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探求の天使
第103話 原初の女神レグラ
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「原初の神は、そのまんまの意味ですよ。
この世界の最初の神のことです。
ハーシュレイの前にいた女神です」
ルミィがなんてこと無さそうに答える。
「つまり……アルマは三人目ってことか」
アルマとハーシュレイだけで、神の座を争ってると思っていたのに面倒そうなのが参戦しようとしてるな。
いや、最初にいたけど負けたって事か。
「原初の神はハーシュレイに敗れて死んだって事か?」
「いえ……眠りに着いたのだと伝えられています。
古い神話ですから正確なところは何もわかりません。
この世界の決まりや、魔法体系はその原初の女神レグラが作ったそうです。
そして、女神レグラが眠りに着いたことで、この世界の神が不在になり、魔力が枯渇し、魔法が急速に失われました。
古代魔法の多くもこの時代に永遠に失われたそうです。
人々が冬を乗り越えられず多くの国が滅びた後に現れたのが……」
「ハーシュレイ様にゃん。
だから、滅びかけた世界を救った救世の神なのにゃん」
プールの水面を触って遊んでいたケイティが、ここぞとハーシュレイを擁護する。
「でも、その後立ち直った世界で、瘴気を生み出し恐ろしい怪物次々と作り出した事で、神の座を降りなくてはならなくなりました」
ルミィがすかさずハーシュレイを貶す。
「で、うっかり神のアルマがやって来て役割を奪い合っていると……」
もっとマトモな神はおらんのかい。
「せっかく綺麗な水があるのですから、身体を清めませんか?
『クリーンアップ』だけではスッキリしません」
「にゃ?あたしは別に水は良いかにゃあ……」
猫だから水に入るの嫌なのか?
『クリーンアップ』だけでも割と綺麗になるから、数日入らなくても問題は無いだろうけど、一応風呂は月に何度かは入りましょうね、という文化はある。
お風呂セットも持って来ているし、簡易トイレセットも持って来ているし、冒険の最中でも
「私は水の底の方に書いてある文字を確認したいんですよね……」
そう言いつつ、身を乗り出しながら魔法の光でプールを照らす。
ケイティがその背にそろーりと近づく。
猫だからか足音を消すのが得意みたいだ。
「おい……」
時夫はケイティがしょうもない悪戯をしようとしているのを察して止めようとしたが、
「にゃー!!!」
「え!?……きゃ!」
――バシャン!
時夫の制止する声に振り向いたルミィが、すぐ背後で大声を出したケイティに驚いて足を滑らせて、水の中に落ちてしまった。
「おい!大丈夫か!?」
泳げるかな?
時夫も飛び込むべきか逡巡したその時、
ぴかーーーー!!!
プール全体が眩い光を放った。
「な!?ルミィ!!大丈夫か!!」
時夫が慌てて水に飛び込む。
そして気がつく。
光を放ってるのは、プールの底の文字。
でも、それ以上の輝きを放ってるのは……
「しっかりしろ!」
時夫は白い眩い光を全身から放つルミィを抱き上げる。
眩しい。
何なら眩しさは増すばかりだ。
とにかく水から引き上げる。
「ルミィ!」
――カッと一瞬何も見えなくなる程の光を放って、ルミィの発光はそれなりに収まって、周囲の空間がようやく見えるようになった。
しかし、今度はプールの底の文字は光ながら宙を舞い、ずぶ濡れのルミィと時夫の周りを渦巻く。
ルミィが鮮やかに青く輝く目を開けた。
「……濡れてる」
ポツリと呟いた。
「ああ……乾かすよ。『乾燥』」
時夫自身とルミィを乾かす。
宙を舞う文字は更に数を増して時夫達を中心に回転し続けている。
ルミィが時夫の目を見つめながら、問いかけてくる。
「今は何年?」
「は?」
ルミィの鮮やかすぎる青い瞳は時夫の目を間近に真っ直ぐに見つめている。
「……貴方は異世界の人か」
ルミィがすっくと立ち上がる。
その全身は未だに淡く輝いている。
いつの間にか、髪の色が金色に戻っている。
周囲に取り巻く文字はルミィの体に吸い込まれていく。
「ルミィ……一体どうしたんだ?大丈夫なのか?」
時夫はルミィの様子に狼狽える。
「あなた……誰?」
イーナが静かに問いかけ、ルミィを見据え、剣を構える。
「イーナ?どうしたにゃん?仲間割れは良くにゃいにゃ?」
ケイティがオロオロしながら、ルミィに剣先を向けるイーナを宥めようとする。
ルミィ……いや、何者かを見つめ、時夫は立ち上がりながら聞く。
「アルマ……じゃ無いんだよな?誰だ?」
「アルマ……あの子が今、この世界の神なの?
