おっさん聖女!目指せ夢のスローライフ〜聖女召喚のミスで一緒に来たおっさんが更なるミスで本当の聖女になってしまった

ありあんと

文字の大きさ
上 下
107 / 129
探求の天使

第103話 原初の女神レグラ

しおりを挟む
「原初の神は、そのまんまの意味ですよ。
 この世界の最初の神のことです。
 ハーシュレイの前にいた女神です」

 ルミィがなんてこと無さそうに答える。

「つまり……アルマは三人目ってことか」

 アルマとハーシュレイだけで、神の座を争ってると思っていたのに面倒そうなのが参戦しようとしてるな。
 いや、最初にいたけど負けたって事か。

「原初の神はハーシュレイに敗れて死んだって事か?」

「いえ……眠りに着いたのだと伝えられています。
 古い神話ですから正確なところは何もわかりません。
 この世界の決まりや、魔法体系はその原初の女神レグラが作ったそうです。
 そして、女神レグラが眠りに着いたことで、この世界の神が不在になり、魔力が枯渇し、魔法が急速に失われました。
 古代魔法の多くもこの時代に永遠に失われたそうです。
 人々が冬を乗り越えられず多くの国が滅びた後に現れたのが……」

「ハーシュレイ様にゃん。
 だから、滅びかけた世界を救った救世の神なのにゃん」

 プールの水面を触って遊んでいたケイティが、ここぞとハーシュレイを擁護する。

「でも、その後立ち直った世界で、瘴気を生み出し恐ろしい怪物次々と作り出した事で、神の座を降りなくてはならなくなりました」

 ルミィがすかさずハーシュレイを貶す。

「で、うっかり神のアルマがやって来て役割を奪い合っていると……」

 もっとマトモな神はおらんのかい。
 
「せっかく綺麗な水があるのですから、身体を清めませんか?
『クリーンアップ』だけではスッキリしません」

「にゃ?あたしは別に水は良いかにゃあ……」

 猫だから水に入るの嫌なのか?
『クリーンアップ』だけでも割と綺麗になるから、数日入らなくても問題は無いだろうけど、一応風呂は月に何度かは入りましょうね、という文化はある。

 お風呂セットも持って来ているし、簡易トイレセットも持って来ているし、冒険の最中でも

「私は水の底の方に書いてある文字を確認したいんですよね……」

 そう言いつつ、身を乗り出しながら魔法の光でプールを照らす。

 ケイティがその背にそろーりと近づく。
 猫だからか足音を消すのが得意みたいだ。

「おい……」

 時夫はケイティがしょうもない悪戯をしようとしているのを察して止めようとしたが、

「にゃー!!!」

「え!?……きゃ!」

 ――バシャン!

 時夫の制止する声に振り向いたルミィが、すぐ背後で大声を出したケイティに驚いて足を滑らせて、水の中に落ちてしまった。

「おい!大丈夫か!?」

 泳げるかな?

 時夫も飛び込むべきか逡巡したその時、

 ぴかーーーー!!!

 プール全体が眩い光を放った。

「な!?ルミィ!!大丈夫か!!」

 時夫が慌てて水に飛び込む。
 そして気がつく。
 光を放ってるのは、プールの底の文字。
 でも、それ以上の輝きを放ってるのは……

「しっかりしろ!」

 時夫は白い眩い光を全身から放つルミィを抱き上げる。
 眩しい。
 何なら眩しさは増すばかりだ。
 とにかく水から引き上げる。

「ルミィ!」

 ――カッと一瞬何も見えなくなる程の光を放って、ルミィの発光はそれなりに収まって、周囲の空間がようやく見えるようになった。
 しかし、今度はプールの底の文字は光ながら宙を舞い、ずぶ濡れのルミィと時夫の周りを渦巻く。

 ルミィが鮮やかに青く輝く目を開けた。

「……濡れてる」

 ポツリと呟いた。

「ああ……乾かすよ。『乾燥』」

 時夫自身とルミィを乾かす。
 宙を舞う文字は更に数を増して時夫達を中心に回転し続けている。

 ルミィが時夫の目を見つめながら、問いかけてくる。

「今は何年?」

「は?」

 ルミィの鮮やかすぎる青い瞳は時夫の目を間近に真っ直ぐに見つめている。

「……貴方は異世界の人か」

 ルミィがすっくと立ち上がる。
 その全身は未だに淡く輝いている。
 いつの間にか、髪の色が金色に戻っている。
 周囲に取り巻く文字はルミィの体に吸い込まれていく。
 
「ルミィ……一体どうしたんだ?大丈夫なのか?」

 時夫はルミィの様子に狼狽える。

「あなた……誰?」
 
 イーナが静かに問いかけ、ルミィを見据え、剣を構える。

「イーナ?どうしたにゃん?仲間割れは良くにゃいにゃ?」

 ケイティがオロオロしながら、ルミィに剣先を向けるイーナを宥めようとする。

 ルミィ……いや、何者かを見つめ、時夫は立ち上がりながら聞く。

「アルマ……じゃ無いんだよな?誰だ?」

「アルマ……あの子が今、この世界の神なの?
 とてもちゃんとこなせるとは思えない。
 ……私はレグラ。
 この世界は今どうなってるの?」

 ――それは私の依代なのに!

 覗き見女神アルなんとかさんの声が時夫の脳内に響いたが無視する。

「この世界は……アルマとハーシュレイが奪い合ってるよ。
 ……迷惑してる」

 最後の言葉は目の前の女神に向けても言ったつもりだった。
 その嫌味が伝わったかはわからない。

 イーナが剣を仕舞う。
 ケイティは訳がわからないようで、オロオロしている。

「いったいどうしたにゃ!なんの冗談にゃ!」

「ケイティ落ち着け。ルミィは女神の依代やってるんだ。
 アルマ以外は初めて見るけど」

 ……ハーシュレイを降ろしたことは無いけど、実は出来たりするのかな?それは流石にやだな。

「どうして今出て来た?」

「ここは私の墓地。
 そう、世界は滅びなかったの……。
 そしたら私はこの世界から抜け出せたのに……。
 この身体の持ち主は、昔受肉した私の血を継いでいる子孫みたい」

 ――そうだったの?どうりで依代に使いやすい訳ね。言われてみれば、レグラに見た目も似てるわ。

 暇女神アルマが何やら合点がいってるようだが、神の癖にお前も知らなかったんかいとツッコミ入れたいし、今はルミィが神の子孫とか重要そうなことを言ってるんだから黙ってて欲しい。
 
「この世界は私の牢獄よ。
 別の神が収めているのなら、いい加減私を天上に返してくれれば良いのに」

 レグラが溜息を吐く。

「……とりあえず、ここから移動して座って話をしないか?」
 

 
 
 
 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

処理中です...