異世界のんびり冒険日記

リリィ903

文字の大きさ
上 下
76 / 77
本編

73話 学園生活(臨時講師側)

しおりを挟む
 その後、会議が行われレオナルドがミイラになっている件等の説明を行ない、上級貴族しかいない場ではあるが、アイリス、フィアーナ、ルーセリアの3人とアークの婚約が発表された。

 正式な婚約発表は学園の行事が落ち着いてから謁見を開き全ての貴族を集めてからになると説明された。

 その中でマルセルム侯爵はいい顔をしていなかった…
 自身の息子とアイリスを結婚させることを企んでいたようだか、その目論見もくろみくずれたためであろう。

 貴族には貴族派、国王派等の派閥があるが、この学園での行事に関しては派閥は関係なく行われる。

 派閥が違うから、平民だからとまともに教えずにいると生徒から学園に報告され、その者は指導能力がないと判断され貴族社会の中で後ろ指を指されることになる。

 それが、本人だけならまだいいが家族にも波及するため子供の婚約が破断になる等、大変なことになる。

 そして、会議の中で宰相から

「メイフィールド伯爵は今回が初めての参加となりわからないことも多いだろうからジルベール夫妻と行動を共にしてくれ。」

 と声を掛けられた。

「承知しました。」

「というわけだから、ジルベール夫妻はメイフィールド伯爵に学園の事など、色々と教えるように、メイフィールド伯爵には男女合同での戦闘訓練や魔法の訓練等を教えてもらいたいと思っているがな…」

「「承知しました。」」


「さて、次に………」


 そして、長い会議は終わりその日は解散となった。

「本日の会議はこれで終了とする…
 あぁ、解散の前に少し聞いてくれ!
 メイフィールド伯爵の他に学園の生徒達に様々なことを教えるというのは経験が浅いものもいるだろうが、わからないことがあれば派閥だとかを気にせずに聞くように!
 どこで、生徒達が見ているかもわからんし、前回教えてくれた人と違うとか、そういったクレームも年に十数件はあるからな!
 その辺も臨時講師同士でもしっかりと話し合ってくれ!
 まあ、戦闘訓練や魔法訓練はそれぞれの考え方ややり方があるからその辺はある程度仕方ないというのも生徒達もわかってはいるだろうが、それでも毎年、何件かは揉め事になるからなぁ…」

「あの、エトムート様、そうなると私が魔法を教えるのは厳しいかもしれませんよ?
 あるいは、人によっては全く合わないかもしれません。
 なにせ、私は基本的に魔法を使うときは詠唱しないので…」

「ムッ…そうか、まあその辺は速攻詠唱クイックキャストが出来そうであればそちらを教えて上げてくれ、無理にやらせないということにしておこう。」

「わかりました。」

「メイフィールド伯爵の他に何か質問等があるものはいるか?
 ………無いようなら、改めて解散じゃ!
 次の会議は学園の生徒に教えてから様子を見ながら招集の連絡をする!
 以上だ!
あ、大臣達は事前に連絡したが、この後冒険者ギルドとの緊急会議があるので、遅れないように!
他の者たちにも関係がありそうなら後日に行う会議で伝えるのでな!では!」

 そう言って宰相のエトムートが出ていき、それをミイラが追いかけて行った…

「待て、エトムートよ。
 普通は国王が退出してからお主が退出するのではないのか?」タッタッタッタッ

「やかましい!
 ワシは忙しいのだ!
 歩くのが遅いヤツに付き合ってられん。」スタッスタッスタッスタッ

 扉の閉まった廊下からそんな会話が遠ざかって行った…

「……さて、では我々も帰るか。」

「……そうですわね。」

「とりあえず、やってみないことにはわからないからなぁ。
 あっ!!あの、瑠璃るりは連れて行っても良いんですか?」

「大丈夫じゃないかしら?
 たしか、前にもテイムした従魔を連れて教えに行ってた人がいたはずよ。
 ただ、テイムしたばかりの弱い魔物とかだと戦闘訓練とかに参加させたりしない方が良いと思うけどね。
 たまに、わざと重傷を負わせたり、事故に見せ掛けて殺したりってことをする子がいるけども…
 まあ、瑠璃るりちゃんはそんな心配は無いでしょ。」

