたよ、まぶたよ、重くなり重くなりて、心を虚ろの中に落としたまえ~♪」
あっ! しまった。
まずい。これは歌術だ。しかもこれは情の歌術の一つ眠歌だ。文字通り相手を眠らせるものだ。
やられた! もろに聴いてしまった。
歌詞の通りまぶたが重くなってくる。暗い穴の中に意識が吸い込まれていく。
ああ、しまった。そうだよな、助けてくれるはずがない。こいつもモンスターだ。仲間割れしたかのように見せて俺を油断させたんだ。美乳に見とれてるうちにまんまと罠にかかってしまった。
歌って歌って歌いまくって、黙呪兵もだいぶ倒してしまった。ライオンの頭も1つ吹き飛ばしてしまった。捕まった以上、俺は間違いなく極刑だ。どんな殺され方をするんだろう。黙呪王ってどんな恐ろしい奴なんだろう。いっそここでライオンに焼き殺されてしまった方が楽に死ねたかもしれない。
溺れるかのように意識は水面で浮きつ沈みつしている。朦朧とする中で、後ろ手に手錠をかけられたのと、口に粘着テープのようなものを貼られたのは分かった。このテープは歌術封じか。良いアイデアだ。声に出して歌わなければ歌術は発動しないからな。
どこから出てきたのか周りで人間があれこれしゃべってるのがうっすら聞こえる。
「こいつか、黒髪の歌い手っていうのは?」
「髪が黒いだけで、普通の少年に見えるがな」
「いやいや、たった一人であれだけの黙呪兵を倒し、ベロス様の頭を一つ吹き飛ばしたんだぞ。なんて歌の強さだ。人間じゃねえ、魔物だよ」
「というかベロス様とタイマン張るなんて、どんだけ属性耐性高いんだよ」
「ヌエ様が来てくれなきゃヤバかったかもな」
「しかし関係ないけど、ヌエ様ってエロいよなあ」
何だ? 俺のことを言ってるのか? 誰か別の奴の話か? ヌエ様ってあの鳥女だよな。ベロス様っていうのがライオンの名前か。まあ、そんなことはもうどうでも良い。
俺のかすかな意識に浮かんでくるのは……ニコの姿だ。
ニコが俺の分のスイーツを持って村の噴水の前できょろきょろしてる姿が見える。俺の名を呼びながら夕暮れの草原をさまよっている姿が見える。
ダメだ、ニコ。俺に構わず早く、早くナジャの街へ行け。俺はもうダメだ。ニコ、ごめん。ニコ……
俺の意識はそこで漆黒の闇に沈んだ。
嫌な音がした。さっきまで怖い顔でこっちを睨んでいたライオンの真ん中の頭は爆散した。辺りに血しぶきと肉片が飛び散り、頭のなくなった首がだらんと下に垂れた。
あっけない。何なんだこいつ。見かけより弱いのか?
しかし何故か、やってやった感よりも、やっちまった感の方が強い。3つある頭の1つを倒したところで、ライオン本体は倒れない。しかも中途半端なダメージを受けるとかえってパワーアップするのがモンスターのお約束だよな。
……案の定だ。残り2つの頭がぎょろっと目を剥いてこちらを見た。血しぶきを浴びて顔が真っ赤に染まりものすごい形相だ。その目力だけで生き物を殺せるぐらいの圧がある。
それでもまだ俺の頭の中に走馬灯は巡らなかった。俺はすぐライオンの向かって右側の頭に手をかざし、再びテンポを落としてグルーヴィーなラップを歌い出した。
もう土下座して『ごめんなさい』で済む話ではない。俺は殺されるだろう。でもどうせ死ぬなら精一杯戦って相手にダメージを与えて死んでやる。
ライオンはダッシュで一気に間合いを詰めてきた。背中を向けて全力で逃げたいところだが、こんな奴に背中を向けたらその時点で死ぬ。俺は後ずさりしながらも右手を構えて震歌を歌い続けた。
ライオンは俺のすぐ手前まで来て、がばっと後ろ足で立ち上がった。でかい。象ぐらいの大きさはあるな。そして向かって右側の頭で俺を威圧するように睨みつけた。
「痛いな、小僧。痛かったぞ」
あっ、こいつもしゃべるんだ。まあ狼がしゃべるぐらいだからライオンだってしゃべるだろう。しかし声がでかい上にダミ声だ。
「ふん、お前が今度来た黒髪の歌い手だな。黙呪王様の所へ連れて行く前に遊んでやろう」
あ、黒髪だってバレてる。頭に巻いていたニコのスカーフは……外れてどこかに行ってしまってた。ごめん、ニコ。あれはニコのお気に入りのスカーフだったのに。
ライオンは前足を腕のように広げ、大きく息を吸い込んだ。そしてそれを一気に吐き出しながら歌った。
「吹けや風よ、吹けや風よ、切り裂けっ、細切れにしろっ、細切れにしろおっ♪」
メロディーは綺麗なのに声が低くダミ声なのでデスメタルにしか聞こえない。いや別にデスメタルを悪く言うつもりはないんだが。
しかしその瞬間、どおおっと冷たい風が吹き付けて来ると同時に何かがいっぱい飛んできて俺の身体に容赦なくぶち当たってきた。痛い、痛い、痛い、何だこれはっ!
