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本編
66話 王都へ戻ります
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ハインツとゴランにしばらくは食材ダンジョンに通うから何かあれば連絡をするようにと話したあとにアークは迷宮都市ラビリウムの冒険者ギルドに戻ってきた。
「やっと、戻ってきた~!
流石に、疲れた~!」
「あら?アーク君、しばらく見なかったけど何処に行ってたの?」
そういって声をかけてきたのはサブマスのリリアナだった。
「いやぁ、まあね。」
そういって周りを見たアークは冒険者達が1人も居ないことに気が付く。
「あれ?他の冒険者が誰も居ない。」
「ああ、それはね、2日前に王都から近衛騎士団がやって来てゴランと話したと思ったら、未発見のダンジョンが見つかって、しかも魔物集団暴走直前だってことでランクに関係無く全員を連れていったのよ。
まあ、低ランクの冒険者でもやれることはあるしね。
だから、アーク君も呼ばれるんじゃないかな?」
「いや、その未発見ダンジョンをクリアして戻ってきたんで今日はとりあえず行きたくないです。」
「あら?そう、クリアして戻ってきたの、大変だったわね……」
「「「「………えぇぇぇぇぇ!!!!」」」」
リリアナだけではなくギルド内の受付等からも驚きの声が上がった。
「ア、アーク君、未発見ダンジョンをクリアして来たの?」
「ええ、そうですよ。キツかった。」
リリアナはアークが王都で社交界に出ている間に城塞都市ロドスの冒険者ギルドから連絡が来て、アークについて色々と説明があったのですぐに落ち着きを取り戻した。
「そう、わかったわ。
それで、ギルマス達には会ったんでしょ?
何か言ってたかしら?」
「ダンジョン内の事を話したら騎士団側もギルド側も調査する人員のランクを見直すって言ってましたね。
あとは、どうしても必要な場合は呼ぶともいわれましたよ。
とりあえず、それまでは食材ダンジョンに通うつもりですよ。
ジーとか言うのが出ると聞いたので気が重いですけどね。」
「わかったわ。
しかし、食材ダンジョンのジーの話を聞いたのね。
本当は正式な名前があったのだけど、いつからかわからないけど、ジーと呼ばれるようになったのよ。」
「あ、そうなんですね。
黒光りして、飛ぶとか、リリアナさんがゴランさんをボコボコにした話しとか色々聞きましたよ。」
「………さて、あまりジーというのは聞きたくないわ。」
リリアナがそういうと受付内の人達も無言で頷いていた。
「まあ、食材ダンジョンには通いますけど、ジ…黒光りする悪魔は絶対に出ないようにするので大丈夫ですよ、ギルマスからは行くなら下層だけにしてくれとも言われたので慎重に行くつもりです。
まあ、他の冒険者が出していた場合は灰も残らずにその冒険者ごと燃やし尽くすつもりでいますので。」
「……黒光りする悪魔か、今度からはそう呼ぶことにするわ。
ギルマスから諸注意は受けているならいいわ。
ただ、冒険者を燃やし尽くすようなことはしないでね。」
「わかりました。
ところでこの街には食材ダンジョンしかないんですか?
例えば、鉱石ダンジョンとかそう言うところはないんですか?」
「あるわよ。
そのダンジョンにはあらゆる鉱石が出ると言われているわ。
まあ、よくわからないのもあるみたいだけど。
そこは中級ダンジョンと上級ダンジョンがあるわ。
中級ダンジョンは鉄とか銅とかが中心にでるわね。
ボスのドロップとか最下層での採掘では魔銀が最高だったかな。
上級ダンジョンは上層では鉄とか銅とか出るけど中級ダンジョン程の量は出ないわ。
中層から下層なら量は増えるわね。
その代わりに品質は良いわね。
あと…下層に行くにつれて魔銀やウーツ鋼が出るのは確認されている。
ボスのドロップとか最下層での採掘ではアダマンタイトやオリハルコンも確認されているわね。」
「中級ダンジョンと上級ダンジョンの鉱石ダンジョンかぁ…
鉄や銅が上級ダンジョンで出るならそっちから採掘すれば良いんじゃないの?」
「まあ、上級ダンジョンは奥に行けば量は増えるけど中級ダンジョン程の量は出ないわよ。
それにそこまで、高品質じゃなくても良いって人もいるしね。
そこはお金と相談じゃないかしら?
