異世界のんびり冒険日記

リリィ903

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本編

70話 色々と製作する日々

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アークから酒を貰ったドワーフ達は、早々に仕事を切り上げ宴会えんかいを始める
‘水を得た魚’ならぬ‘酒を得たドワーフ’と言ったところだろうか。
先程まで死んだ魚の目をしながらのそのそと歩いていたのに今ではうってかわって元気よく笑ったりしている。

「流石、ドワーフ。
酒があると全然違うなぁ。」

アークもその変わりように呆れるしかない。

「皆さ~ん、飲むのは構いませんけど、明日も仕事があるんだからほどほどにね~!」

「「「「「「大丈夫だ~!この程度、問題ない!」」」」」」

まあ、今までが今までだったのでしつこく言うのを止めた。

「さて、ここら辺にテントを張れば良いかな。」

アークは正門の近くに移動してテント等を出している。
これは、ランセリア達が来たときの対応等をするために入口付近にしたようだ。
まあ、馬車や武器、防具の製作をするので広い場所が必要だったと良いのもある。

瑠璃るりも一緒にここで過ごすことになるから元の大きさに戻ってても良いよ?」

「うん、そのときの気分でそうするよ!」クァーッ

どうやら、眠いらしい。

「眠いなら先に寝てても良いよ。
ここなら安全だろうし。
まあ、神である瑠璃るりが傷つけられることは無いだろうけどもさ…」

「そうだね、そうするよ!
たまには、外で元の大きさで寝るかなぁ!
おやすみ~~!」

そういって元の大きさに戻り、目を閉じた瑠璃るりだったがふと、アークの方を向き
「アークだって大抵の奴らなら傷はつけられないと思うよ~!
なにせ、半分は人だけど、半分は神なんだし!
ステータス的にも若い神獣とか神龍なら怪我を負わせられるかもって感じかな!
魔物なら老竜エルダードラゴン古竜エンシェントドラゴンといったぐらいの格のヤツならまあ、怪我を負わせられるかもって感じだろうね!
まあ、神獣とか魔物でも永い年月を生きてきた個体はそれなりに強いし、戦い方も老獪ろうかいになってくるから絶対とは言えないけどね!」スゥーッ

「それは、もう、人間とは言えないんじゃないかな?
って寝ちゃったし。
全くもう、俺は‘のんびり生活’がしたかったはずなんだけど、現状は‘のんびり生活’とは程遠いなぁ~。」

そんな話をしてる間もアークは色々と準備をしていき、普通に街の外で野営をするような感じになっている。

たまには良いかとアークもご飯を食べながら酒を飲んでいると、ドワーフ達が集まってきてアークを含めた宴会えんかいとなった。

そこで、瑠璃るりの大きさに驚かれたりしたが説明をしたら納得したドワーフ達。
もう、寝ているからとお供えは遠慮していた。

宴会えんかいをしていると近づいてくる人物がいた、近衛騎士団の副団長のハインツである。

「アーク殿!」

「あれ?ハインツさん、どうしました?
あぁ、そろそろ、終わりましたか?」

「いえ、あのあと少しして音が止んだと思ったら中から、エトムート様の声が聞こえまして…
今回のお仕置きは最低でも一晩は掛かるからと言われまして…
なにやら、距離が、とか。岩の影に隠れたか、とか。う~む森か、等の声も聞こえたんですが。
あの結界の中はどうなっているんです?」

「あぁ、さすがに結界を貼っただけでは、皆さんが不完全燃焼になるだろうと思ったので空間を拡張さして、荒野、草原、森、あとは…一般的な造りの街中とか城内等に一定の時間で変化するようにしたんですよ。
大きさとしては…100km四方といったところですかね。」

「な、なるほど、そうなんですね。
しかし、それは、衛兵や騎士団の訓練にも使えそうだな……
アーク殿、その空間拡張については後程、エトムート様達を交えて相談させていただきたい。」

「あぁ、わかりました。
それで?皆さんは今日はもう、帰るんですか?」

「いえ、さすがに置いていくわけにもいかないので今日は我々もこちらで休ませて頂けたらと思い、相談に来たのですよ。」

「ああ、それもそうか、構いませんよ。
ここに雑魚寝ざこねするなり、好きにしてください。
外の野営と違って見張り番はいらないでしょうから。」

「ありがとうございます。
では、さっそく。」

そういってハインツは他の団員や侍女達を呼びに行った。

あ、侍女さん達がいるなら専用の寝床が必要か…
アークは何も言わずに土魔法で簡単な小屋を作り女性用とした。

他の人達を連れて戻ってきたハインツに説明をしたアークとハインツを含む騎士団、侍女の全員でたまには良いだろうと宴会えんかいに参加し、夜がけていった。


*****翌日*****


ドワーフ達と一緒に朝食を食べるアーク…
そのときに3魔女からの追加要望について聞いてみた。

「ところで、ランセリア様達からの追加要望ってのは、どんな感じの内容がどれぐらいあったんですか?」

「…追加要望なぁ~どれぐらいかは正直わからん!
多すぎて数えてられんし、名目上は客室の中にある衣装部屋の壁の模様、色、果ては扉の意匠等々色々と細かい要望があってな!
口頭で言われても覚えきれんから要望書という形で指示が来ていた…
この箱の中に全ての要望書が入ってるぞ!」