仕方なく俺は震歌を諦め地面に伏せた。それでも背中にガツガツ固いものがぶつかってくる。いっそ転がればマシになるかと思い、風が吹き付けるまま後にごろごろ転がってみた。それで何かがぶつかってくる勢いは若干緩くなった。
しばらくしてようやっと風が吹き止んだ。どっこしょと立ち上がって周囲を見回し驚いた。ススキの茂みは本当に切り刻まれ吹き飛んでしまったようで辺り一帯何もなくなってしまっている。その辺にいたはずの黙呪兵すら細切れにされてしまったのか姿がない。
全身あちこちが痛い。見ると上着のあちこちが切れてしまっている。いや、上着だけじゃなく肌着も切れて素肌が見えている。ただ幸い深手を負ったところはなさそうで、身体の動きには支障がない。
「ちっ、乱風刃を浴びせてその程度か。属性耐性だな。面白くない奴だ」
ライオンのもう一方の頭がしかめ面で吐き捨てた。何だ? ランフウジンって。ゾクセイタイセイって。何か俺、ライオンの気に入らないようなことしたのか? だったらごめんなさい。
いや、謝ってる場合じゃないって。俺はとりあえず再び距離をとるため速攻でハイスピードのリズムを刻み、震刃を放った。右手、左手ばらばらに切り刻み、ライオンを足止めした上で後に後に下がって行く。
「ちっ、乱震刃か、うっとおしい。小僧、もういい。一気に燃やしてやる」
さすがにボスキャラだ。狼や黙呪兵とは違う。これ、乱震刃っていうのか? 俺が震刃をいっぱい食らわせてもさっぱり効いてない。ライオンの後のススキはスパスパ切れてるから、震刃そのものはちゃんと発動してるのに。
ライオンはまた前足を腕のように広げ、今度は左右の頭が同時に大きく息を吸い込んだ。何だ? 今度は何が来るんだ? また風が来るのか。「燃やしてやる」って言ったよな。炎が来るのか。ひょっとして両方いっぺんに来るのか。まずい。さすがにそれはまずい。俺は後を向いて全力で走ろうとした。
しかしその時だった。
『ばっしいいいいいいいいいいん!!』
頭の上で強い閃光と轟音が響き、俺は激しく地面に叩きつけられた。息ができない。身体がびりびり痺れて動けない。
こ、これは……先日、あの黒い鳥女が至近距離に雷を落とした時と同じ感覚だ。何だ、ライオンが雷を使ったのか?
「きひひひひ! 頭の悪い奴はビリビリの刑だよ。いっひひひひ!」
ああ、この鼓膜に突き刺さるような笑い声は……
無理矢理身体をねじって空を見上げ、俺の心は絶望で真っ暗になった。何でだ? ライオンだけでもう十分死にかけてるのに、何でボスキャラがもう一体飛んでくるんだ?