上級ダンジョンの最下層に採掘に行きたいから護衛してくれって依頼もあったりするからね。」
「なるほど、それもそうか。
なら、当分の間は食材ダンジョンと鉱石ダンジョンに通うかな。」
「そう、わかったわ。
ゴラ…ギルマスからも連絡あるかもしれないから何処のダンジョンに潜るとかその日にギルドに連絡して貰えると助かるわ。」
「わかりました。
明日はとりあえず食材ダンジョンに行ってみます。
じゃあ、今日はもう、宿に戻りますね。」
そういってギルドをあとにした
アークは宿に戻り食事などを済ませて部屋に戻った。
そして、部屋に戻ったところで瑠璃が話始めた。
「ねぇ、アーク。」
「ん?なに?」
「あのダンジョンをクリアして外に出たあとに母様から、連絡が来たんだけどさ……あの爺が行方不明になったって…」
「あの爺ってガイアのこと?そっか、行方不明になったんだ……えぇぇぇ!!
な、なにそれ!なんで?」
「理由は本人じゃないからわからないけど、多分母様にボコボコにされたり監理システムの不備とかを指摘されて母様の監視のもと働かせまくったからじゃないかな?」
「そ、そうなんだ。」
「アークの元の世界で言うところのブラック企業も真っ青の労働状況だったんじゃないかな?
まあ、今まで何もやらなかった分をまとめてやってるといえばそうなんだけどね…」
「世界の創造神がいなくなるって……」
「まあ、ガイアがいなくなった影響は世界には全くないよ!
アークに少し影響があるけど、まあ、アークの成長度合いからしてもう関係無いかな、創造神の加護が消えたぐらいだからね!」
「え?マジ?……あ、本当だ、創造神の加護が消えてる…まあ、今更、問題ないか。
あれ?創造魔法は?」
「ああ、魔法はもう、身体に定着してるだろうから消えないと思うよ~」
「うん、なら、全く影響はないね!」
そんな会話をして眠りについた………
*****翌日*****
「おはよう、瑠璃。」
「くぁぁぁ!おはよう、アーク!」
「さて、諸々やったらダンジョンに行こうか。」
「そうだね!楽しみ!」
………このあと、アークは食材ダンジョンで大量の食材を確保したり、鉱石ダンジョンの中級と上級を鉱石を集めながら踏破したりと色々と充実した日が続いていた。
*****とある日*****
アークが魔王級ダンジョンをクリアしてからおよそ1週間程が経った日にギルドへ行くとリリアナにギルドマスター室に案内をされて、リリアナも一緒に入室した。
「お!アーク!来たな!」
「塾長、どうしたんですか?呼び出しなんて…あのダンジョンで問題でも起きた?」
「塾長って……まあ、いい座れ!」
「はいはい、あれ?ハインツさんも一緒?」
「やあ、アーク殿、先日は助かったよ!」
「いえいえ、お気になさらず。」
「さて、その辺のやり取りはあとでやってくれ。
呼び出したのは、お前さんには王都に行って貰うからだ。」
「え!なんで?」
「まあ、表向きは魔物集団暴走直前の魔王級ダンジョンを攻略して、魔物の脅威から民を守ってくれた事への褒美と素材の買い取りの交渉。
今回の件はアーク殿が単独で魔王級ダンジョンを攻略したことは報告してあるから、伯爵への陞爵と婚約発表って所だろうね。」
「そうですか…で?裏は?」
「裏は…魔物集団暴走を止めたのがアーク殿だから陞爵の条件は満たしたから早く呼び戻せと陛下が王妃様達に脅されてるからって感じかな。
陛下からの泣きの手紙が毎日来るんだよね。」
「……ハインツさんも大変ですね。」
「あははは、そう思うなら早く準備してね。
すぐに馬車を出すから。」
「急ぎなら王都まで走りましょうか?その方が早いだろうし。」
「ああ、あとベイグマン様からの伝言もあるよ、『陛下が泣いているとしても貴族なのだから、近衛騎士団の馬車に乗せて貰って可及的速やかに王都まで来るように!』とのことだからね。
まあ、私も1度王都に戻るから一緒に戻ろうじゃないか。」
「わ、わかりました。」
