おっさん聖女!目指せ夢のスローライフ〜聖女召喚のミスで一緒に来たおっさんが更なるミスで本当の聖女になってしまった

ありあんと

文字の大きさ
上 下
121 / 129
短編的なの書こうかなの章

閑話4 タークとおでかけ

しおりを挟む
「え?光るステッキ?欲しいの?何で?」

「……いいから!売ってくれ!」

 ターク・ナーデッドが声を押し殺しつつ叫ぶと言う器用な芸等をする。
 こいつ最近出現頻度高めな気がするな。
 
 時夫が新たなスライムを求めて冒険者ギルドでスライム討伐依頼を探していると、周囲の冒険者達の様子にビクビクオドオドとしながらタークが話しかけてきたのだ。
 モヒカン系冒険者達がタークを揶揄う為か、無駄に舌を伸ばして左右非対称にした変顔でタークをニヤつきながら見つめている。
 奴らなりの友好的な歓迎の仕方だが、別の文化圏のタークには伝わらないようだ。

「何で俺のいる場所わかったんだよ」

「フォクシーたんに聞いたんだ。こっちで依頼を確認してるはずだって」

 時夫の饅頭屋のフワフワ系白狐店長の名前をこの男の口から聞くと犯罪の予感しかしない。

「何だと?盗撮目的での来店はギルド長とモルガー刑事に通報するぞ?」

 時夫の言葉に反応して少し離れたところにいたギルド長が、壁に飾られた巨大な戦闘用のアックスを肩に担いで首をゴキゴキ音を立てながらゆっくりと距離を詰めてきている。
 タークの命はもうすぐ尽きる。

「いや!ちゃんと饅頭買ったから!ほら!」

 紙袋を見せつけてくるからまあ許してやるか。
 ギルド長に目配せして下がってもらう。

「あれはウィルの店の在庫品だよ。
 まだあるかどうかは分からないぞ?」

「道具屋のか!店に並んでないから気が付かなかった!」

 こいつはウィルの店にも毎日行ってるからなぁ。
 目覚まし時計を毎日買うなんて意外と金あるのか?

「よし……情報提供感謝する。では僕は忙しいのでな」

 タークはキリッとした顔で立ち去ろうとするが、心配なので時夫もついて行く。
 勿論こいつを心配している訳ではない。
 ミーシャの心配だ。

「おい、僕は忙しいんだぞ。なんで着いてくるんだ」

「ウルセェ前科持ち!世話になってる人の店を荒らすんじゃない」

 時夫とタークは言い合いながら『ウィルの魔道具屋』にやってきた。

「いらっしゃいませ!あ、トキオさん……と、常連さん」

 ミーシャが笑顔で出迎えてくれた。

「聞いたか?僕は常連なんだぞ!」

 タークは威張るが多分名前が分からなかっただけだと思うぞ。

「なあ、この間蚤の市で売ってた光るステッキまだあるかな?」

「水色が欲しいんだ!」

 時夫の言葉にタークが被せてきた。

「ありますよ!この間売れた事で口コミで評判になったので店でも売ろうかって」

 店の奥の方から声を聞いてかミーシャの父のウィルが顔を出す。

「お、トキオさんと……常連さん」

「ほらな!僕は常連だ!」

 タークがウルセェ。
 タークの事は一旦放置する。

「ウィル、水色の光るステッキはある?こいつが欲しいんだって」

「ありますよ!待っててください!」

 一旦引っ込んで何故か2本持ってきた。

「日本で50ゴルダで良いですよ。いつもお世話になってますから」

「ほらな!聞いたか?僕が常連だから一本オマケして貰えたんだ!」

 タークは大威張りだが、多分命の恩人の時夫にオマケしてくれたんだと思う。
 25ゴルダずつ払って光るステッキを手に入れた。気分は魔法少女。

「で、これで遊ぶのか?」

 正直使い道がわからない。
 お祭りで子供が振り回すためのもんじゃないのか?

