異世界のんびり冒険日記

リリィ903

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本編

74話 各国と冒険者ギルドの会議

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「決定事項ということはギルド内ではその様に運用していくと決定したと言うことだろう?
わざわざ、我々の承認しょうにんが必要なことなのか?」

「そうぢゃ。
今までは世界規模でSランク冒険者が伯爵相当の身分、Aランク冒険者が男爵相当の身分としての待遇であったのぢゃ。
だが、これからはSランク冒険者が公爵相当の身分、Aランク冒険者が伯爵相当の身分、そしてBランク冒険者が男爵相当の身分としての待遇としたいのぢゃ!

今まではSランクとAランクが貴族相当の待遇があり、それなりの責任もあったのぢゃがな。

だが、昨今SランクやAランク更にはBランクの冒険者に対して無茶苦茶なことをする奴が増えておってのぅ。
具体的にはSランク冒険者には侯爵などが、Aランク冒険者には子爵などが、Bランク冒険者には準男爵や士爵達が、無理難題な依頼を出したり滅茶苦茶な理由を付けて報酬を減らしたりと横暴な振る舞いが後を絶たんのぢゃ。

冒険者ギルドは大国の首都に本部を置きそこのギルドマスターをグランドマスターとして運営しているのぢゃ。
あと、場所は秘密だが、総合本部もあり、そこでも色々な事をしているのぢゃ。
そして、基本的には総合本部の者達とグランドマスター達が会議をしてギルド全体の運営方針を決定していくのぢゃ。

その中でも本部には地方のギルドから様々な情報が上げられてくるのぢゃ。
そして、小国にあるギルドからも様々な情報が来るぞ。
本部の無い国のギルドからは、総合本部に情報が上げられる。
勿論、良いことも悪いこともな。
それで、今回の高ランク冒険者への待遇の話となったのぢゃ。
今後、そういった振る舞いが続くようなら国内の冒険者ギルドの撤退あるいは貴族からの依頼は受け付けないというのも視野に入れてのぅ。」

「なるほどな。」

「確かに、それは問題だ。」

「そうだな。」

「そうね。」

「………」

「マグナシルヴァ、マテリエインフィニタ帝国、フィアレマーリ獣王国はそういった者達は多くはないがゼロではないのぢゃ。
だが、ストークホルム王国とアトランティス帝国はかなりの数になるのぅ。
それは、当主の態度を見て同じ様な態度を取る子供達がいるからぢゃな。」

そう言われて、各国の代表者は苦虫を噛み潰したような顔をした。

「Bランク冒険者への態度が酷い者達は大国も少なからずいるが、殆どは本部を置いていない小国でのことぢゃ。」

「なるほどな。」

「ふむっ…」

「はぁ…」

「頭痛いわ…」

「………」

「で?どうなのぢゃ?
今回の冒険者ギルドとしての決定事項を伝えた訳ぢゃが?
承認してくれるのかの?」

「はぁ~、その決定事項は総合本部と5人のグランドマスターの中では全員が同じ意見で一致したと思って良いのか?」

「そうぢゃ。総合本部とわらわも含めたグランドマスター5人が拒否された場合は、その国からのギルドの撤退あるいは貴族からの依頼は、一切受け付けないということで一致しておるのぢゃ。」

「ふぅ、わかった。
ストークホルム王国の国王として冒険者ギルドの提案を承認する!
ただし!後程、その横暴な態度の貴族を子供も含めてリストにして提出してくれ。」

「わかったのぢゃ♪
リストをまとめるから数日後にはわたすのぢゃ♪
流石、レオナルド♪
わかっておるのぢゃ♪」

「当たり前だ。
先々代の頃から変わらん見た目の見た目詐欺の〔のぢゃロリエルフババア〕を怒らせたら大変なのはわかってるからな。」

「陛下、それは…」

「………」ブチッ

ツカツカ…ブォン…ドン

「ん?なんか、アウローラの映像の方から爆発音が聞こえたな?」

キィィィン…

「あぁ、その音は恐らく槍が音速を超えてソニックブームを起こした音でしょうな…」

「そうなのか?…ってなんでまだ会議中なのに宰相も大臣達もそんなに離れてそれぞれで全力の防御魔法を展開しているのだ?
ん?なんだ?」

……ィィィィン…ドカァァン

「うわぁ!あ…あ、あ…あぶ…危なかった…」

レオナルドに向かって飛んできた槍をすんでのところで避けた。

「す…凄いですね…
流石、グランドマスターですね。
冒険者ギルドからここまで陛下を狙ってピンポイントで槍を投げるとは…しかもこれ、魔槍ですか?」
と大臣が声を出した。

「そうだな、しかもこの魔槍が刺さっている穴を見ると綺麗に削り飛ばしているから風の属性かな?
それに、かなり重厚な槍に見えるが、これを音速を超えて投げられるものなのか?」