そういってグラビスはアークに箱を渡した。

アークはちらりと中身を確認すると
「これはこちらで預かりますので、追加要望についてはとりあえず考えないで大丈夫です。
当初の予定の部分をお願いします。」

(この要望書は宰相のエトムート様行きだな…)

「アーク殿!」

ふと、ハインツから声を掛けられる。

「どうしました?ハインツさん。」

「あ、いえ、結界の中にいるエトムート様からお仕置きが終わったから結界を解いて欲しいと言われまして…」

「あ、わかりました、すぐに行きます。
今、渡したいものも手に入ったので。」

エトムートによるお仕置きの場所に移動して結界内のエトムートに声をかける。

「エトムート様、アークです。
お仕置きが完了したとのことなので、結界を解除しても大丈夫ですか?」

「ん?おお!メイフィールド子爵か。
結界を解除するのは構わんよ。
それと同時に四阿あずまやも回収してくれ。
6人を拘束してるので、結界を解除した時に一緒にぎゅうぎゅう詰めではかなわんからな。」

「あ、わかりました。」

アークは言われた通りに結界の解除と四阿あずまやの回収をした。

そこに現れたのは『T』の形に土魔法で作り出した物にはりつけにされている6人であった。
まるで、罪人のようである。
まあ、実際にやりたい放題していたので罪人といえば罪人であるが…
6人はボロボロなのにその6人と戦っていたエトムートには傷どころか、服に汚れすらなく、元気である。

「エ、エトムート様、6 VS 1で戦っていたのに傷どころか汚れてすらいないのですね…」

「ん?おお、ハインツ殿か。
なぁに、メイフィールド子爵に貰った魔法発動媒体のおかげで以前よりも戦い安かったのでな。
さて、私はこのまま城へ戻るとするかな。」

「あ、これ、大工のドワーフから貰った追加要望の指示書らしいので、渡しておきますね。」

「ほう、これがそうか。
わかった…これはこちらで預かる。」

サッと中身を確認したエトムートは箱を近くにいた侍女に預けた。

3人でそんな話をしていると正門の方から近衛騎士が1人近づいてくる。

「失礼します!
昨夜の騒音を聞き付けた、周りの屋敷の当主や御夫人方が集まってきて抗議されています。
それだけでなく、その話を聞き付けた方達も集まってきて野次馬になっているようです。」

「ほう、当主達が自ら文句を言いに来たのか。
なら、この6人はそのまま、城へ連れて行くとしよう。
下の方を足の様にすれば動けるからな。
それで、私だけが顔を出しながら馬車で戻れば、今の当主達は教師であった頃の私が完全復活したと察することが出来るだろう。
これで、無茶なことをする輩も減るだろう。
メイフィールド子爵、後日、陛下から話があったりするだろうから、当分は王都にいてくれ。
では、また来る。」

そう言い残して、エトムート達は素早く、城へ戻っていった。
昨夜の騒音について文句を言おうと集まっていた他の貴族達は正門から出てきた馬車に事情を聞こうとしていたが馬車から顔を覗かせているエトムートの清々すがすがしい程の笑顔を見て、更には馬車の後ろに着いていくはりつけにされた6人を見た者達は全てを察した顔をして何も言わずに立ち去ったようだ。

「さて、やっといなくなったし、色々と製作しないとなぁ。」

「じゃあ、俺達も仕事を始めるか!
野郎共、気合い入れてやるぞ!」

「「「「おお~~!!」」」」

「さて、こっちも色々と作ろうかな。」

そして、流石、ドワーフと言えば良いのか。
追加工事という、邪魔がなければ屋敷が完成するまでそんなに時間は掛からずおよそ、2週間程で完成した。
まあ、普通に考えると屋敷を建てるのに2週間はだいぶ早いのではあるが……

その2週間でアークはアダマンタイト製の馬車をメインに色々と製作していた。

馬車はまずは箱馬車を製作した。
アダマンタイトをL型アングルのように加工して骨組みを作りアダマンタイトを厚さ5mm程の鉄板の様にしたもので馬車の壁、床、天井を作った。
箱の大きさは長さ:2.5m,幅:2.0m,高さ:2.0mとなっていて、一般的な物よりは少し大きめになっている。
これは、貴族として動くときに使用する馬車である。

