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第4章 ルピア公国 攻防戦
第19話 公都ルピア殲滅戦 7 (ウガン伯爵)
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異世界召喚 79日目
都市ゼンダ殲滅戦より、9日目
スポイツアを出発し、4日目
公都ルピア…
その城の地下一階の壁の裏にある、秘密通路…
その秘密通路の一つは、ドウイ川へ向かっており、その通路奥には3mほどの間隔で、3つ聖石を嵌めてある大きな鉄のハンドルが石畳の床にあった。
ダペス家の騎士が、2人づつ鉄のハンドルを握る。それぞれが、聖力を高め聖石へ力を込めていく。
そして、聖石へ聖力が込められたハンドルは、やっと2人がかりで回る。
騎士達は、奥のハンドルから回していく。
…ゴゥゥ~…
石畳の床下より、大量の水の流れる音がする。
その大量の水は、地下の大広間へ向かい流れていき、大広間から森へつづく、脱出用の大きなトンネルに
勢いよく流れ込んでいく。
「うぁ~~、水だぁ~水がきたぁ~」
「はやく、はやくいけー」
通路の中にいた市民兵達は、パニックに陥った。
我先に、森へ向かって引き返そうとするが、トンネル内にはすでに3000人が入っており、その後方は城を目指し進んでいる。
引くに引けず、進むにすすめず…
あっというまに水がトンネルに満ちていき、ランプ皿や松明の火を消し、トンネル内を怒号が響く漆黒の闇とした。
そして、トンネル天井まで水が満ち…怒号は聞こえなくなり…
しばらくすると…トンネル内で動く者は、だれもいなくなった。
ただ、水の中を…3000人の市民兵が、漂っていた。
松明を地下一階の大広間に放り投げられ、炎であたり一面が覆いつくされたとき、地下の脱出用トンネルの傍にいた傭兵達は、我先にトンネル内に逃げ込んだ。
しかし、そこはすぐに水が流れ込んでいき、トンネル内を水で満たし、トンネルに逃げ込めなくなった。
次々に、炎で焼かれ…煙に巻かれ…傭兵が…騎士たちが倒れていく。
その中、数人の騎士が必死に閂で閉じられた鉄の扉を、戦斧で、剣で打ち壊そうとしていた。
「もう、すこしだ!」
扉がゆがみ、隙間が出来た。戦斧を持つ騎士が、もう一撃…全力で戦斧を振るった。
ドガッッ
扉が壊され床に倒れる。
地下一階に充満していた黒い煙は、一気に扉から階段へ流れ、階段を上り城の裏手側の広間へ上がっていく。
その光景を想定していたかのように、その広間の外へ続く扉は開けられており、黒い煙が扉より空へ昇っていく。
そして、扉付近でなんとか生きながらえていた数十人の騎士が、煙に巻かれながら階段を登っていった。
広い階段を登りきった…炎地獄と化した地下一階から脱出できた騎士は…
ルピア公国騎士200、モスコーフ帝国騎士500、傭兵1000…の中、わずか30人足らずであった。
その中には、この夜襲隊の指揮官…
ルピア公国のウガン伯爵、副官・騎士トマシェもいた。
階段を登りきり、広間に這い出る。
そして、頭をあげ、咳き込みながら新鮮な空気を吸い込んだ。
そこで、彼らが見たものは…数メートル先に立つ黒騎士。
そして、周りをぐるりとイシュ軍の騎士たちに囲まれていた。
「くっ、やはり貴様か黒騎士…」
ウガン伯爵は呻いた。
大戦果となるはずだったブスタ大平原での戦…
その追撃戦を邪魔し、悪魔のような力でティザ川を、すべて飲み込む濁流と変え、ルピア公国騎兵隊、モスコーフ帝国騎兵隊を壊滅させた…悪魔…
この世界での戦は、騎兵の2割の損失で戦を継続するか考え、4割ほどの損失となると、隊形を再編できず
自然と退却になることが多い。
しかし、ブスタ大平原での損失は95%以上であった。
