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豊穣の天使
第19話 狂信者と世界に混乱をもたらす神
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「邪神とは……
この世界の滅亡を願う悪しき存在です。
それに従う奴らが邪教徒です。
女神アルマを偽物呼ばわりするんです!異端の奴らなんです!ああやって瘴気をたくさん発生させて人間を殺そうとする悪い奴らです!女神アルマに逆らう奴は全員邪教徒です!!」
ルミィが捲し立てる。
喋ってる割に中身無いな。
「なんか悪い奴なのはわかったよ。
で、何で世界を滅ぼそうとしてるんだ?」
「悪い奴らだからです!」
ルミィが真剣な眼差しで断言する。
「悪い奴にだって何か理由とか道理があるだろ?」
「無いです!悪い奴の言い分は何一つ認めません!」
認めないらしい。
ダメだ話が通じないぞ。そう言えば、この世界は全体的に全員考え方が野蛮めで適当なのだった。
女神からしてテキトーでおっちょこちょいだからな。
……そうだ、ルミィより詳しそうな奴に話を聞くか。
「ルミィ、アルマ呼び出してくれ」
ルミィが腰に手を当てプンスコ怒る。
「ちゃんと女神アルマと言いなさい!敬意を払うのです!」
ルミィは直接会話した事があまり無いからなぁ。アイツは敬意とか必要ないよ。
まあ、ルミィには面倒だからそうは言わないけど。
「はいはい。早く女神アルマ様を呼んでくれ」
ルミィはぶつくさ言いながらもしっかり祈り始める。
その姿は手慣れてるのもあってか楚々として、その逞しく図太いルミィの性格を知ってるのに金色の長いまつ毛を閉じた清廉な横顔に見惚れそうになる。
光を帯び、その身に女神を降ろすさまは、時夫よりも……たぶん本来の聖女齋藤さんよりも聖女に相応しいのでは無いかと心から思う。
「………………女神様は今忙しいらしいです」
ルミィが祈りのポーズのまま感情を一切乗せない声で淡々と女神の御心を告げた。
「はぁ!?忙しいとかあるのか?……いいからもう一回だ!」
時夫は普通に女神アルマの御心に逆らう。
さっきルミィが話していた基準で言えば、逆らう時夫は今日から立派な邪教徒だ。
「ええ!?女神がダメって言ってるんですよ!?」
敬虔な信徒であるルミィは反論してくるが、何となく勢いが弱い。
女神アルマの御心に疑問を抱いてしまったようだ。
心を惑わす悪魔時夫に怯える哀れな子羊。
さもありなん。
ルミィは時夫と共に、女神のやらかしで時夫が聖女になってしまった事を知る、この世にだだ二人の存在のうちの一人だ。
どれだけ信心深くても女神の能力に疑問を抱くなとか無理だ。やらかし内容がマヌケ過ぎて誤魔化しが効かない。
「女神が本当に忙しいとかあるわけないだろ?神なんだぞ。
お前の祈りが足りないんだ。さあ、もう一回だ!」
ルミィが先程よりも危機迫る気迫に満ちた様子で祈りを捧げる。
狂信者の眼をしている。よし!頑張れ!!
ぴかー!!
今までに無いほどに眩い光を放ちながら、ルミィがすっくと立ち上がった。
時夫を不満げに捉える瞳は輝く金色。
狂信者ルミィ……やったな。
お前はやり遂げた。今は心安く眠るが良い。
「で、さっそく聞きたいんだけど、邪神って何?」
挨拶すらせずに時夫は本題に入る。タイムイズマネー。それは時夫の信条。
「私は忙しいのに……何で……」
女神はぶつくさ言いながらも、近くの椅子に腰掛ける。一応話してくれそうだ。
……デコピン無しで自力で戻るには寝るしか無いんだったか。
ならサッサとこっちの用件を済まして帰った方が早いというものか。
「あー……邪神ハーシュレイというのは、私の前にこの世界を司る神だった存在なのよ。
私が担当になったんだから、早くどこかに去ねばよいものを……
性格が悪いから、居座ってメチャクチャにしてから私に引き渡そうと企んでいる悪どい奴なの。
どうにかこの世界を統べる権限と権能を半分は無理やり引き継いだのだけど、もう半分を引き渡さないでいるの。
時夫、此度はそなたの働きで、奴の手下が上手い事虫ケラのようにくたばったわ」
このポンコツ……口が悪い。口が悪いぞ!!