「あ、そうそう、宰相のエトムート様からの伝言もあるよ!『陛下からアーク子爵に下賜して建て直している屋敷だが、このままだと問題が起きそうだから可及的速やかに王都に戻ってきなさい。』とのことだね。
どうやら、建て直しの管理をしてくれているエトムート様を通さずにアイリア様、フィリーナ様、ランセリア様のお三方が直接細かい注文をしたりとやりたい放題みたいだね。特に、3つの客室が…」
「………はあぁぁぁ」
ハインツからの話を聞いたアークは頭を抱えて、下を向いた後に上を見て叫んだ。
「最悪だ~~~~~!!!」
「「………」」
ゴランもリリアナも話に付いていけずに唖然としている。
「その建て直しをしている業者はドワーフ達なんだけどね。
ドワーフは良くも悪くも職人気質だから鍛冶や建築、酒造り等に妥協はしないんだよ。
だから、作る物は高品質になるんだけどね。
最初は快くお三方からの注文も受けていたようなんだけど、毎日の様に注文されるから屋敷の建て直しの期間にも影響が出るってことで拒否したらしいんだよ。
そうしたらお三方が乗り込んで行ってしまって、ドワーフ達も応戦したらしいんだけど呆気なくやられて今では従順に働いているらしい。
そこで後日その騒ぎを聞いた宰相のエトムート様がドワーフ達にお詫びをしに行ったら、お三方が常に見張っている状態でドワーフ達が働いていたらしい。
それで、そのドワーフ達が可哀想だから戻ってくるようにとのことだそうだ。」
「「「………」」」
その話が終わったあとアーク、ゴラン、リリアナの3人は声が出なかった。
少しの沈黙のあとにようやく口を開いたのはゴランだった。
「いやぁ、ドワーフってのは冒険者をやるやつもいるからな職人だろうと腕っぷしはBランクくらいはあるはずだ。
だけど、まあ、相手がランセリア様を含めたあのお三方じゃあ、話にならんだろうなぁ~」
「え?ギルマスはランセリア様の事を知ってるの?」
そのアークの質問に答えたのはリリアナだった。
「そりゃあ、そうよ、ゴランの兄と私の姉が一緒に冒険者パーティーを組んで色々な依頼をこなすところを見ていたんですもの。
その頃からベイグマン様は勿論、ランセリア様は桁外れの強さだったわ。
ベイグマン様とゴアンさんが前衛で戦いながら最初は私の姉のリリアンと一緒に後衛でサポートをしていたけど、途中からは面倒になったとか言いながらガンガン氷系統の上級魔法を撃ちまくってたわ、2人を巻き込みながらね。」
「なんで知ってるかってのは俺もリリアナも最初の頃は色々と学ぶために一緒にいたからなんだよ。」
「ランセリア様だけでも桁外れなんだからアイリア様とフィリーナ様が加わったらいくら屈強なドワーフといえども相手にならないわよ。」
「そ、そうですか。
と、とりあえず、ハインツさん。
ドワーフの職人さん達が可哀想だから早く戻りましょう。
元々宿は1日ごとでしか借りていませんでしたし荷物は置いてきてないので、宿屋に戻って王都に戻るから残りをキャンセルと言えばすぐに出れますよ。」
「そうだね、なら10分後に街の門の所に集合しようか。」
「はい、じゃあ、それで。
ギルマスもサブマスもお世話になりました。
色々と片付いたらまた来ます。」
「お、おう!気を付けろよ!色々と…」
「え、ええ!気を付けてね!色々と…」
こうして、アークは大急ぎで王都へ帰っていった。
==================================
今回はまあ、自分でも笑いながら書いてました。
アイリア、フィリーナ、ランセリアと名前を書くのが面倒になったので『お三方』と書きました。
まあ、近衛騎士団の副団長が話しているところなのでいい感じかなとは思います。
名前を言っちゃいけない『例のアノ人達』って感じですかね。
書いていて、ドワーフの職人さん達が可哀想になりました。
次回をお楽しみください。
その場の思い付きで書いてるのでこれからネタを考えます。
「やっと、戻ってきた~!