「まあ、生徒の相手をさせても瑠璃るりが怪我をすることはないですけど…
 逆にやり過ぎないかが心配なので、参加はさせないつもりです。
  主に、僕の暇つぶしと癒やし要員ですね。」

「なら、連れて行っても大丈夫でしょう。」

「わかりました。
 それと、当日の服装はどうしたら?
 お二人共その格好で教えに行く訳じゃないですよね?」

「あぁ、教えるときは我々の場合は冒険者時代の装備が残っているからそれで行くよ。
 毎年の事だしな。」

「えぇ、そうね。
 私達はそうなるわね。
 他に冒険者をやったことがあって装備がある人達は大体が冒険者の様な格好になるわ。
 その方が色々と都合が良いからね。」

「そうなんですね。
 なら、僕も最近作った革鎧とかあるからそれで行きますね。」

「ああ、そうしておけ。
 なにせ急に生徒達に見せるための模擬戦が始まったりするからな。」

「でも、教える側には文官の人もいますよね?
 そういった人達は何を教えるのですか?」

「そういった者達は実践形式で植生だったり魔法の知識を教えることになる。
 セドリックなんかはその良い例だな。」

「なるほど、確かにそうですね。」

「セドリックは魔力制御が上手いから、いつもそのやり方を教えているよ。」

「なるほど、それでお二人は戦闘訓練と魔法訓練を教えているんですね。」

「「そのとおり!」」

「わかりました。じゃあ、あとは当日ですね。」



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「さて、いよいよ今日から臨時講師か…
 ほら、瑠璃るりも行くよ。」

「わかった~♪」

「なんだか、いつも以上にご機嫌だね。」

「うん、なんだか、面白そうだから♪
 ほら、早く行こうよ♪」

 瑠璃るりはそう言ってアークの肩に乗った。

「はいはい、じゃあ行こうか。」

 ようやく雇い入れた執事やメイド達が馬車を用意しようと動き出そうとしたが、
 アークが馬車はあるけど馬が居ないから徒歩で行くと言ってさっさと出てしまったため使用人達は仕方なくそれを見送っていた…
 非常に悔しそうな顔で…

 学園は元々平民も通えるように貴族街と商業区や職人区、住宅区等を総称した平民街との間に建てられているため、アークは徒歩でも割りと早く到着した。

「さて、いよいよ、今日からか。」

 そんな独り言を言ったアークの周りには登校してきた、平民や貴族の生徒達でごった返している。

「おい、貴様!そこをどけ!」ガヤ…ガヤ…

「しかし、学園内には学生寮があるって聞いてたけど、外から登校してくる生徒がやけに多いな…」ガヤ…ガヤ…

 学園には学生寮があり、貴族の生徒も平民の生徒も学生寮を利用しているものは多いが強制ではないため、家から通えるものは学生寮に入寮しなくても問題はない。

 貴族は親が子供を自律させるために入寮させたり、反対に親が子供から離れたくないからと入寮させなかったりしている。
 また、子供が学生寮に入るのを嫌がる場合もある。

 平民は、余程遠い所から入学した生徒は学生寮で生活するが家の手伝い等があるため、殆どの生徒は学生寮に入らず通学している。

 つまり、貴族で通学してくるものは家の用事等で一時的に家に帰り登校する者か親に甘やかされた自分が〔偉い、特別な人間だ〕と思い込んでいるヤツである。

 まあ、中には将来、当主となるからと毎日学園が終わってから少しずつ仕事を教えてもらっている者もいるが、今回アークに話しかけてきた者は勘違い野郎のようである。

「おい!貴様!聞いているのか!そこをどけ!」ガヤ…ガヤ…

「さて、行くか。」ガヤ…ガヤ…

 が、アークはそんな声を完全に無視して周りをキョロキョロと見学しながら進んでいった。

 一方、無視された方は…
「ぐぬぬ…平民の分際で…!」
 と勝手にアークを平民と思い込みヒートアップしていた。

 なお、この学園内において貴族の権力を振りかざすのは禁忌タブーである。

 学園内の生徒達の間では基本的に貴族の子供だろうと平民の子供だろうと関係なく【平等】となる。
 勿論、ある程度の礼儀は必要になるが…
 なので、普通に貴族の子供と平民の子供が友人関係になり、学園を卒業してからも友人関係が続いていたりもしている。