それはさておき、
「担当とかあるのか……そして、担当の変更があるのか……。
何でハーシュレイから変更になったんだ?」
「ハーシュレイは弱肉強食が好きなのと、人間と他の種族を混ぜるのが好きなのよ。
獣人なんかを作っているうちは良かったのだけれど、身体にわざとダメージを与えて蝕む瘴気などというものを作り出して、その中でも生き延び、瘴気すら力に変える強い存在を作り出そうとし始めたのよ。
それで生まれたのが、そなた達の倒した、人と他の生き物を混ぜた怪物。ハーシュレイが天使などと呼ぶ存在が生まれたの。
私はこの世界を立て直す為にも、担当になったのに、居座られてて迷惑してるの。
他の案件も抱えてて忙しいのに……」
ハーシュレイの名を出す時は実に嫌そうな顔をする。仲が悪いらしい。
でも、こいつの話を信じるならば、ハーシュレイは自分の趣味でヤバい実験をしてるマッドサイエンティスト的な奴らしい。
「どうにか出来ないか?」
時夫はやがて元の世界に戻るだろうが、ルミィ達の今後は気になる。
「ハーシュレイは天使達に自分の力を分け与えているわ。天使達を倒すことで、あちらの不当に持つ権能がこちらに戻されるの。
そうね……そなた達の此度の働きのお陰で私の使える権能が少し戻ったから、そなた達には少し贈り物をしましょう」
アルマ慈悲深い微笑みを浮かべる。たおやかな白い手をそっと時夫の頬に添えた。
きらきらりん!
時夫の体が良い感じのエフェクトで期待できそうな雰囲気を纏った。
「今度は何のチート能力をくれたんだ?」
アルマの、ルミィの手がそっと頬から離れる。
「魔力量を増やしました。ルミィの力添えもあったから、二人で分け合う形になったけれど、これで魔力量は二人とも以前の倍はあるし、今後の努力で伸びやすくなったわ」
それはなかなか嬉しいかも知れない。頑張った甲斐があるってものだ。
「それで、そろそろ忙しいから戻して欲しいのだけど?……手加減してね」
アルマが微笑みながら前髪を上げて白い額を差し出してくる。
「オッケー。まあ威力は抑えめにするよ。……そういや、忙しいって何で?」
気になったので去られる前に聞いておく。
「ああ、大したことでは無いの。
……ただ、別の世界も兼任して神をやっているのだけど、間違えて一人だけ召喚するところを三十人召喚しちゃったから、その後処理を……」
ばっちーん!!!
「いっっったあーい!!トキオ!何するんですか!?」
青灰色の瞳が潤んで見上げてくる。
「悪い。つい力が入っちまって……」
ポンコツ女神は他所でも大迷惑なことやらかしてたようだ。
もっとマトモな神はいないのか?
この世界の滅亡を願う悪しき存在です。
それに従う奴らが邪教徒です。
女神アルマを偽物呼ばわりするんです!異端の奴らなんです!ああやって瘴気をたくさん発生させて人間を殺そうとする悪い奴らです!女神アルマに逆らう奴は全員邪教徒です!!」
ルミィが捲し立てる。
喋ってる割に中身無いな。
「なんか悪い奴なのはわかったよ。
で、何で世界を滅ぼそうとしてるんだ?」
「悪い奴らだからです!」
ルミィが真剣な眼差しで断言する。
「悪い奴にだって何か理由とか道理があるだろ?」
「無いです!悪い奴の言い分は何一つ認めません!」
認めないらしい。
ダメだ話が通じないぞ。そう言えば、この世界は全体的に全員考え方が野蛮めで適当なのだった。
女神からしてテキトーでおっちょこちょいだからな。
……そうだ、ルミィより詳しそうな奴に話を聞くか。
「ルミィ、アルマ呼び出してくれ」
ルミィが腰に手を当てプンスコ怒る。
「ちゃんと女神アルマと言いなさい!敬意を払うのです!」
ルミィは直接会話した事があまり無いからなぁ。アイツは敬意とか必要ないよ。
まあ、ルミィには面倒だからそうは言わないけど。
「はいはい。早く女神アルマ様を呼んでくれ」
ルミィはぶつくさ言いながらもしっかり祈り始める。
その姿は手慣れてるのもあってか楚々として、その逞しく図太いルミィの性格を知ってるのに金色の長いまつ毛を閉じた清廉な横顔に見惚れそうになる。
光を帯び、その身に女神を降ろすさまは、時夫よりも……たぶん本来の聖女齋藤さんよりも聖女に相応しいのでは無いかと心から思う。
「………………女神様は今忙しいらしいです」
ルミィが祈りのポーズのまま感情を一切乗せない声で淡々と女神の御心を告げた。
「はぁ!?忙しいとかあるのか?……いいからもう一回だ!」
時夫は普通に女神アルマの御心に逆らう。
さっきルミィが話していた基準で言えば、逆らう時夫は今日から立派な邪教徒だ。
「ええ!?女神がダメって言ってるんですよ!?」
敬虔な信徒であるルミィは反論してくるが、何となく勢いが弱い。
女神アルマの御心に疑問を抱いてしまったようだ。
心を惑わす悪魔時夫に怯える哀れな子羊。
さもありなん。
ルミィは時夫と共に、女神のやらかしで時夫が聖女になってしまった事を知る、この世にだだ二人の存在のうちの一人だ。
どれだけ信心深くても女神の能力に疑問を抱くなとか無理だ。やらかし内容がマヌケ過ぎて誤魔化しが効かない。
「女神が本当に忙しいとかあるわけないだろ?神なんだぞ。
お前の祈りが足りないんだ。さあ、もう一回だ!」
ルミィが先程よりも危機迫る気迫に満ちた様子で祈りを捧げる。
狂信者の眼をしている。よし!頑張れ!!