流石に、疲れた~!」
「あら?アーク君、しばらく見なかったけど何処に行ってたの?」
そういって声をかけてきたのはサブマスのリリアナだった。
「いやぁ、まあね。」
そういって周りを見たアークは冒険者達が1人も居ないことに気が付く。
「あれ?他の冒険者が誰も居ない。」
「ああ、それはね、2日前に王都から近衛騎士団がやって来てゴランと話したと思ったら、未発見のダンジョンが見つかって、しかも魔物集団暴走直前だってことでランクに関係無く全員を連れていったのよ。
まあ、低ランクの冒険者でもやれることはあるしね。
だから、アーク君も呼ばれるんじゃないかな?」
「いや、その未発見ダンジョンをクリアして戻ってきたんで今日はとりあえず行きたくないです。」
「あら?そう、クリアして戻ってきたの、大変だったわね……」
「「「「………えぇぇぇぇぇ!!!!」」」」
リリアナだけではなくギルド内の受付等からも驚きの声が上がった。
「ア、アーク君、未発見ダンジョンをクリアして来たの?」
「ええ、そうですよ。キツかった。」
リリアナはアークが王都で社交界に出ている間に城塞都市ロドスの冒険者ギルドから連絡が来て、アークについて色々と説明があったのですぐに落ち着きを取り戻した。
「そう、わかったわ。
それで、ギルマス達には会ったんでしょ?
何か言ってたかしら?」
「ダンジョン内の事を話したら騎士団側もギルド側も調査する人員のランクを見直すって言ってましたね。
あとは、どうしても必要な場合は呼ぶともいわれましたよ。
とりあえず、それまでは食材ダンジョンに通うつもりですよ。
ジーとか言うのが出ると聞いたので気が重いですけどね。」
「わかったわ。
しかし、食材ダンジョンのジーの話を聞いたのね。
本当は正式な名前があったのだけど、いつからかわからないけど、ジーと呼ばれるようになったのよ。」
「あ、そうなんですね。
黒光りして、飛ぶとか、リリアナさんがゴランさんをボコボコにした話しとか色々聞きましたよ。」
「………さて、あまりジーというのは聞きたくないわ。」
リリアナがそういうと受付内の人達も無言で頷いていた。
「まあ、食材ダンジョンには通いますけど、ジ…黒光りする悪魔は絶対に出ないようにするので大丈夫ですよ、ギルマスからは行くなら下層だけにしてくれとも言われたので慎重に行くつもりです。
まあ、他の冒険者が出していた場合は灰も残らずにその冒険者ごと燃やし尽くすつもりでいますので。」
「……黒光りする悪魔か、今度からはそう呼ぶことにするわ。
ギルマスから諸注意は受けているならいいわ。
ただ、冒険者を燃やし尽くすようなことはしないでね。」
「わかりました。
ところでこの街には食材ダンジョンしかないんですか?
例えば、鉱石ダンジョンとかそう言うところはないんですか?」
「あるわよ。
そのダンジョンにはあらゆる鉱石が出ると言われているわ。
まあ、よくわからないのもあるみたいだけど。
そこは中級ダンジョンと上級ダンジョンがあるわ。
中級ダンジョンは鉄とか銅とかが中心にでるわね。
ボスのドロップとか最下層での採掘では魔銀が最高だったかな。
上級ダンジョンは上層では鉄とか銅とか出るけど中級ダンジョン程の量は出ないわ。
中層から下層なら量は増えるわね。
その代わりに品質は良いわね。
あと…下層に行くにつれて魔銀やウーツ鋼が出るのは確認されている。
ボスのドロップとか最下層での採掘ではアダマンタイトやオリハルコンも確認されているわね。」
「中級ダンジョンと上級ダンジョンの鉱石ダンジョンかぁ…
鉄や銅が上級ダンジョンで出るならそっちから採掘すれば良いんじゃないの?」
「まあ、上級ダンジョンは奥に行けば量は増えるけど中級ダンジョン程の量は出ないわよ。
それにそこまで、高品質じゃなくても良いって人もいるしね。
そこはお金と相談じゃないかしら?