「さて、皆とりあえずまだ会議中なのだから、元の席に戻って話を聞いてくれ。」

エトムートからそんな声を掛けられた面々は戸惑いながらも元の席に戻った。

そして、エトムートはレオナルドを映像に戻しながら映像の向こう側の面々に話をした。

「さて、うちの陛下はこんな感じですが、とりあえず冒険者ギルドからの提案を承認するとのことですので、アウローラ様もこれ以上は城が壊れて周りが迷惑するので、まだ怒りが収まらないようでしたら後程こちらに来て本人に直接でお願いします。」

「……わかったのぢゃ。」

一連のやりとりを見ていた各国の代表者は唖然あぜんとした顔をしていたがすぐさま立ち直り話を進める。

「…んっんっ!
失礼、では改めて、アトランティス帝国の皇帝として余も冒険者ギルドの提案を承認する!
そして、こちらもストークホルム王国と同様に貴族のリストを提出してくれ!
勿論、子供や使用人の中にもいるのならそれも含めてな。」

「承知しました。」

帝国の皇帝からの申し出に帝国のグランドマスターも了承する。

「はぁ…全く、女性に対して年齢の話をするなんていくつになってもデリカシーがないわねこの男は。
私もマグナシルヴァの女王として、冒険者ギルドの提案を承認するわ。
こちらもリストをよろしく。」

「承知しました。」

「まったくだな…
我もフィアレマーリ獣王国の獣王として冒険者ギルドの提案を承認する。
こちらもリストを頼む。」

「承知しました。」

各国の代表者がしっかりと承認していく中でドワーフの代表がやっと口を開いた。

「うむ…あのエルフ、エルフだから魔力が膨大なのはわかるが、身体強化を使用しているにせよ腕力も相当なものだな、面白い…
儂もマテリエインフィニタ帝国の皇帝として冒険者ギルドの提案を承認する。
こちらもリストを頼む。」

「承知しました。」

「さて、次の議題はSランク冒険者についてぢゃ。
今まではSランクになるにはそれぞれの国のトップが認めないとなれなかったが、それを撤廃して、3人の現役のギルドマスターからの推薦があれば、Sランクになれるようにするのぢゃ。
もっと細かく言えば、3人の現役のギルドマスターの推薦があってから、グランドマスターの方で推薦があった者を調べて問題がなければSランクにすると言ったところぢゃな。
まあ、元々Bランク以上になるのには人柄等も考慮されているから、余程何かなければ推薦があった時点で昇格になるぢゃろうがな。
まあ、変人でなければ高ランクになれないとも言えるがな。
なにせ、高ランクの連中はそこら辺の貴族連中よりも金を持ってる分、なかなか依頼を受けてくれんからのぅ。」

「それは、今まで以上にSランクが増えるということか?」

「そうぢゃ。
国からの承認がないとSランクになれない上に爵位という首輪を着けられて、他の国に行けなくなってしまって小国で問題が起きてもなかなか依頼できない、なんてこともあるからのぅ。
小国の方にもヤバイ魔物が現れたりするのにそれでは被害が拡大する一方なのでな…
それに、先程の話でSランクには公爵相当の身分が与えられるからのぅ。
そういったところは被害を受けた場合の復興等はやりやすくなるぢゃろ。

まあ、冒険者は自由だからそうなれば、爵位を返上する者も出るだろうが…
元々、己の腕でのし上がった変人達ぢゃからの。
どうせ、まともな領地経営なんかも出来んぢゃろ?

現にストークホルム王国もアトランティス帝国もSランクになった時に爵位を与えたは良いが領地経営をやらずに放ったらかしだったり、領地経営をしてはいるが赤字経営ってのも多いのではないかのぅ?」

「「うぐっ。」」

「「よくわかりましたな。」」

国王と皇帝、そしてそれぞれの宰相の声が見事にハモった。

「はぁ、だろうと思ったわ。
これにこりたら、冒険者に爵位と領地を与えるのは辞めることぢゃな。
だいたい、おヌシ等もわかっておるぢゃろ?
まともな勉強をせずに己の腕一本でSランク冒険者になった者たち、言い換えれば只管ひたすらに魔物や盗賊と戦ったり薬草などを採取したり、街の中での困りごとを解決したりといった身体を動かす様な事しかやってこなかった変人達を…
ある日突然、領主館の執務室の執務机に縛り付けたところで仕事が進むわけなかろうに…
更に言えば書類仕事なんか出来るわけなかろうに…」

「「うぐっ…」」

「まあ、それは昔からだから今のおヌシ等に言っても仕方ないがな…
そんなことをして、無理矢理戦争の戦力を確保したところで、日々の書類仕事でストレスが溜まってしまった奴等がまともな戦力になるわけなかろう?
しかも爵位持ちってことは前線で戦わずに指揮をする側であろ?」

「「そうだな…」」

「何度でも言うが日々を魔物や盗賊と戦う事しかしてこなかった者達にそんなことが出来るのかぇ?」

「「………」」

グランドマスターであるアウローラに正論を叩きつけられて国王も皇帝もぐうの音もでなかった。

「というわけぢゃ。
Aランク冒険者をSランクにするのに国の承認は必要とせず、現役のギルドマスター3人からの推薦があればSランクになれる。
ということで良いかのぅ?」

