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復讐の天使
第46話 そばに
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時夫達は暫くそのままカズオの側にいた。
カズオに掛けてやったマントは黒い液体を吸い、萎み、黒く濡れた後も消えて平になった。
それでも動く気になれない時夫に代わってルミィがカズオのいた場所に跪いた。
神に祈る時と同じくらい真摯で、真っ直ぐな誠実さが表れていた。
丁寧にマントをたたみ、そして、カズオの着ていた服を畳みながら、何かをポケットから取り出した。
魔法の光に翳して、手のひらサイズのものをジッと見つめた後、時夫のものに着た。
「トキオ……遺品です」
それは革製のケースで、その中に折りたたまれて入っていたらしい写真だった。
擦り切れて角が丸くなり、経年劣化により随分と色褪せていた。
だが、何が写っているのかはわかった。時夫の母と祖母の若い頃の写真だった。
時夫は受け取る。
「墓……作ってやりたいけど、他に何にも残っちゃいねぇな」
「そうですね……いや、遺髪があります」
「え……?」
ルミィの言葉に、カズオのいた場所を見たが、何も残っていない。邪教徒は死んですぐに特殊な魔法で保護しなければ、証拠一つ残さず消えてしまうのだ。
「ほら、宿で髪の毛切ってあげた後!証拠を残さないように『空間収納』に入れたって」
「……あ」
そうだった。
時夫は祈る様な気持ちで収納から髪の毛を取り出す。
「良かった……残ってる。でも何で?」
「……もしかすると、死んだ時に消滅する魔法をハーシュレイから掛けられていたけど、『収納』の中にあったから、その影響を免れたのかも知れないです。
お墓作りますか?」
ルミィの言葉に少し迷って、時夫は首を振る。
「日本に帰れたら、髪の毛は婆ちゃんの実家の墓に入れようと思う。
婆ちゃんもいずれは入るところだから」
「………………そうですか、ニホンに」
ルミィが口を噤んだ。
時夫は、大事なパートナーと向き合う。
「俺……日本に帰ろうと思う。どれくらい掛かるかわからないけど。
爺さんを、髪の毛だけでも日本に帰してやりたい。それに、親父とお袋が向こうで心配してるはずなんだ。
婆ちゃんと……お袋心配させて……泣かせたら、……死んだ爺さんに……顔向できない」
最後の方はつっかえつっかえになってしまっていた。
涙が溢れた。
祖父が死んで悲しいのか。それとも別の理由があるのかも自分ではわからない。
時夫は両膝をついて地面に片手をついて、涙をぼたぼた地面に吸わせる。
髪の毛と千切れた写真を胸に抱きかかえて、嗚咽を漏らす。
ふわりと優しい匂いと温かい感触が時夫を包んだ。
「……大丈夫です。トキオはきっとニホンに帰れます。
カズオの為にも……家族の為にもあなたは帰らないといけません。
私が手伝います。ちゃんと……あなたがニホンに帰るまで側にいます。
私が……あなたをニホンに帰してあげます」
ルミィが優しく時夫を抱きしめながら片手で髪をすきながら囁く。
その声は少し震えていた。
泣くのを我慢する小さな少女の様だった。
「私はあなたの側にいますから……」
ルミィは何度も何度も呟いた。
時夫もルミィを抱きしめ返す。
ルミィが時夫の前髪を掻きやり、柔らかな唇が時夫の額に落ちた。
そのまま二人は暫く何も言わずに抱き締めあっていた。
涙がすっかり乾いた頃に、今一度カズオのいた場所に祈りを捧げてから、当初の予定の病院の敷地に忍び込み、祈りを捧げる。
祖父の犯した罪が少しでも償われるように、真摯な祈りを捧げた。
そして、太陽が昇る前にアーシュラン国に戻る。
ルミィの杖に乗って、星空の下を移動した。
カズオに掛けてやったマントは黒い液体を吸い、萎み、黒く濡れた後も消えて平になった。
それでも動く気になれない時夫に代わってルミィがカズオのいた場所に跪いた。
神に祈る時と同じくらい真摯で、真っ直ぐな誠実さが表れていた。
丁寧にマントをたたみ、そして、カズオの着ていた服を畳みながら、何かをポケットから取り出した。
魔法の光に翳して、手のひらサイズのものをジッと見つめた後、時夫のものに着た。
「トキオ……遺品です」
それは革製のケースで、その中に折りたたまれて入っていたらしい写真だった。
擦り切れて角が丸くなり、経年劣化により随分と色褪せていた。
だが、何が写っているのかはわかった。時夫の母と祖母の若い頃の写真だった。
時夫は受け取る。
「墓……作ってやりたいけど、他に何にも残っちゃいねぇな」
「そうですね……いや、遺髪があります」
「え……?」
ルミィの言葉に、カズオのいた場所を見たが、何も残っていない。邪教徒は死んですぐに特殊な魔法で保護しなければ、証拠一つ残さず消えてしまうのだ。
「ほら、宿で髪の毛切ってあげた後!証拠を残さないように『空間収納』に入れたって」
「……あ」
そうだった。
時夫は祈る様な気持ちで収納から髪の毛を取り出す。
「良かった……残ってる。でも何で?」
「……もしかすると、死んだ時に消滅する魔法をハーシュレイから掛けられていたけど、『収納』の中にあったから、その影響を免れたのかも知れないです。
お墓作りますか?」
ルミィの言葉に少し迷って、時夫は首を振る。
「日本に帰れたら、髪の毛は婆ちゃんの実家の墓に入れようと思う。
婆ちゃんもいずれは入るところだから」
「………………そうですか、ニホンに」
ルミィが口を噤んだ。
時夫は、大事なパートナーと向き合う。
「俺……日本に帰ろうと思う。どれくらい掛かるかわからないけど。
爺さんを、髪の毛だけでも日本に帰してやりたい。それに、親父とお袋が向こうで心配してるはずなんだ。
婆ちゃんと……お袋心配させて……泣かせたら、……死んだ爺さんに……顔向できない」
最後の方はつっかえつっかえになってしまっていた。
涙が溢れた。
祖父が死んで悲しいのか。それとも別の理由があるのかも自分ではわからない。
時夫は両膝をついて地面に片手をついて、涙をぼたぼた地面に吸わせる。
髪の毛と千切れた写真を胸に抱きかかえて、嗚咽を漏らす。
ふわりと優しい匂いと温かい感触が時夫を包んだ。
「……大丈夫です。トキオはきっとニホンに帰れます。
カズオの為にも……家族の為にもあなたは帰らないといけません。
私が手伝います。ちゃんと……あなたがニホンに帰るまで側にいます。
私が……あなたをニホンに帰してあげます」
ルミィが優しく時夫を抱きしめながら片手で髪をすきながら囁く。
その声は少し震えていた。
泣くのを我慢する小さな少女の様だった。
「私はあなたの側にいますから……」
ルミィは何度も何度も呟いた。
時夫もルミィを抱きしめ返す。
ルミィが時夫の前髪を掻きやり、柔らかな唇が時夫の額に落ちた。
そのまま二人は暫く何も言わずに抱き締めあっていた。
涙がすっかり乾いた頃に、今一度カズオのいた場所に祈りを捧げてから、当初の予定の病院の敷地に忍び込み、祈りを捧げる。
祖父の犯した罪が少しでも償われるように、真摯な祈りを捧げた。
そして、太陽が昇る前にアーシュラン国に戻る。
ルミィの杖に乗って、星空の下を移動した。
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