上級ダンジョンの最下層に採掘に行きたいから護衛してくれって依頼もあったりするからね。」
「なるほど、それもそうか。
なら、当分の間は食材ダンジョンと鉱石ダンジョンに通うかな。」
「そう、わかったわ。
ゴラ…ギルマスからも連絡あるかもしれないから何処のダンジョンに潜るとかその日にギルドに連絡して貰えると助かるわ。」
「わかりました。
明日はとりあえず食材ダンジョンに行ってみます。
じゃあ、今日はもう、宿に戻りますね。」
そういってギルドをあとにした
アークは宿に戻り食事などを済ませて部屋に戻った。
そして、部屋に戻ったところで瑠璃が話始めた。
「ねぇ、アーク。」
「ん?なに?」
「あのダンジョンをクリアして外に出たあとに母様から、連絡が来たんだけどさ……あの爺が行方不明になったって…」
「あの爺ってガイアのこと?そっか、行方不明になったんだ……えぇぇぇ!!
な、なにそれ!なんで?」
「理由は本人じゃないからわからないけど、多分母様にボコボコにされたり監理システムの不備とかを指摘されて母様の監視のもと働かせまくったからじゃないかな?」
「そ、そうなんだ。」
「アークの元の世界で言うところのブラック企業も真っ青の労働状況だったんじゃないかな?
まあ、今まで何もやらなかった分をまとめてやってるといえばそうなんだけどね…」
「世界の創造神がいなくなるって……」
「まあ、ガイアがいなくなった影響は世界には全くないよ!
アークに少し影響があるけど、まあ、アークの成長度合いからしてもう関係無いかな、創造神の加護が消えたぐらいだからね!」
「え?マジ?……あ、本当だ、創造神の加護が消えてる…まあ、今更、問題ないか。
あれ?創造魔法は?」
「ああ、魔法はもう、身体に定着してるだろうから消えないと思うよ~」
「うん、なら、全く影響はないね!」
そんな会話をして眠りについた………
*****翌日*****
「おはよう、瑠璃。」
「くぁぁぁ!おはよう、アーク!」
「さて、諸々やったらダンジョンに行こうか。」
「そうだね!楽しみ!」
………このあと、アークは食材ダンジョンで大量の食材を確保したり、鉱石ダンジョンの中級と上級を鉱石を集めながら踏破したりと色々と充実した日が続いていた。
*****とある日*****
アークが魔王級ダンジョンをクリアしてからおよそ1週間程が経った日にギルドへ行くとリリアナにギルドマスター室に案内をされて、リリアナも一緒に入室した。
「お!アーク!来たな!」
「塾長、どうしたんですか?呼び出しなんて…あのダンジョンで問題でも起きた?」
「塾長って……まあ、いい座れ!」
「はいはい、あれ?ハインツさんも一緒?」
「やあ、アーク殿、先日は助かったよ!」
「いえいえ、お気になさらず。」
「さて、その辺のやり取りはあとでやってくれ。
呼び出したのは、お前さんには王都に行って貰うからだ。」
「え!なんで?」
「まあ、表向きは魔物集団暴走直前の魔王級ダンジョンを攻略して、魔物の脅威から民を守ってくれた事への褒美と素材の買い取りの交渉。
今回の件はアーク殿が単独で魔王級ダンジョンを攻略したことは報告してあるから、伯爵への陞爵と婚約発表って所だろうね。」
「そうですか…で?裏は?」
「裏は…魔物集団暴走を止めたのがアーク殿だから陞爵の条件は満たしたから早く呼び戻せと陛下が王妃様達に脅されてるからって感じかな。
陛下からの泣きの手紙が毎日来るんだよね。」
「……ハインツさんも大変ですね。」
「あははは、そう思うなら早く準備してね。
すぐに馬車を出すから。」
「急ぎなら王都まで走りましょうか?その方が早いだろうし。」
「ああ、あとベイグマン様からの伝言もあるよ、『陛下が泣いているとしても貴族なのだから、近衛騎士団の馬車に乗せて貰って可及的速やかに王都まで来るように!』とのことだからね。
まあ、私も1度王都に戻るから一緒に戻ろうじゃないか。」
「わ、わかりました。」
「あ、そうそう、宰相のエトムート様からの伝言もあるよ!『陛下からアーク子爵に下賜して建て直している屋敷だが、このままだと問題が起きそうだから可及的速やかに王都に戻ってきなさい。』とのことだね。