「ふふふ……さては知らないのか?アイドルグループ『スライムスレイヤーアフタースクール』を」

「知らん……」

 この世界にもアイドルとかあるのか……。
 この世界と向こうの世界は妙に同じ部分があるし、やはり古代魔法で変なもん召喚して影響を受けてそうだ。
 その技術はもうちょいマシに使って欲しい。

「知らないのか……ニワカだな。
 そもそもこの街……いや、この国のアイドルの歴史は……」

 何やら長い話になりそうだった。
 時夫は口を挟む。

「いや、詳しくは良いけど、これもって応援する感じか。それで水色が応援してるアイドルのイメージカラーなんだよな?」

 アイドルには詳しくないが、それくらいは予想がつく。

「う……まあそうだね。
 スラスレはまだ出来立てホヤホヤのグループなんだ。
 僕が応援して盛り立ててやらないとな。
 リーダーのレティちゃんはダンスがキレキレで顔も可愛いし、これからきっと世界に羽ばたくに決まっているんだ!
 で、これからイベントがあるから行くんだよ。
 暇ならキミも来るといい」

 何故かタークは得意げだ。

「ふーん……スライムスレイヤーか。
 俺の敵みたいな名前してるな」

 時夫の夢はこの世界全てのスライムを我が子とする事だ。
 スライムで世界を統一したい。

 そして、ライブ会場は小さな半地下の劇場だった。
 何やら盛り上がっている。
 ……どこかで見たような見てないようなモヒカン達がギャンギャン楽器を掻き鳴らしている。
 魔獣みたいな雄叫びを上げてるが、喉が潰れないのか心配になる。

「おお……これがスライムスレイヤーか」

 時夫は感慨深げに呟く。なんか思ってた方向性と違うな。

「ちがう!この次!」

 タークが雄叫びに負けない声量で時夫の隣で叫んだ。

 そして、時夫が予測していた方向性の女の子3人グループが現れた。
 それこそ魔法少女のような可愛い系のヒラヒラした格好をしている。
 真ん中のリーダーらしき水色の髪と瞳の女の子がリーダーのレティちゃんなのだろう。

「…………………………あれ?」

 あれは……レティシャ……では?
 時夫を目の敵にしているルミィの手下の暴力系メイドでは?

 目を擦ってよく見るが、双子の妹とかで無い限りはレティシャで間違い無いと思う。
 名前もレティだし。

 そして、挨拶が終わって曲が始まると歌って踊り出す。

「…………………………」

 あいつアイドルだったのか。
 意外とかいうレベルじゃ無いよ。
 まじか。ルミィは知ってるのかな?

 隣では早速ステッキを光らせて踊り狂うタークがいた。
 時夫も真似して踊ることにした。
 踊る阿呆に見る阿呆だ。
 踊るぜ!

 その時、レティことレティシャと目があった。
 お、固まってる。
 まだ曲は終わってないぞ。

 口をパクパクしている。
 ふふふ……面白い表情だなぁ。

 時夫は隣のタークと息を合わせ、レティのカラーである水色の光を周囲に散らしながら踊り狂った。


 後日……。


 饅頭屋で店でダラダラ過ごしていると、札束が目の前のテーブルに叩きつけられた。

「これで……黙っていて貰えますね?」

 顔を上げるとレティシャが親の仇を見る顔で時夫を見ていた。
 悔しそう!
 悔しいのう悔しいのう。くくく……。

「別に仕事サボってやってるんじゃ無いなら良く無いか?」

「いいから!お嬢様に言ったら殺しますから!」

 足音をドスドス響かせてアイドルさんは立ち去った。

「さて、金は別に要らないんだけどなぁ」

 時夫はその金を全額タークに渡し、レティを盛り上げるように依頼した。
 タークはこう言うところでは裏切らない気がしたので、細かい指示なんかは言わなかった。
 タークとその仲間達は街中の水色の物を買い漁ってレティを応援し、スラスレの名前は少しだけ有名になったらしい。
 

 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...