ぴかー!!
今までに無いほどに眩い光を放ちながら、ルミィがすっくと立ち上がった。
時夫を不満げに捉える瞳は輝く金色。
狂信者ルミィ……やったな。
お前はやり遂げた。今は心安く眠るが良い。
「で、さっそく聞きたいんだけど、邪神って何?」
挨拶すらせずに時夫は本題に入る。タイムイズマネー。それは時夫の信条。
「私は忙しいのに……何で……」
女神はぶつくさ言いながらも、近くの椅子に腰掛ける。一応話してくれそうだ。
……デコピン無しで自力で戻るには寝るしか無いんだったか。
ならサッサとこっちの用件を済まして帰った方が早いというものか。
「あー……邪神ハーシュレイというのは、私の前にこの世界を司る神だった存在なのよ。
私が担当になったんだから、早くどこかに去ねばよいものを……
性格が悪いから、居座ってメチャクチャにしてから私に引き渡そうと企んでいる悪どい奴なの。
どうにかこの世界を統べる権限と権能を半分は無理やり引き継いだのだけど、もう半分を引き渡さないでいるの。
時夫、此度はそなたの働きで、奴の手下が上手い事虫ケラのようにくたばったわ」
このポンコツ……口が悪い。口が悪いぞ!!
それはさておき、
「担当とかあるのか……そして、担当の変更があるのか……。
何でハーシュレイから変更になったんだ?」
「ハーシュレイは弱肉強食が好きなのと、人間と他の種族を混ぜるのが好きなのよ。
獣人なんかを作っているうちは良かったのだけれど、身体にわざとダメージを与えて蝕む瘴気などというものを作り出して、その中でも生き延び、瘴気すら力に変える強い存在を作り出そうとし始めたのよ。
それで生まれたのが、そなた達の倒した、人と他の生き物を混ぜた怪物。ハーシュレイが天使などと呼ぶ存在が生まれたの。
私はこの世界を立て直す為にも、担当になったのに、居座られてて迷惑してるの。
他の案件も抱えてて忙しいのに……」
ハーシュレイの名を出す時は実に嫌そうな顔をする。仲が悪いらしい。
でも、こいつの話を信じるならば、ハーシュレイは自分の趣味でヤバい実験をしてるマッドサイエンティスト的な奴らしい。
「どうにか出来ないか?」
時夫はやがて元の世界に戻るだろうが、ルミィ達の今後は気になる。
「ハーシュレイは天使達に自分の力を分け与えているわ。天使達を倒すことで、あちらの不当に持つ権能がこちらに戻されるの。
そうね……そなた達の此度の働きのお陰で私の使える権能が少し戻ったから、そなた達には少し贈り物をしましょう」
アルマ慈悲深い微笑みを浮かべる。たおやかな白い手をそっと時夫の頬に添えた。
きらきらりん!
時夫の体が良い感じのエフェクトで期待できそうな雰囲気を纏った。
「今度は何のチート能力をくれたんだ?」
アルマの、ルミィの手がそっと頬から離れる。
「魔力量を増やしました。ルミィの力添えもあったから、二人で分け合う形になったけれど、これで魔力量は二人とも以前の倍はあるし、今後の努力で伸びやすくなったわ」
それはなかなか嬉しいかも知れない。頑張った甲斐があるってものだ。
「それで、そろそろ忙しいから戻して欲しいのだけど?……手加減してね」
アルマが微笑みながら前髪を上げて白い額を差し出してくる。
「オッケー。まあ威力は抑えめにするよ。……そういや、忙しいって何で?」
気になったので去られる前に聞いておく。
「ああ、大したことでは無いの。
……ただ、別の世界も兼任して神をやっているのだけど、間違えて一人だけ召喚するところを三十人召喚しちゃったから、その後処理を……」
ばっちーん!!!
「いっっったあーい!!トキオ!何するんですか!?」
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