どうやら、建て直しの管理をしてくれているエトムート様を通さずにアイリア様、フィリーナ様、ランセリア様のお三方が直接細かい注文をしたりとやりたい放題みたいだね。特に、3つの客室が…」
「………はあぁぁぁ」
ハインツからの話を聞いたアークは頭を抱えて、下を向いた後に上を見て叫んだ。
「最悪だ~~~~~!!!」
「「………」」
ゴランもリリアナも話に付いていけずに唖然としている。
「その建て直しをしている業者はドワーフ達なんだけどね。
ドワーフは良くも悪くも職人気質だから鍛冶や建築、酒造り等に妥協はしないんだよ。
だから、作る物は高品質になるんだけどね。
最初は快くお三方からの注文も受けていたようなんだけど、毎日の様に注文されるから屋敷の建て直しの期間にも影響が出るってことで拒否したらしいんだよ。
そうしたらお三方が乗り込んで行ってしまって、ドワーフ達も応戦したらしいんだけど呆気なくやられて今では従順に働いているらしい。
そこで後日その騒ぎを聞いた宰相のエトムート様がドワーフ達にお詫びをしに行ったら、お三方が常に見張っている状態でドワーフ達が働いていたらしい。
それで、そのドワーフ達が可哀想だから戻ってくるようにとのことだそうだ。」
「「「………」」」
その話が終わったあとアーク、ゴラン、リリアナの3人は声が出なかった。
少しの沈黙のあとにようやく口を開いたのはゴランだった。
「いやぁ、ドワーフってのは冒険者をやるやつもいるからな職人だろうと腕っぷしはBランクくらいはあるはずだ。
だけど、まあ、相手がランセリア様を含めたあのお三方じゃあ、話にならんだろうなぁ~」
「え?ギルマスはランセリア様の事を知ってるの?」
そのアークの質問に答えたのはリリアナだった。
「そりゃあ、そうよ、ゴランの兄と私の姉が一緒に冒険者パーティーを組んで色々な依頼をこなすところを見ていたんですもの。
その頃からベイグマン様は勿論、ランセリア様は桁外れの強さだったわ。
ベイグマン様とゴアンさんが前衛で戦いながら最初は私の姉のリリアンと一緒に後衛でサポートをしていたけど、途中からは面倒になったとか言いながらガンガン氷系統の上級魔法を撃ちまくってたわ、2人を巻き込みながらね。」
「なんで知ってるかってのは俺もリリアナも最初の頃は色々と学ぶために一緒にいたからなんだよ。」
「ランセリア様だけでも桁外れなんだからアイリア様とフィリーナ様が加わったらいくら屈強なドワーフといえども相手にならないわよ。」
「そ、そうですか。
と、とりあえず、ハインツさん。
ドワーフの職人さん達が可哀想だから早く戻りましょう。
元々宿は1日ごとでしか借りていませんでしたし荷物は置いてきてないので、宿屋に戻って王都に戻るから残りをキャンセルと言えばすぐに出れますよ。」
「そうだね、なら10分後に街の門の所に集合しようか。」
「はい、じゃあ、それで。
ギルマスもサブマスもお世話になりました。
色々と片付いたらまた来ます。」
「お、おう!気を付けろよ!色々と…」
「え、ええ!気を付けてね!色々と…」
こうして、アークは大急ぎで王都へ帰っていった。
==================================
今回はまあ、自分でも笑いながら書いてました。
アイリア、フィリーナ、ランセリアと名前を書くのが面倒になったので『お三方』と書きました。
まあ、近衛騎士団の副団長が話しているところなのでいい感じかなとは思います。
名前を言っちゃいけない『例のアノ人達』って感じですかね。
書いていて、ドワーフの職人さん達が可哀想になりました。
次回をお楽しみください。
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底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。
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