鳥女は気持ちの悪い笑い声を響かせながら上空を旋回している。『ヌエ』っていったっけ、こいつ。
しかしライオンの方はどうしたのかと思ったら、雷を食らったのか、その場でぶっ倒れてピクピクしている。俺よりもダメージが大きそうだ。
あれ? 何だこいつら、仲間じゃないのか? 単なる誤爆? いや「頭の悪い奴はビリビリの刑だ」って言ったよな。わざとやったのか? 仲間割れか? 意味が分からん。
立ち上がり、とりあえずライオンから離れようとするが身体が言うことを聞かない。二三歩、歩きかけたところでどっと倒れてしまう。
バサッバサッという羽音がして俺の目の前に黒い鳥女が降り立った。
「きひひひひ! お前、ちょっと歌えるようになったな。しかし震の歌術ばっかりで、歌い手にしちゃレパートリーが狭いんじゃないかえ? いひひひひ!」
鳥女は地面に這いつくばる俺を見下ろしてからかうように言う。また俺のことを歌い手と呼ぶんだな。っていうか、何でこいつが『レパートリー』なんて概念を知ってるんだ?
しかしやっぱり顔は美人だ。ブロンドの髪を後にまとめているが、少しほつれた所があって、アホ毛が出ているところなどごく普通の人間女性に見える。羽根の収まりが悪いのか、時々羽根を動かす度に形の良い乳房がふるんと揺れる。胸から上だけ見たらただの裸の美女だ。
「きひひひひ! いひひひひ! お前、私の美しさに見とれてるのかえ?」
そ、そんなわけないだろう! しかしこいつに会うのは二度目だし、前は結局見逃してくれたからか、あの時ほどの恐怖感や嫌悪感は感じない。しかし何しに来たんだ? ライオンを倒してしまったということは、俺を助けに来てくれたのか?
「お前に良いものをくれてやろう」
は?
俺に反応する間を与えず鳥女は歌い出した。ダメだ、こいつ歌うと良い声なんだ。妙に可愛い声なんだ。つい聴いてしまう。
「まぶたよ、まぶたよ、重くなり重くなりて、心を虚ろの中に落としたまえ~♪」
あっ! しまった。
まずい。これは歌術だ。しかもこれは情の歌術の一つ眠歌だ。文字通り相手を眠らせるものだ。
やられた! もろに聴いてしまった。
歌詞の通りまぶたが重くなってくる。暗い穴の中に意識が吸い込まれていく。
ああ、しまった。そうだよな、助けてくれるはずがない。こいつもモンスターだ。仲間割れしたかのように見せて俺を油断させたんだ。美乳に見とれてるうちにまんまと罠にかかってしまった。
歌って歌って歌いまくって、黙呪兵もだいぶ倒してしまった。ライオンの頭も1つ吹き飛ばしてしまった。捕まった以上、俺は間違いなく極刑だ。どんな殺され方をするんだろう。黙呪王ってどんな恐ろしい奴なんだろう。いっそここでライオンに焼き殺されてしまった方が楽に死ねたかもしれない。
溺れるかのように意識は水面で浮きつ沈みつしている。朦朧とする中で、後ろ手に手錠をかけられたのと、口に粘着テープのようなものを貼られたのは分かった。このテープは歌術封じか。良いアイデアだ。声に出して歌わなければ歌術は発動しないからな。
どこから出てきたのか周りで人間があれこれしゃべってるのがうっすら聞こえる。
「こいつか、黒髪の歌い手っていうのは?」
「髪が黒いだけで、普通の少年に見えるがな」
「いやいや、たった一人であれだけの黙呪兵を倒し、ベロス様の頭を一つ吹き飛ばしたんだぞ。なんて歌の強さだ。人間じゃねえ、魔物だよ」
「というかベロス様とタイマン張るなんて、どんだけ属性耐性高いんだよ」
「ヌエ様が来てくれなきゃヤバかったかもな」
「しかし関係ないけど、ヌエ様ってエロいよなあ」
何だ? 俺のことを言ってるのか? 誰か別の奴の話か? ヌエ様ってあの鳥女だよな。ベロス様っていうのがライオンの名前か。まあ、そんなことはもうどうでも良い。
俺のかすかな意識に浮かんでくるのは……ニコの姿だ。
ニコが俺の分のスイーツを持って村の噴水の前できょろきょろしてる姿が見える。俺の名を呼びながら夕暮れの草原をさまよっている姿が見える。
ダメだ、ニコ。俺に構わず早く、早くナジャの街へ行け。俺はもうダメだ。ニコ、ごめん。ニコ……
俺の意識はそこで漆黒の闇に沈んだ。
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