よって、主兵力を投入していたルピア公国の王・有力貴族達はうろたえ、すぐに公都を放棄し逃げ出した。
しかし、このまま敵に公都をやすやすとやるわけにはいかない。ウガン伯爵は、一歩も引かず大公へ進言した。
乗り気でないルピア大公を、モスコーフの知恵と呼ばれるスキピオ・ポエロ将軍の夜襲策だからと、しぶしぶ納得させ、この夜襲にルピア公国の残存騎士すべてをつぎ込んだ。
その結果が…全滅
大火傷を負い半死半生の身であるが、ウガン伯爵と、騎士トマシェは黒騎士から目を離さずゆっくりと立ち上がった。
2人は頭部の甲冑を脱いだ…
「貴様が黒騎士だな。我が最後に、貴様に会えるとは運がよい」
ウガン伯爵は、自分の人生を皮肉った。
「ブスタ大平原での戦いといい、この夜襲を読み、さらに逆手に取りわれらを全滅させた手際といい、戦において、大切なことは結果…勝つことだ。
貴様は、その一点において賞賛に値する!」
ウガン伯爵は、ゆっくり大剣を構えた。
「戦において恨みを持つことは、志のないものが考えることだ、身分の低いものが考えることだ
だが………だが…
貴様は、我らルピア公国最後の騎士たちと剣を交えず、炎で焼き殺した。
恨みを口にし、我が名が穢れようとも、我が配下の騎士たちの恨み…一太刀、与えてくれるわ!」
大きく叫ぶと、ウガン伯爵は黒騎士へ突進し、大剣を大きく振りかぶり、黒騎士の左肩から心臓へめがけ
切り込んだ。
ガキッッ
しかし、大剣は黒い甲冑に阻まれ傷一つつけることは出来なかった。
「くっっ、びくともせずか…」
口元が、にやり…と笑った瞬間
黒騎士の剣が、ウガン伯爵の首を切り飛ばした。
ウガン伯爵の頭は、空を飛び床に転がる。
首から血しぶきをふきながら、頭を失った体は前へ倒れた。
そして、騎士トマシェ以下、約30人の生き残った騎士は、次々に黒騎士に切りかかっていく。
みな、一太刀あびせ…死んでいった。
周りを取り囲む騎士たちは、その光景を無言で見届けた。
ルピア公国騎士団の最後を…
都市ゼンダ殲滅戦より、9日目
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公都ルピア…
その城の地下一階の壁の裏にある、秘密通路…
その秘密通路の一つは、ドウイ川へ向かっており、その通路奥には3mほどの間隔で、3つ聖石を嵌めてある大きな鉄のハンドルが石畳の床にあった。
ダペス家の騎士が、2人づつ鉄のハンドルを握る。それぞれが、聖力を高め聖石へ力を込めていく。
そして、聖石へ聖力が込められたハンドルは、やっと2人がかりで回る。
騎士達は、奥のハンドルから回していく。
…ゴゥゥ~…
石畳の床下より、大量の水の流れる音がする。
その大量の水は、地下の大広間へ向かい流れていき、大広間から森へつづく、脱出用の大きなトンネルに
勢いよく流れ込んでいく。
「うぁ~~、水だぁ~水がきたぁ~」
「はやく、はやくいけー」
通路の中にいた市民兵達は、パニックに陥った。
我先に、森へ向かって引き返そうとするが、トンネル内にはすでに3000人が入っており、その後方は城を目指し進んでいる。
引くに引けず、進むにすすめず…
あっというまに水がトンネルに満ちていき、ランプ皿や松明の火を消し、トンネル内を怒号が響く漆黒の闇とした。
そして、トンネル天井まで水が満ち…怒号は聞こえなくなり…
しばらくすると…トンネル内で動く者は、だれもいなくなった。
ただ、水の中を…3000人の市民兵が、漂っていた。
松明を地下一階の大広間に放り投げられ、炎であたり一面が覆いつくされたとき、地下の脱出用トンネルの傍にいた傭兵達は、我先にトンネル内に逃げ込んだ。
しかし、そこはすぐに水が流れ込んでいき、トンネル内を水で満たし、トンネルに逃げ込めなくなった。