 つまり、先程アークに文句を言っていた奴は学園のルールに違反している。
 更に、アークは貴族家の当主である。
 王国法としてもアウトである。

 だが、アークはあまりしつこく絡んでこなければ放っておこうと思っている。
 むしろ、ファンタジーの学園でのテンプレ展開にwktkワクテカしていた。

「さて、まずはランセリア様達と中等部の1年生への授業だったな。
最初だから顔合わせも含めて男女合同での訓練だったかな?
とりあえず、行くか…」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

時は少し戻って、学園関係の会議が終わった後のレオナルドとエトムートは、更に別の会議があった。

「さて、次は冒険者ギルドとの会議か…」

「今回の会議は魔導具を使っての遠隔会議だよな?
普段はギルドマスターがこちらに来ての会議なのにどうしたんだ?」

「詳細はわかりませんが、何でも緊急の会議だそうですよ。」

「そうか、それで?
普段の会議であれば会議に関係のある大臣だけを呼ぶわけだが、今回はギルド側から大臣は全員参加させろと言われたんだよな?」

「えぇ、まあ顔を出すのは宰相である私と陛下だけですが、周りに集めて話が聞こえるようにとの連絡がありました。」

「いったい、何の話なんだ?」

「さあ?いくら聞いても、会議の場でお伝えしますとしか…」

「…まあ、そろそろ会議が始まるのだ、その時にわかるだろ。
ただ…その会議でもこの格好のままなのか?」

「そうですね…さて、急ぎますよ!」スタッスタッスタッ

「ちょっ置いていくな!」タッタッタッ

そんな、やりとりをしつつ会議室に入る2人…

学園関係の会議に参加していない子爵以下の大臣達は既に集まっていた。

「うむ、皆来ているな、あとは先程の会議に参加していた者達だけだな、まあそろそろ来るだろ?」

とそんなことを言っているうちに伯爵以上の大臣達も集まってきた。

「うむ、これで全員集まったな。
今回は冒険者ギルド側から大臣達も参加させるようにとの要請で集まってもらった。
この後、投影の魔導具で顔を出して会議に参加するのは儂と陛下だけだが皆はしっかりと聞いているように。
今回は大臣達にもしっかりと聞いておいて欲しいそうだからな。
では、少し早いが魔導具を起動するので聞いていてくれ。」

「さて、少し早いが、皆集まったようなので会議の方を始めさせてもらうのぢゃ。」

と話しだした少女の横にいた男性が少女に小声で話している。

「グランドマスター、今回は他の国の方々もいるのですから口調をなんとかしてください。」

「うぐっ、すまぬ。」
とグランドマスターと言われた少女は小声で謝った。

「こほんっ…では改めて、わら…私…はストークホルム王国の冒険者ギルド本部でグランドマスターをして…いるアウローラ…なの、です…
のぢゃ~~~!
いきなり、喋り方を普段と変えろといわれても無理なのぢゃ!
もう、普段通りに喋るのぢゃ!」

「はぁ、まあ、そんな気はしていましたよ。」

「今回、集まってもらったのはストークホルム王国とアトランティス帝国、それとエルフの国〈マグナシルヴァ〉とドワーフの国〈マテリエインフィニタ帝国〉とあとは、獣人達の国〈フィアレマーリ獣王国〉の代表者と各国の冒険者ギルド本部からグランドマスターに集まってもらったのぢゃ。
皆、よろしく頼むのぢゃ。」

「「うむ。」」

「おうっ。」

「よろしく。」

「………」

といった具合で各国の代表者が挨拶をしていた。

「さて、今回集まってもらったのは冒険者ギルドとしての決定事項の承認しょうにんを各国の代表者にしてもらいたいからぢゃ。
その決定事項とは、高ランク冒険者の扱いについてとAランクからSランクへ昇格する時のシステムについてぢゃ。」

「決定事項ということは、ギルド内ではその様に運用していくと決定したと言うことだろう?
わざわざ、承認しょうにんが必要なことなのか?」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

いずれ最強の錬金術師?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,758pt お気に入り:35,424

種族【半神】な俺は異世界でも普通に暮らしたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:326pt お気に入り:5,628

契約妃は隠れた魔法使い

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:127pt お気に入り:91

スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:8,514pt お気に入り:5,995

異世界転生したい私とそれを止めたい第三王子

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:71pt お気に入り:4

処理中です...