「私は問題はないわ。」

「我もだ。」

「儂もじゃ。」

「「……」」

「で?残り2人ぢゃが?
どうするのぢゃ?
ちなみに、こちらも総合本部とグランドマスター5人で話し合い、意見は一致した決定事項として話しておるからな?」

「わかった。承認する。」

「余も、認めよう。」

「うむ♪
これで、緊急会議の議題は終了ぢゃな♪

では、まとめると
1つ目は、Sランクには公爵相当の身分をAランクには伯爵相当の身分をBランクには男爵相当の身分を与えられるのぢゃ。
この身分を使って街中等で平民達への傍若無人な振る舞いを認めるものではないのぢゃ。
もし、そんなことをする奴が現れた場合は、しっかりと精査して剥奪が降格かはその時に決定するのぢゃ。

それは、他のグラマス達も問題ないかのぅ。」

「「「「問題ない。」」」」

「問題はないが、変な略し方をするなよ。」

「テヘなのぢゃ♪」

「「「「………」」」」

「なんなのぢゃ!
言いたいことがあるならハッキリ言うのぢゃ!」

「もう、いいから続けろ。」

「むぅ…まあいい。
2つ目がAランク冒険者がSランクに昇格する際の各々の国からの承認は必要なく現役のギルドマスター3人からの推薦があればSランクに昇格とするのぢゃ。

これを即日ギルド内や近隣の小国にも通達して、この会議に出席した5カ国にも後日書面で送るのぢゃ。
問題ないかのぅ。」

「異議なし。」

「異論はない。」

「問題ないわ。」

「こちらも異論はない。」

「儂も異議なしじゃ。」

「うむ、では今回の会議はこれにて終了するのぢゃ。
レオナルドよ、覚悟しておけ!
なのぢゃ。」

「うぐっ…」

「ねぇ、レオナルド…
非常に言いづらいのだけど…
あなた、年々馬鹿になってない?
宰相も大変でしょうね。」

「おぉ、女王陛下も私の苦労がわかっていただけますか?」

「えぇ、わかるけど、どうしようもないから…
頑張ってね。
それじゃ。」

そういったやり取りの後、各国の代表者達とグランドマスター達はそれぞれで投影の魔導具を停止していき会議は終了した。

そして、会議が終了した直後にレオナルドとエトムートは殺気を感じて硬直した。
大臣達は殺気だとはわからないが、急な寒気を感じて身体が動かなくなっている。

「この殺気は、アウローラ様ですか…」

「そ、そうだな…
アウローラの奴がブチギレてるみたいだな…」

「それは、そうでしょうな…
陛下の自業自得です。
しかし、ギルドからここまで殺気を飛ばしてくるとは…
一応、街中の人達に気を使って槍の軌道と同じ様な感じで殺気を飛ばしているみたいですが。
空を飛んでいて、その殺気を感じ取った鳥や空を飛べる魔物達は完全に怯えて慌てて逃げるか墜落していますな。」

「ど、どうしよう…
エトムートよ、どうしたら良いと思う?」

「…諦めて、やられてください。」

ツカツカ…バァン
そこに足音がしたと思ったら、勢いよく会議室の扉が開いた。

「あなた、冒険者ギルドのアウローラから、私に連絡がありました。
色々と言ったみたいですね。
調教…いえ、お仕置きを手伝ってくれと言われたので回収に来ましたわ。」

「え?今、ハッキリ調教って言ったよね?
アイリア!話せばわかる!
な?ちょっと待とうか!
な?俺とお前の仲じゃないか!
エ、エエ、エトムートからも何か言ってやってくれ!な?」

「…陛下、自業自得かと。
王妃殿下、とりあえず、今日この後は陛下の予定はないので好きなだけ連れて行ってください。
いても愚痴ばかりで仕事をしないばかりか我々の仕事の邪魔ですから。」

「そう、わかったわ。
あなた、逝くわよ。」

そう言って、アイリアはレオナルドの襟首えりくびを掴んで引きずって行く。

「い、いい、いやだ!
た、助けてくれ~!
誰か~!頼む~!」

自国の国王がそんな声を上げていても、宰相も大臣達も我関せずといった態度で各々の仕事に戻っていった。

そして、王妃が夫を引きずっている途中で…

「おお、アイリアか。
捕まえてくれたか、おヌシを呼び付けて悪かったのぅ。」

「いえいえ、デリカシーのない夫のしでかしたことですから、しっかりと身体に教え込まないと。」

「そうか、なら手伝ってくれなのぢゃ。」

「ええ、喜んで。」

ウフッフッフッフッ

ワハッハッハッハッ

レオナルドの助けを呼ぶ叫び声もそんな笑い声と共に消えていった…
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みんなの感想(51件)

ぱるえもん
2024.03.03 ぱるえもん

面白いです。一気読みしました。続き楽しみにしています。

解除
しう
2023.08.19 しう

おかえりなさい∩^ω^∩

リリィ903
2023.08.19 リリィ903

お待たせしました。

私事ですが、転職の就活などなど色々とやっておりなかなか投稿できませんでした。

解除
宇治抹茶
2023.07.02 宇治抹茶

ハーレム系ならタグにハーレムとタグ設定して欲しいです

解除
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