そして、どうせなら冒険者として活動するときの馬車も作ろうとなり、こちらはほろ馬車を製作した。
こちらも作りは先に製作した。箱馬車とほぼ変わらず、アダマンタイト製である。
肝心なほろの部分は魔王級ダンジョンで大量に手に入れた‘黒龍の翼膜’を使用した馬車である。

箱馬車もほろ馬車も中は‘エルダートレント材’を壁、床に貼り付けてある。
箱馬車は天井部分にも貼り付けてある。
その後、車輪の取り付け等は‘サスペンション’、‘ダンパー’、‘ベアリング’等を世界図書館ワールドライブラリーを使い調べて造り、車輪もそれぞれを独立して取り付けを行ったりと前世の知識を最大限に活用して製作した。

「さて、馬車はこんな感じで良いかな…
あとは…警備用のゴーレムでも作っとくかなぁ…」

そんなことをぼやいたアークはそのまま、アダマンタイトを使い警備用のゴーレムを作り始める。

「やっぱり、人型の方が色々と都合が良さそうだな。」

そんなことを呟きながら世界図書館ワールドライブラリーを使い何やら調べ始める。

そして、調べものが終わった頃、無言で動き始めて、黙々と作業を進める。

そんなアークの近くでは元の大きさに戻って休んだり小さくなって走り回ったりしている瑠璃るりがいる。
ちょうど、元の大きさに戻って休憩していたようで、瑠璃るりはアークの作業を黙ってみていた。

「ねぇ、アーク…なにそれ?
ゴーレム作るんじゃなかったの?アダマンタイトでやけに細い棒を長さもバラバラで作ってるけど…」

「ん?ああ、これはゴーレムのパーツだよ。
とりあえず、10体分のパーツを作ってるんだ。」

「パーツ?え?ゴーレムでしょ?
この世界のゴーレムってこんなに細い棒なんてないんだけど…」

そんな瑠璃るりの疑問が聞こえていないのか、アークは黙々と作業を続けていく。

そして、そんなパーツをアークは数日間掛けて作っていた。

長さを細かく分けて…
そして、出来上がったゴーレムを見た瑠璃るりやドワーフ達は何も言えずにいた。

「よし!ゴーレム10体!完成だ!!」

「ねぇ、アーク?これは、ゴーレムなの?」

「ん?そうだよ!
ゴーレムが10体、それぞれで120cm×2体、150cm×3体、170cm×3体、200cm×2体って感じだよ。
アダマンタイト製で作ったんだ。
後はアダマンタイトでバックラーとファルシオンを作って持たせれば起動出来るかな。」

「いや、そうじゃなくてさ!
まあ、剣と盾を持たせるのは警備だから必要なのはわかるんだけど…
これは一般的に見るとアダマンタイト製のゴーレムじゃなくて、アダマンタイト製のスケルトンだから!
ゴーレムじゃなくて魔物だから!!」

「「「「「「うんうん…」」」」」」

ドワーフの言いたいことも瑠璃るりが言ったようで皆でうなずいている。

「え?魔物?」

アークは人型にすると決めてから何を思ったのか、世界図書館ワールドライブラリーを使い‘骨骼標本こっかくひょうほん’を調べ、それを元に精巧なアダマンタイト製の骨を作り、組み立てて完成したのが『アダマンタイト製のスケルトン』である。

アークは前世の記憶によりただの骨骼標本こっかくひょうほんを元に製作したゴーレムのつもりであるが、この世界の人々からすればこれはスケルトン(魔物)である。

「アーク…これを本当に警備用ゴーレムとして、使うの?」

「……うん、もうここまで作っちゃったし…
後は剣と盾があれば、起動出来るから…」

「そ、そう、なら、まあ、良いんじゃないかな…」

瑠璃るりもドワーフ達も最初は止めさせようと思ったが何日も掛けて作っていたのを知っているのでそれ以上は何も言わなかった。
(面倒だから、諦めたとも言う。)

気まずい空気の中、アークはファルシオンとバックラーを10体分作り起動させた。
なお、人の‘心臓しんぞう’の部分に魔王級ダンジョンで大量に手に入れた‘黒龍の魔石’を入れてある、これにより大気中の魔素マナを吸収して、魔力に変換するので、今後態々わざわざアークが魔力を供給せずとも動き続ける。

「アークって凄いな…」

「凄いと言うか、何て言うのか…
まあ、とりあえず、そこらのダンジョンよりもこの屋敷に侵入する方がはるかに難しいってことは間違いないかな…」

瑠璃るりとグラビスはアークについて話ながらも呆れていた。

なお、アークいわく‘ゴーレム’が警備として、敷地内と正門を動き回っていた頃、周囲の屋敷から王城に光沢のある真っ黒いスケルトンが現れたと報告があり、王城に呼び出されて、説明を求められたのは言うまでもない。


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さて、遅くなりました。
今回はこんな感じになります。

なお、感想等ございましたら気軽にください。

メンタルが弱いので暴言等はやめてください。
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