おっさん聖女!目指せ夢のスローライフ〜聖女召喚のミスで一緒に来たおっさんが更なるミスで本当の聖女になってしまった

ありあんと

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探求の天使

第88話 小柄なメイドさんがやってきた

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 馬車に揺られて優雅な旅だ。

 しっかり『クッション』を皆んなに使うことで、快適さは保証済みだ。

「今回は忍者軍団はジェイクだけなんだな」

「忍者軍団って何ですか?」

 ルミィが不思議そうな顔をする。
 そうだった。忍者軍団は正式名称じゃなく、時夫が心の中で読んでいるだけだった。

「いや、日本だと情報とか集めたり、こっそり色々やってくれる人を忍者って言うんだよ。な、イーナ、そうだよな?」

「ええ、まあ、少し違うような気はするけど、大まかにはそうかしら」

 時夫も忍者の知識なんてそんなに無いから、適当だ。

「彼らは……私の実家の伯爵家の所有ですが、実質私に仕える諜報部隊兼側近ですよ。
 特に名前とかは無いですけど」

「ジェイクは強いの?何で今回は一人だけ連れてきたの?」

 時夫は気になって聞いてみる。

「優秀ですよ。でも、今回も瘴気があるから戦えませんけど」

 優秀なのか。
 うん。一人だけ特別に連れてくるくらいだしな。相当な優秀さなのだろう。
 ……別にそれだけだよな?
 ジェイクは別にイケメンとかじゃ無いし。

 何となくモヤモヤとした気持ちを顔に出してる時夫を見兼ねてか、イーナがルミィに質問する。

「ジェイクさんはご家庭はお持ちなのかしら」

「はい。奥様もうちの伯爵家の方に長年仕えてくれてた方で、お子さんが二人いるんですよ。
 下のお子さんはまだ赤ちゃんで可愛いんです!」

「そっか!既婚者か!」

 時夫の機嫌良さそうな顔に、イーナがクスクス笑う。

「イーナ、どうしたんですか?」

 急に笑い出したイーナを、ルミィが不思議そうに見る。

「いえいえ、何でも無いわ」

 イーナは大人の余裕を少女の顔に見せた。

 そして、国境を冒険者カードを見せて手続きをサッと済ませたが、ノマ連邦の予定していた宿に着く頃には夕方になっていた。
 なかなか良い宿だ。ルミィの財力に頼りまくりの旅である。

「お久しぶりです!トキオさん!」

「あれ!?トミー!?なんでここに!?」

 前回の船旅でちょっと仲良くなった調理担当のトミーだ。
 時夫は再会にちょっと喜ぶ。

「先に入国して、宿とか取っておいたんです。他にも何人か先行してこっち来てますよ」

「そうなんだ。大変だな」

 なんだ。忍者軍団先行部隊もいたのか。

「俺なんて全然!戦わなくて良いんですもん。
 ぜひ姫……ルミィ様をよろしくお願いします!」

「姫か……大事にしてるんだな。任せてくれ。ちゃんと全員無事で勝って帰るつもりだから」

 今回の討伐はルミィが珍しくワガママを言ってくれて実現した旅だ。
 日本から召喚されてからは、基本的にルミィに衣食住全てにおいて世話になってばかりなので偶にはお返ししないといけない。
 だから、今回はとっておきを持ち出して頑張るつもりだ。

 それに、時夫は今は冒険者としてそれなりに実績を積んでいるので、実は神殿を出ても一人でもそれなりに生きていける……からこそ、ルミィの為に頑張らないといけない。
 
 冒険者カードも流石になりたてホヤホヤの証のクラス5はダメだが、クラス4以上となると実績ありと見なされて、それなりに社会的な地位が約束される。
 収入も貯蓄もあるので、召喚されてすぐの頃と違って、ルミィがいなくても、時夫は今やこの世界を生きていくだけなら余裕で可能だ。

 なのにまだ神殿に置いておいて貰ってるし、偶には良いところを見せておきたい!

 ……そう張り切る時夫だったが、問題が発生した。
 トニーをズズイと押し除けて、小柄なメイドさんが時夫の前に現れた。

 そう、メイドさんである。

 肩口で切り揃えられた水色のボブカット。
 ロングスカートの古式ゆかしいメイド服を着て、小さな背丈を少しでも大きく見せようと背筋をビシッと伸ばしている。
 水色の瞳には剣呑な光。
 敵意を包み隠さずに睨みつけている。

「貴方がトキタ様ですね。
 お嬢様からよーくお話は伺っております」
 
 「あ、ども」

 時夫は自分よりも少なくとも十歳は年下だろう小ちゃいメイドさんに頭を掻きつつペコリと頭を下げる。

「お嬢様を守る為に来ました。
 私が来たからにはお嬢様に好き勝手はさせませんから!」

「ははあ、なるほど……」

「……なんて覇気の無い人!やはりお嬢様は騙されている……!おいたわしや!!」

 メイドさんはグギギギギと音が鳴るほど奥歯を噛み締めていらっしゃる。
 歯に悪いぞい。

「あ、レティシャ!本当に来たんですね。
 家の方は大丈夫何ですか?」

「お嬢様……!お嬢様は私が守りますから!!」

 メイドさんことレティシャさんは、ルミィを抱きしめつつ、時夫に悪鬼の表情で圧を掛けてくる。

 何だか面倒くさいことになりそうだった。
 
 

 
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