おっさん聖女!目指せ夢のスローライフ〜聖女召喚のミスで一緒に来たおっさんが更なるミスで本当の聖女になってしまった

ありあんと

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花色の天使

第72話 妖精の森の国へ

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 ルミィにより若さを奪う邪教徒、花色の天使バトリーザの情報がもたらされた。

「多分間違いないと思います」

 ルミィ曰く、海を渡った島国ティルナーグという所に妖精の住む森と呼ばれる場所があり、昔から若い女は近づかないように、その地方では言い伝えられているそうだ。

「女が近づくと若さを失い、老婆になるらしいです」

「それってゾフィーラ婆さんの話そのまんまだな」

 時夫はふむふむと相槌をうつ。
 
 時夫はゾフィーラ婆さんと共にルミィの話に耳を傾けている。
 婆さんはお茶を啜りながら穏やかな表情で聞いている。
 ……憎い仇だろうけど、この歳じゃ今更恨んだりとかはしないのかな?
 達観してるって奴だな。

「男は特に何もされないのか?」

 もしや時夫だけ安全?そういう種類の固有魔法って奴なのかな?

「いえ、顔の悪い男は殺されてバラバラにされるそうです。
 逆に、顔が良さそうだと贈り物を貰えたり、歳を取ったハンサムな人なら、若返らせて貰えるそうです」

 カズオ爺さんならどうだっただろうな。
 少なくとも髪や髭がボサボサの時は殺され判定だったろうな。
 と、時夫は失礼な事を考えていた。

 俺に何かプレゼントとかくれたら良いなぁ……いや、相手は敵だし。
 多分顔が気に入っても殺そうとしてくるんだろうなぁ。残念残念。

「じゃあさ、変身ネックレスにイケメン登録してから行こうぜ!
 誰も文句付けられないようなイケメンを!」

 それで安全に侵入出来るはず。

「そうですねぇ……では、役者さんなんてどうでしょう?
 顔の良い人の集まりでしょうから」

 ……というルミィの提案を受けて、劇を見に来たよ。

「ふふふ……こういうの観るのは何十年振りよ」

 婆さんも目一杯のオシャレをしている。
 なかなか上品な貴婦人って雰囲気で良いんじゃないでしょうか。

 劇は魔力が高く生まれた平民の健気な女の子が、周囲の意地悪も何のそので、王子様と結ばれました。みたいな話だった。

 ルミィが劇終了後に、劇団長と話をつけてくれたところ、貴族パワー的なもので、役者たちに挨拶させて貰えることになった。
 貴族つえー!

 変身ネックレスに登録できるのは、一つにつき二人で、単なる色違いも枠を一つ取ってしまう。
 でも、髪染めで色違いは対応出来るので、気にせずに入れとくか。

 そして、時夫の方には今をときめく若手俳優と、ちょい渋いダンディな人を登録した。
 そして、もう一つのネックレスだが……。

「あの人入れたいわ」

 なんとゾフィーラ婆さんのご指名で、劇団長を入れた。
 劇団長さん中々の高齢なのに。
 ……まあ、確かによく見ると、顔立ちがかなり整っている。若い頃ならここにいる俳優たちも負けてしまったかもしれない。

「ゾフィーラさんお目が高いですね!
 あの人昔はすごーく人気のあった俳優さんだったらしいですよ。
 大陸一番のハンサムみたいに言われてたとか!」

 ルミィがゾフィーラの見る目を褒める。

「でも、流石に若い人には勝てなく無いか?」

「だから、若返らせようとして隙ができるかも知れません。
 せっかくだから種類を揃えておきましょう。
 現地の人の話を聞いて、ダメそうならティルナーグの人の中から顔の良い人をコソッと登録し直せば良いんですから」

 なるほど。
 確かに同じ様なのばっかり登録するのも意味がなさそうだ。
 バトリーザの好みのタイプも調査が必要だな。

 そんでもって、団長さんは、もしかしたらゾフィーラ婆さんの好みのタイプなのかな。
 団長さんは婆さんよりは年下だけど、お似合いな感じはするかもな。
 
「船の手配は任せてください。
 数日以内に行きますよ」

 劇場から帰りがてら買い物しつつ、ルミィがせっかちな日程を告げた。

「そんなに急に大丈夫かな?」

「のんびりしてると邪教徒たちがまた何かしてくるかも知れません。
 先手必勝です!」

 ルミィは好戦的だった。

「じゃあ婆さん、留守を頼むな」

 時夫がゾフィーラ婆さんに声をかけると、婆さんは立ち止まった。

「私も行きます。私はこれ以上失うものがありませんから」

 思わぬ言葉に時夫もルミィもすぐには反応出来なかった。

「私なら、これ以上は多分年をとりません。連れて行ってください」

 深々と往来で頭を下げられる。

「でも、危険で……」

「私は……勇者です」

 頭を下げたまま、ゾフィーラはそう口にした。
 淡々としているが、決意が込められていた。

「ルミィ……どうにか出来るか?」

「時夫は連れて行くと決めたのですね?ならばどうにでもしましょう」

 ルミィは頼り甲斐があった。

「……じゃあ、明日から出発までは旅行の荷物纏めないとな」

「ありがとうございます」

 ゾフィーラはようやく顔を上げて、シワを深くして微笑んだ。
 
 
 
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