次々に、炎で焼かれ…煙に巻かれ…傭兵が…騎士たちが倒れていく。
その中、数人の騎士が必死に閂で閉じられた鉄の扉を、戦斧で、剣で打ち壊そうとしていた。
「もう、すこしだ!」
扉がゆがみ、隙間が出来た。戦斧を持つ騎士が、もう一撃…全力で戦斧を振るった。
ドガッッ
扉が壊され床に倒れる。
地下一階に充満していた黒い煙は、一気に扉から階段へ流れ、階段を上り城の裏手側の広間へ上がっていく。
その光景を想定していたかのように、その広間の外へ続く扉は開けられており、黒い煙が扉より空へ昇っていく。
そして、扉付近でなんとか生きながらえていた数十人の騎士が、煙に巻かれながら階段を登っていった。
広い階段を登りきった…炎地獄と化した地下一階から脱出できた騎士は…
ルピア公国騎士200、モスコーフ帝国騎士500、傭兵1000…の中、わずか30人足らずであった。
その中には、この夜襲隊の指揮官…
ルピア公国のウガン伯爵、副官・騎士トマシェもいた。
階段を登りきり、広間に這い出る。
そして、頭をあげ、咳き込みながら新鮮な空気を吸い込んだ。
そこで、彼らが見たものは…数メートル先に立つ黒騎士。
そして、周りをぐるりとイシュ軍の騎士たちに囲まれていた。
「くっ、やはり貴様か黒騎士…」
ウガン伯爵は呻いた。
大戦果となるはずだったブスタ大平原での戦…
その追撃戦を邪魔し、悪魔のような力でティザ川を、すべて飲み込む濁流と変え、ルピア公国騎兵隊、モスコーフ帝国騎兵隊を壊滅させた…悪魔…
この世界での戦は、騎兵の2割の損失で戦を継続するか考え、4割ほどの損失となると、隊形を再編できず
自然と退却になることが多い。
しかし、ブスタ大平原での損失は95%以上であった。
よって、主兵力を投入していたルピア公国の王・有力貴族達はうろたえ、すぐに公都を放棄し逃げ出した。
しかし、このまま敵に公都をやすやすとやるわけにはいかない。ウガン伯爵は、一歩も引かず大公へ進言した。
乗り気でないルピア大公を、モスコーフの知恵と呼ばれるスキピオ・ポエロ将軍の夜襲策だからと、しぶしぶ納得させ、この夜襲にルピア公国の残存騎士すべてをつぎ込んだ。
その結果が…全滅
大火傷を負い半死半生の身であるが、ウガン伯爵と、騎士トマシェは黒騎士から目を離さずゆっくりと立ち上がった。
2人は頭部の甲冑を脱いだ…
「貴様が黒騎士だな。我が最後に、貴様に会えるとは運がよい」
ウガン伯爵は、自分の人生を皮肉った。
「ブスタ大平原での戦いといい、この夜襲を読み、さらに逆手に取りわれらを全滅させた手際といい、戦において、大切なことは結果…勝つことだ。
貴様は、その一点において賞賛に値する!」
ウガン伯爵は、ゆっくり大剣を構えた。
「戦において恨みを持つことは、志のないものが考えることだ、身分の低いものが考えることだ
だが………だが…
貴様は、我らルピア公国最後の騎士たちと剣を交えず、炎で焼き殺した。
恨みを口にし、我が名が穢れようとも、我が配下の騎士たちの恨み…一太刀、与えてくれるわ!」
大きく叫ぶと、ウガン伯爵は黒騎士へ突進し、大剣を大きく振りかぶり、黒騎士の左肩から心臓へめがけ
切り込んだ。
ガキッッ
しかし、大剣は黒い甲冑に阻まれ傷一つつけることは出来なかった。
「くっっ、びくともせずか…」
口元が、にやり…と笑った瞬間
黒騎士の剣が、ウガン伯爵の首を切り飛ばした。
ウガン伯爵の頭は、空を飛び床に転がる。
首から血しぶきをふきながら、頭を失った体は前へ倒れた。
そして、騎士トマシェ以下、約30人の生き残った騎士は、次々に黒騎士に切りかかっていく。
みな、一太刀あびせ…死んでいった。
周りを取り囲む騎士たちは、その光景を無言で見届けた。
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