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贖罪の天使
第113話 おっさん女子高生!
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「伊織ちゃんの代わりになる?」
やって来たのは苦労人のバカ王子の乳母子のリックだ。
いつも通りに苦労しているのか、目の下のクマが酷い。
まだ十代の若者なのに今後が心配である。
「はい。イオリ様が体調を崩されてまして。
聖女であるイオリ様が風邪を引くのは変だなどと言いがかりを付けられてるんです。
実際には過労なのですが噂が一人歩きしてまして……」
「あちゃー……頑張り屋さんだもんなぁ。
バイトも忙しくて来れなくなってたし。
よし、わかった。
変身ネックレスがあれば楽勝だ」
こうして中身がおっさんの女子高生が生まれる運びとなったのだった。
時夫達はリックに案内されて、伊織がいる王宮に向かう。
「えへへ……似合うかなぁ?」
時夫イオリver.がクルリとその場で回転しながら、照れ笑いをしてみせる。
確かに素材が良いので可愛い。
可愛いのだが、中身はおっさんだ。
おっさんが可愛こぶっているのだ。
「完全に私ですね!」
それに少しも引かずにニコリと笑う伊織は本当に良い子だった。
ルミィは複雑な顔をしている。
イーナは動じない。イーナも実年齢は七十を過ぎている。その年になると並大抵のことでは動じないのだ。
伊織に話を聞いたら、寝不足と貧血で倒れてしまったらしい。
それでドクターストップで学園を休んで公務も延期したのだ。
体を壊したのだから休むのは当然の権利であるように思う。
しかし、隣国で偽聖女のラスティアが我こそは本物の聖女と宣伝する今、国内の有力者から伊織は突き上げを喰らっているらしい。
もっと働いて本物だと証明せよと。
「もっと早く相談してくれれば良かったのに」
伊織は数少ない日本人だ。
同郷のよしみもあるし、困ってるならいくらだって助ける所存。
「だって外国に行ったり忙しかったんですよね?
私が不甲斐なくてご心配おかけしてしまって……」
伊織は申し訳なさそうにする。
「良いって!それに学生をもう一度出来るなんて、ちょっと楽しそうだし!
じゃあ、俺の代わりはルミィに頼むぞ!俺の代わりが務まるのはルミィしかいないからな!」
時夫はこの様に伊織の代わりになるのに何も考えずに安請け合いをした。
時夫は基本的によく考えることをしないから、適当に困ってる人を助けて自分が困っちゃうのが常だった。
そう、伊織あるところにバカ王子あり!
「イオリ……元気になって良かったよ。
早く公務をこなさないと。
新聞社の取材が三社入っているからね」
バカ王子は自分の国民の人気取りのために伊織を利用しているのだった。
コイツのせいか……!イオリちゃんがバイトに来なくなったのは!!
時夫は新聞社に対して、王子とは普段はそこまで仲良く無いことをそこはかとなくアピールしてみた。
王子は焦って取り繕おうとしたが、もう記者さん達はメモ取っちゃってるもんね!お生憎様だ!!
時夫はその後も学園でも王子とは距離を取った。
女子高生の真似なんてよく分からないが、伊織の評判が落ちないようにだけ気を配った。
魔法の授業は座学はそこそこ出来てた。
神殿で暇なときに本を読んでいたのが功を奏したのか、ルミィが教師として優秀だったのか、先生に褒められて有頂天だ。
実習ではこっそり手のひらに水の魔石を取り出したり、『散水』を駆使して伊織になりきった。
時夫イオリver.が活躍するたびに王子が近寄って来たが、さり気無く避けてやった。
へへ……面食らってやがる。
いい気味だ。
しかし、時夫は気が付かなかった。
時夫……もとい伊織に向けられる悪意を。
その時、時夫はたまたま一人で歩いていた。
――ガツン
後頭部に衝撃を受けた。
意識が遠のく……………………。
やって来たのは苦労人のバカ王子の乳母子のリックだ。
いつも通りに苦労しているのか、目の下のクマが酷い。
まだ十代の若者なのに今後が心配である。
「はい。イオリ様が体調を崩されてまして。
聖女であるイオリ様が風邪を引くのは変だなどと言いがかりを付けられてるんです。
実際には過労なのですが噂が一人歩きしてまして……」
「あちゃー……頑張り屋さんだもんなぁ。
バイトも忙しくて来れなくなってたし。
よし、わかった。
変身ネックレスがあれば楽勝だ」
こうして中身がおっさんの女子高生が生まれる運びとなったのだった。
時夫達はリックに案内されて、伊織がいる王宮に向かう。
「えへへ……似合うかなぁ?」
時夫イオリver.がクルリとその場で回転しながら、照れ笑いをしてみせる。
確かに素材が良いので可愛い。
可愛いのだが、中身はおっさんだ。
おっさんが可愛こぶっているのだ。
「完全に私ですね!」
それに少しも引かずにニコリと笑う伊織は本当に良い子だった。
ルミィは複雑な顔をしている。
イーナは動じない。イーナも実年齢は七十を過ぎている。その年になると並大抵のことでは動じないのだ。
伊織に話を聞いたら、寝不足と貧血で倒れてしまったらしい。
それでドクターストップで学園を休んで公務も延期したのだ。
体を壊したのだから休むのは当然の権利であるように思う。
しかし、隣国で偽聖女のラスティアが我こそは本物の聖女と宣伝する今、国内の有力者から伊織は突き上げを喰らっているらしい。
もっと働いて本物だと証明せよと。
「もっと早く相談してくれれば良かったのに」
伊織は数少ない日本人だ。
同郷のよしみもあるし、困ってるならいくらだって助ける所存。
「だって外国に行ったり忙しかったんですよね?
私が不甲斐なくてご心配おかけしてしまって……」
伊織は申し訳なさそうにする。
「良いって!それに学生をもう一度出来るなんて、ちょっと楽しそうだし!
じゃあ、俺の代わりはルミィに頼むぞ!俺の代わりが務まるのはルミィしかいないからな!」
時夫はこの様に伊織の代わりになるのに何も考えずに安請け合いをした。
時夫は基本的によく考えることをしないから、適当に困ってる人を助けて自分が困っちゃうのが常だった。
そう、伊織あるところにバカ王子あり!
「イオリ……元気になって良かったよ。
早く公務をこなさないと。
新聞社の取材が三社入っているからね」
バカ王子は自分の国民の人気取りのために伊織を利用しているのだった。
コイツのせいか……!イオリちゃんがバイトに来なくなったのは!!
時夫は新聞社に対して、王子とは普段はそこまで仲良く無いことをそこはかとなくアピールしてみた。
王子は焦って取り繕おうとしたが、もう記者さん達はメモ取っちゃってるもんね!お生憎様だ!!
時夫はその後も学園でも王子とは距離を取った。
女子高生の真似なんてよく分からないが、伊織の評判が落ちないようにだけ気を配った。
魔法の授業は座学はそこそこ出来てた。
神殿で暇なときに本を読んでいたのが功を奏したのか、ルミィが教師として優秀だったのか、先生に褒められて有頂天だ。
実習ではこっそり手のひらに水の魔石を取り出したり、『散水』を駆使して伊織になりきった。
時夫イオリver.が活躍するたびに王子が近寄って来たが、さり気無く避けてやった。
へへ……面食らってやがる。
いい気味だ。
しかし、時夫は気が付かなかった。
時夫……もとい伊織に向けられる悪意を。
その時、時夫はたまたま一人で歩いていた。
――ガツン
後頭部に衝撃を受けた。
意識が遠のく……………………。
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