おっさん聖女!目指せ夢のスローライフ〜聖女召喚のミスで一緒に来たおっさんが更なるミスで本当の聖女になってしまった

ありあんと

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そろそろ良い加減少しはスローライフをしたい

第60話 潜入!地下労働強制施設!

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 まずは、狐獣人の二人を変身ネックレスに登録して、それぞれ変身!

 時夫はコニーになった。
 その上で毛の色を真っ白に。これで北狐族っぽくなったぞ!

 そして、ルミィはフォクシーに変身する。

 フォクシーが貰った手紙を借り受けて、身分証明書を携えてレッツゴーだ!

 因みに、身分証明書は冒険者ギルドの登録カードだ。
 ふふふ……ギルド受付嬢を引き込んでる俺らを舐めて貰っては困るぜ!
 不正カード作りの間は、ギルド長にはかき氷を店の方で食べていただいた。
 時夫の奢りだ。たんとおたべ。

 冒険者ギルドには時夫とルミィとコニーの3人で裏口から入る。
 休職中受付嬢コニー所有の鍵があるので楽々侵入。
 ギルド長もかき氷を食べつつも、時夫達にメチャクチャ下手くそなウインクをしまくって店を出る時に見送ってくれた。
 見送ってというか、見逃して……の方が正確か。

 そして、毛が白いコニーのカードと、フォクシーのカードが手に入った。

「よし、行ってくる!」

「気をつけてください。私は店に戻りますね」

 店の方は人見知りのフォクシーが一人で頑張ってくれている。

「ああ、任せろ。妹のところに早く戻ってやれ」

「はい!お願いします!ご武運を!」

 コニーのいつも通りの受付の挨拶を聞いて、気合を入れて『パーラーゴールダマイン』の扉を叩く。
 ……のに待ち時間20分もかかった。
 うわ!手汗のタークの野郎また並んでやがる!フード被っとこ。

「すみません!店長さんはいらっしゃいますか?」

 パヤパヤな制服を着たお姉さんに声を掛ける。

「はーい。待っててくださいね!」

 愛想よく店の奥へ。

「お客様……何の用ですか?」

 ダンディな紳士が現れた。ちょび髭がチャームポイント!

「あの、ゴールダマインさんが我々北狐族を学校に行かせてくれるって、地元の両親からの手紙で知って来たんですけど……」

 そう言いながら手紙を見せる。

「……どうぞこちらへ」

 そして、事務室っぽい所で互いに自己紹介をする。
 このちょび髭ダンディは、グラバーさんと言うらしい。
 雇われ店長って奴だな。

 簡単な面接の様なものが始まったので、作ったばかりのギルドカードを見せた。
 念のためカードの機能をいくつか試す。

「……本物ですね」

 そらそうだ。年間何百枚とカードを作る本職の作った作りたてのホヤホヤだ。

「それで……学校に行けるんですか?生活費って出して貰えるって聞きました」

 大きくふわふわな尻尾を弄びながら聞いてみる。
 これ触ってると確かに落ち着くな。
 フォクシーが不安になるといつも抱えてる気持ちが分かる。これ抱き枕代わりに良さそう。
 サービスで狐耳もぴこぴこ動かしてやる。
 聞こえ方が人間の耳と違ってなんか面白いな。

「……その件なんですが、誰にでも支援する訳では無いなんです。
 ちゃんと真面目にこちらの言う事を聞ける人かどうか、しばらく他の北狐族の子供達と一緒に生活して貰って、ちょっとした仕事をして貰ってからの判断となります。
 ……お二人は他のここに来た子供達よりも年上の様なので、合格基準は厳しくなると覚悟してください」

「はい!頑張ります!」
「頑張ります!」

 そして、店のすぐ裏の寮とやらに案内された。
 質素な二階建てのアパートみたいだ。

 ……あれ?閉じ込められてるんじゃ無いのかな?

「じゃ、こちらが制服。後で寮費なんかの説明もするから。
 食事はこっちで用意するからそれを食べて。
 二人は姉妹なら同じ部屋で良いよね?」

「はい!」

 なんかちょび髭の口調が変わったな……。
 まあ、採用?されて身内みたいな扱いになったのかな?
 でも、いつの間にか学校行く話から、働く話になっていたなぁ。

 そして、ようやく始まるワクワク地下強制労働!

 とっても殺風景な狭い地下。
 最低限の設備しかない。でも、
 真っ白でふわふわの尻尾の子供達が5人もいるよ!

「わぁ!可愛いですねぇ」

 ルミィが感嘆の声を小さめにあげる。
 
 それぞれ名前と性別は、イル、ロイ、ハリーの男三人と、ニーナ、ホイットニーの二人で、イルが最年長の11歳。ニーナが最年少で6歳だ。
 イルが子供達のリーダー的な存在らしく、時夫達に仕事を教えてくれた。

 早速子供達と一緒にアイスクリームを冷やすよ!

 と、見せ掛けて氷魔法は使えないから、事前にこちらに用意しておきました。
 短時間料理番組の如く、出来上がってるものを出して誤魔化す。
 アイスクリームのフレーバーが軒並み被っていたので、何とか用意できたのだ。
 とは言え、材料は店としては購入が難しく、個人でかき集めて『空間収納』に在らん限り入れておいたのだ。
『空間収納』の中では温度の変化も無いみたいで保管に便利すぎる。

 これ、溶かした鉄とか溶岩とか毒とか入れといたらめちゃ強いんじゃ……。
 邪な考えが浮かんだので、首をブンブン振って頭から追い出す。
 時夫以外の人はそれなりに本人に近い位置にしか収納の出入り口を設定出来ないから危険極まりないのだ。
 それに内部も狭いから、魔法が得意なら直接攻撃力を高めた方が強いんだろう。
 変なことばかり考えるとスローライフから遠ざかってしまう。

 さあ、スローライフ目指してちゃんとお仕事しないと!