とてもちゃんとこなせるとは思えない。
……私はレグラ。
この世界は今どうなってるの?」
――それは私の依代なのに!
覗き見女神アルなんとかさんの声が時夫の脳内に響いたが無視する。
「この世界は……アルマとハーシュレイが奪い合ってるよ。
……迷惑してる」
最後の言葉は目の前の女神に向けても言ったつもりだった。
その嫌味が伝わったかはわからない。
イーナが剣を仕舞う。
ケイティは訳がわからないようで、オロオロしている。
「いったいどうしたにゃ!なんの冗談にゃ!」
「ケイティ落ち着け。ルミィは女神の依代やってるんだ。
アルマ以外は初めて見るけど」
……ハーシュレイを降ろしたことは無いけど、実は出来たりするのかな?それは流石にやだな。
「どうして今出て来た?」
「ここは私の墓地。
そう、世界は滅びなかったの……。
そしたら私はこの世界から抜け出せたのに……。
この身体の持ち主は、昔受肉した私の血を継いでいる子孫みたい」
――そうだったの?どうりで依代に使いやすい訳ね。言われてみれば、レグラに見た目も似てるわ。
暇女神アルマが何やら合点がいってるようだが、神の癖にお前も知らなかったんかいとツッコミ入れたいし、今はルミィが神の子孫とか重要そうなことを言ってるんだから黙ってて欲しい。
「この世界は私の牢獄よ。
別の神が収めているのなら、いい加減私を天上に返してくれれば良いのに」
レグラが溜息を吐く。
「……とりあえず、ここから移動して座って話をしないか?」
この世界の最初の神のことです。
ハーシュレイの前にいた女神です」
ルミィがなんてこと無さそうに答える。
「つまり……アルマは三人目ってことか」
アルマとハーシュレイだけで、神の座を争ってると思っていたのに面倒そうなのが参戦しようとしてるな。
いや、最初にいたけど負けたって事か。
「原初の神はハーシュレイに敗れて死んだって事か?」
「いえ……眠りに着いたのだと伝えられています。
古い神話ですから正確なところは何もわかりません。
この世界の決まりや、魔法体系はその原初の女神レグラが作ったそうです。
そして、女神レグラが眠りに着いたことで、この世界の神が不在になり、魔力が枯渇し、魔法が急速に失われました。
古代魔法の多くもこの時代に永遠に失われたそうです。
人々が冬を乗り越えられず多くの国が滅びた後に現れたのが……」
「ハーシュレイ様にゃん。
だから、滅びかけた世界を救った救世の神なのにゃん」
プールの水面を触って遊んでいたケイティが、ここぞとハーシュレイを擁護する。
「でも、その後立ち直った世界で、瘴気を生み出し恐ろしい怪物次々と作り出した事で、神の座を降りなくてはならなくなりました」
ルミィがすかさずハーシュレイを貶す。
「で、うっかり神のアルマがやって来て役割を奪い合っていると……」
もっとマトモな神はおらんのかい。
「せっかく綺麗な水があるのですから、身体を清めませんか?
『クリーンアップ』だけではスッキリしません」
「にゃ?あたしは別に水は良いかにゃあ……」
猫だから水に入るの嫌なのか?
『クリーンアップ』だけでも割と綺麗になるから、数日入らなくても問題は無いだろうけど、一応風呂は月に何度かは入りましょうね、という文化はある。
お風呂セットも持って来ているし、簡易トイレセットも持って来ているし、冒険の最中でも
「私は水の底の方に書いてある文字を確認したいんですよね……」
そう言いつつ、身を乗り出しながら魔法の光でプールを照らす。
ケイティがその背にそろーりと近づく。
猫だからか足音を消すのが得意みたいだ。
「おい……」
時夫はケイティがしょうもない悪戯をしようとしているのを察して止めようとしたが、
「にゃー!!!」
「え!?……きゃ!」
――バシャン!
