おっさん聖女!目指せ夢のスローライフ〜聖女召喚のミスで一緒に来たおっさんが更なるミスで本当の聖女になってしまった

ありあんと

文字の大きさ
上 下
124 / 129
短編的なの書こうかなの章

閑話6-1 人魚のいる島

しおりを挟む
「伝説のアイテム!?」

「はい。大迷宮に保管されていた資料に記述があったんです。
 人魚の守っている島に光魔法を補助する強力な魔道具があると。
 イーナは光魔法の使い手ですし、戦闘力強化のために行きませんか?」

「イーナ……これ以上強くするのか。別にいいけど」

 イーナの弱点は肉体がお子様なので早く起きたり遅くまで起きてられなかったり程度で、戦闘力は多分世界屈指だと思われるのだが……。

 イーナは数夫が本来の勇者だったと知ってからは、時夫に宝剣を貸し出して戦い方を教えようとしてくる。
 別に孫だからって性質を受け継いではいないけど、ツノありウサギを剣で倒すのは何匹かできた。冒険者やってるって感じで楽しかったし、時夫も瘴気を剣で払う奴出来るみたいだった。
 とはいえ勇者歴が違うのでイーナの剣捌きを見ると秒でやる気を無くした。
 
 虫だけじゃなく、ウサギも絶滅させそうな勢いで狩りまくってた。
 うちの女子はなんでこうも戦闘狂なんだ……。
 見た目だけなら国で一、二を争いそうな可愛い系なのに。

 閑話休題。

「イーナはその強化武器についてなんて言ってる?」

「もちろん是非とも欲しいそうです」

 そんな訳で人魚に会いに行く事になった。
 ……多分すんなりと宝物をくれる訳はないよな?

「でも、その資料書かれたの相当昔だろ?
 他の人がもう手に入れたりしてないか?」

「調べてみたんですけど、それらしい物を入手してる国や冒険者が記載された歴史資料は今のところ無いんです。
 だから、もしかしたらまだ誰の手にも渡らずに、そこにあるんじゃ無いかと思いまして。
 無かったら無かったで、旅を楽しみましょう」

 時夫は時夫でまた旅の前に人魚について知ってそうな人に話を聞きに行く。

 先ずは何でも知ってる薬屋の店主だ。
 困った時の時夫のアドバイザーにしてる。

「おっすー。お、ラビン。元気にしてるか?」

「……うん」

 毛が生えすぎる体質で、魔獣のフリをさせられていたウサギ獣人のラビンが店番をしていた。
 脱毛剤を上手く使って今は普通に可愛い姿になっている。
 ラビンが着ているカラフルな可愛い衣装はイーナの作品だ。
 モチーフは不思議の国アリスの時計のウサギか。

「店主は奥か?」

「うん……呼んでくる」

 待っている間に棚に並ぶ薬を眺める。
 げっ!!あの緑と紫が渦巻き光ってる小瓶は……タークが酷い事になったやばい自白剤だ。
 日本円に換算して一本30万円ちょっとのお値段か。
 そんな物は店の奥に厳重に閉まっといて欲しい。
 間違って落として容器割ったら泣く。
 そして、分かってはいたがルミィが密室殺人の推理での薬の購入先はここだったんだな。
 
 法律詳しく無いからうるさい事は言わないけど、非合法っぽいものも普通に売ってるんだよなぁ。
 モルガー刑事もっと仕事しろ。

「お、いらっしゃい。何が欲しいの?」

 とんがり帽子の魔女がいつものニヤニヤした顔で出迎えてくれた。
 こんなんでもラビンの良き母親代わりをやってるらしい。
 ラビンの母親になるにしては若いけど……若いんだよな?
 時夫には女の人の年齢はよく分からない上に、この店長は五百歳とか言われても何故か納得させる貫禄がある。

「人魚のいる島に宝探ししに行くんだよ。
 人魚とかお宝について知ってる事無い?」

「んー?お宝は分からないけど、人魚の涙が欲しいんだよねぇ。
 魔法薬の触媒に使いたいから。頼むよ」

 頼まれた。
 世話になってるから叶えてやりたいが、泣かせるのかぁ……。

「できるか分かんないけど、分かったよ。
 で、何作るんだ?また怪しい薬?」

「ふふふ……そんなんじゃないよ。
 そうだねぇ……作りたいのは何種類かあるんだけど。
 お客さんが興味を持ちそうな奴だと、媚薬なんてどう?恋人さんと盛り上がるよ?」