 時夫はせっせと自分とルミィの前のアイスクリームを完成品と取り替えていく。

 子供達は頑張っているが、幼い子供達は途中で疲れてしまう様だ。
 すると、たまに見に来るちょび髭に怒られてしまう。
 時夫も怒られないように頑張らねば!
 
 そして、十二時間の労働を終える頃にはクタクタになっていた。
 途中、トイレなどの休憩を利用して、取り替えた凍らせる前のアイスクリームを、『散水』『乾燥』で凍らせて完成品を補充したり、かなり頑張った。

 ルミィは逆に何もすることが無くて暇で辛かったそうな。
 とりあえず視察はこんなもんで良いな。
 確かに子供達の存在は確認できたし、ペースが落ちると怒られたりしてて、可哀想だった。
 これは子供達が望んだ環境のはずが無い。

 そして、店の裏でちょび髭グラバーに声を掛ける。

「すみません。自分たちには無理みたいです。
 故郷に帰ります」

 そう言うと、グラバーの顔が憤怒に赤く染まる。

「そりゃ困る!契約者には途中で辞めても三年分の宿泊代を出させるって書いてあったよ?
 それに食事代も同じだ!他にも制服代や施設管理費だって全部契約分は払ってもらわないといけないよ!
 ほら、書類にサインしただろう?」

 なんか無茶苦茶言うとる。
 ルミィと二人で書いた契約書をこちらに掲げて見せている。
 言われてみて、書類を詳しく見るとなんかそれっぽい事が分かりにくく書いてあった。

 これに自分の名前をサインすると、魔法の力で逆らえなくなるのだ。
 拘束力を失くすには、この書類の場合には緑長髪のフィリー・ゴールダマインが協力するか、死ぬかしないといけないらしい。
 ……クソ成金野郎、拾い食いとかして今すぐ死んでくれないかなぁ。

「『剛腕』……とう!」

 久々に使った瞬間的に腕の力をアップさせる魔法だ。

「うぐ……!」

 契約書がひ~らひら。

 それを時夫は『空間収納』で回収する。

「ば……馬鹿な。
 何故俺に逆らえる!?何故契約書が効かない!?
 収納に入れた所で……効果は消えないはず!」

 そうなんです。燃やしても効果失わないらしいんです。
 それに、雇用主側への暴力行為が固く禁じられてるんです。
 だが、そもそも……

「俺の名前『コニー・ヴィンター』じゃないんだ。
 トッキーって呼んでね」

 契約書は他人の名前書いたら魔法が作動しないんだなぁコレが。

「……は?偽名?偽造カードか?そんなはずは!!
 クソッ!!ガードマン!すぐ来い!!」

 なんかムキムキなのが二人ほどやって来た。

 ルミィは既に収納から杖を取り出している。
 ふむ……こいつらどう料理するかな……。

「『空間収納』」

 ムキムキの頭上から大量のアイスクリームが降り注ぐ!!

「うわ!何だコレ!?」

 冷えてるのもそうでないのも合わさってべっちゃべちゃのぐちゃぐちゃだ。
 
「『エアーバインド』」
 
 ルミィの風が二人を拘束する。

 そして、時夫は寮を見上げる。
 2階の廊下から子供達が見下ろしていた。

「皆んな!時間外労働だ!アイスクリームを凍らせろ!」

 子供達は目を見開いた。
 戸惑いは一瞬だった。
 イルがすぐに動き、他の子も続いた。

「『フローズン』」

 やった!ムキムキトッピングの巨大アイスクリームが出来たぞ!

 そして、
「『ウサギの足』『滑り止め』」

 こっそり逃げ出そうとしていたちょび髭の目の前に颯爽登場!

「『空間収納』」

 苦労人リックに貰った魔石から、雷魔法の物を選び取り出す。

「食らえ!」

 ビリビリ……!

 ちょび髭グラバーは手足をガクガクさせつつ、白目を剥いて気絶した。

「契約書が悪事の証拠になりそうです。子供達の分も探しましょう」

 ルミィと共に店を捜索し、それっぽい紙は全て『空間収納』に保管する。

「これで子供達の契約も切れるのか?」

「いいえ……直ぐには無理です。時間が掛かるので、フィリー・ゴールダマインを直接叩くのが手っ取り早いです」

 どの道伊織が心配だから、緑長髪は追わなくてはならない。
 やることは変わらないな。

「……ちなみに契約違反したらどうなるんだ?」

「契約にまた従うまでは全身に強い痛みを感じます。
 それと、心理的に強い抵抗感を覚えます。逆らうのはかなり難しいです」

「……とは言え、店長こんなんだし、店続けるの無理だぞ?」

「そうですね……」

 ルミィがちょび髭にネックレスを近づけた。

「まさか……」

「私はやりませんよ。誰か……ネックレスを預けるに足る人を探して店長になって貰いましょう」

 そして、『パーラーゴールダマイン』の偽店長には、冒険者ギルド長が就任した。

 果たしてこの街の冒険者ギルドはこの先どうなってしまうのか!?
 雑な運用に不安しかないのだった。
 
 
 
 
 
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