時夫の制止する声に振り向いたルミィが、すぐ背後で大声を出したケイティに驚いて足を滑らせて、水の中に落ちてしまった。
「おい!大丈夫か!?」
泳げるかな?
時夫も飛び込むべきか逡巡したその時、
ぴかーーーー!!!
プール全体が眩い光を放った。
「な!?ルミィ!!大丈夫か!!」
時夫が慌てて水に飛び込む。
そして気がつく。
光を放ってるのは、プールの底の文字。
でも、それ以上の輝きを放ってるのは……
「しっかりしろ!」
時夫は白い眩い光を全身から放つルミィを抱き上げる。
眩しい。
何なら眩しさは増すばかりだ。
とにかく水から引き上げる。
「ルミィ!」
――カッと一瞬何も見えなくなる程の光を放って、ルミィの発光はそれなりに収まって、周囲の空間がようやく見えるようになった。
しかし、今度はプールの底の文字は光ながら宙を舞い、ずぶ濡れのルミィと時夫の周りを渦巻く。
ルミィが鮮やかに青く輝く目を開けた。
「……濡れてる」
ポツリと呟いた。
「ああ……乾かすよ。『乾燥』」
時夫自身とルミィを乾かす。
宙を舞う文字は更に数を増して時夫達を中心に回転し続けている。
ルミィが時夫の目を見つめながら、問いかけてくる。
「今は何年?」
「は?」
ルミィの鮮やかすぎる青い瞳は時夫の目を間近に真っ直ぐに見つめている。
「……貴方は異世界の人か」
ルミィがすっくと立ち上がる。
その全身は未だに淡く輝いている。
いつの間にか、髪の色が金色に戻っている。
周囲に取り巻く文字はルミィの体に吸い込まれていく。
「ルミィ……一体どうしたんだ?大丈夫なのか?」
時夫はルミィの様子に狼狽える。
「あなた……誰?」
イーナが静かに問いかけ、ルミィを見据え、剣を構える。
「イーナ?どうしたにゃん?仲間割れは良くにゃいにゃ?」
ケイティがオロオロしながら、ルミィに剣先を向けるイーナを宥めようとする。
ルミィ……いや、何者かを見つめ、時夫は立ち上がりながら聞く。
「アルマ……じゃ無いんだよな?誰だ?」
「アルマ……あの子が今、この世界の神なの?
とてもちゃんとこなせるとは思えない。
……私はレグラ。
この世界は今どうなってるの?」
――それは私の依代なのに!
覗き見女神アルなんとかさんの声が時夫の脳内に響いたが無視する。
「この世界は……アルマとハーシュレイが奪い合ってるよ。
……迷惑してる」
最後の言葉は目の前の女神に向けても言ったつもりだった。
その嫌味が伝わったかはわからない。
イーナが剣を仕舞う。
ケイティは訳がわからないようで、オロオロしている。
「いったいどうしたにゃ!なんの冗談にゃ!」
「ケイティ落ち着け。ルミィは女神の依代やってるんだ。
アルマ以外は初めて見るけど」
……ハーシュレイを降ろしたことは無いけど、実は出来たりするのかな?それは流石にやだな。
「どうして今出て来た?」
「ここは私の墓地。
そう、世界は滅びなかったの……。
そしたら私はこの世界から抜け出せたのに……。
この身体の持ち主は、昔受肉した私の血を継いでいる子孫みたい」
――そうだったの?どうりで依代に使いやすい訳ね。言われてみれば、レグラに見た目も似てるわ。
暇女神アルマが何やら合点がいってるようだが、神の癖にお前も知らなかったんかいとツッコミ入れたいし、今はルミィが神の子孫とか重要そうなことを言ってるんだから黙ってて欲しい。
「この世界は私の牢獄よ。
別の神が収めているのなら、いい加減私を天上に返してくれれば良いのに」
レグラが溜息を吐く。
「……とりあえず、ここから移動して座って話をしないか?」
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