「おいコラ!子供の教育に悪いだろ。ラビンの前で何言ってんだ」

 ラビンはキョトンとしている。
 よし、意味はわかって無さそうだな。

「後は……ふむ。これはとんでもない薬なんだけどねぇ、お客さんの恋人さんが古代遺跡の資料を少し見せてくれて何種類が載ってた中にあったやつ」

「……何だよ」

 普通の魔法すら、日本人的には奇跡そのものだが、古代魔法はさらにその上を行く。
 何で街の薬屋さんがそんなのに手を出そうとしてるんだ。

「女の子に飲ませれば百発百中、一撃必殺で懐妊させちゃうお薬だよ。どう?
 作れたらお裾分けするよ?」

「いらねぇ!そんなの……その……もっと必要なご家庭があるだろ!」

 ちょっとだけ言い淀んだのは、もし日本に帰れなかったら必要になる可能性もあるのかななんて思ってしまったのだ。
 変な妄想をしそうになったが慌てて脳内から打ち消す。

「材料費だけで一般家庭では手が出ないだろうからねぇ。
 王族レベルなら欲しい人いくらでもいそうだね。
 特に妃が複数いる国ならいくらでも出してくれそうだよ。
 お客さんが材料持ってきてくれるなら、そんな品をお裾分けと思ったんだけどね」

「いや、もう良いから!
 とにかく人魚の涙だな!できたら持って帰ってくるけど、ダメな時はお土産に饅頭でも探して買ってくるから!」

 時夫は慌てて店を出た。
 改めてこの店が合法なのかモルガー刑事に捜査してもらいたい。

 次に時夫は冒険者ギルドに行った。
 確かギルド長が船旅してたとか何とか言ってたし。

「お疲れ様ーっす!」

「いらっしゃいませ……あ、トキオさん!」

 受付のコニーが笑顔で手と尻尾をパタパタさせて出迎えてくれた。
 狐耳もぴこぴこ動いている。

「くそっ!俺もクラスがもっと上がれば……」
「髪型変えようかな……」

 モヒカン系冒険者達がコニーと親しい時夫に羨望と嫉妬の入り混じった眼差しを向けてくる。
 ふむふむ……気分が良いなぁ。

「ギルド長いる?」

「はい!待っててくださいね!」

 コニーが尻尾をフリフリ呼びに行ってくれた。

「お!どうしたんだ?今日は一人か」

 ムキムキマッチョのギルド長がニカっと白い歯並びの良さを見せつけつつ笑いかけてくる。
 そして、何故か腕を曲げて二の腕の筋肉も見せつけてくる。
 それは時夫は無視して本題を速やかに話す。

「人魚のいる島に行くんだよ。
 なんか光魔法の凄い武器が手に入るとか何とかで。
 ギルド長は人形見たことある?」

 時夫のいた世界では、人魚は歌で人間を惑わすとか、肉を食べると長生きとかあったけど、こちらの世界ではどういう扱いなんだろな。

「ああ……なんか獣人の仲間なんだか、怪物なんだかよく分からないけど、魔法が人間より上手いとかいうよな。
 俺は会ったこと無いけど、知り合いは見たって言ってたよ。
 でも、目が合うと海の中にすぐに逃げるから見たと言っても一瞬だったらしいな。
 美人だって嬉しそうだったなぁ」

「そっか。じゃあ、いきなり襲ってきたりは無いか」

「もし会えたらどんな風だったか教えてくれよな」
 
 あまりギルドでは多くの情報は得られなかったが、恐ろしい存在では無いようでホッとした。

 そして、出発の日を迎えた。
 いざ、南の島へ!
 気分は半分バカンスだ。
 
 そして、旅には時夫、ルミィ、イーナのいつもの三人に合わせて、ルミィの忍者集団からお馴染みの調理担当トニーと、アイドルのレティ……メイドのレティシャが来る事になった。

「………………何ですか?」

 レティシャは射殺さんばかりの瞳で時夫を見てくる。こわっ!

「トキオさん!またお会いできて嬉しいです」

 トニーは癒し系だなぁ。

「よろしく頼むよ!……ところで人魚って美味しいのかな?」

「え!?……いや、食べないですよね!?冗談ですよね!?」

 時夫の無邪気な質問にトニーがドン引きしてる。

「あ、うん。冗談ダヨ」

 いや、人魚の肉って不老長寿とかいうし、味が少し気になったんだよ。
 今回はルミィの風と、風の魔石、そして自然の風での旅となる。
 船は前回より小さいが、楽しい旅になると良いな。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...