15 / 129
豊穣の天使
第14話 冒険者ギルド
しおりを挟む
次の日、新聞売りがいたので、朝食を買いに来たついでに買ってみた。
すると、病院の患者達が急に元気になったことが書いてある。
「お、ルミィ!病院のことが記事になってるぞ!」
「本当ですか!私にも見せてください」
ルミィも嬉しそうに時夫の横からひょっこり顔を出して読んでいく。
しかし、読み進めるにつれて、だんだん表情が険しくなる。
時夫としても気分は少しわかる。
「アレク!あの野郎!!」
ルミィがドスの効いた声を出した。アレク?
「落ち着けルミィ。キャラ変わってるって。あと誰に対する怒りかわからん」
新聞では瘴気病の患者が全員回復傾向である事が大々的に書かれていた。
そして、患者達の回復前にアレックス第一王子と異世界から来た聖女サリトゥが慰問に来ていた旨が書かれていた。
聖女の力で瘴気病が治ったのだと。
「ふーん……聖女パワーなのは大正解だけどな。良かった。これなら聖女が本当は俺だとバレるにはまだ時間が掛かりそうだな」
時夫は周りから尊敬はされたいが、男なのに聖女なのはやはり嫌なのだ。
聖女の称号も力も元々斎藤さんのものだ。
これで、もしかしたら異世界人として王宮で難しい立場にいるかも知れない齋藤さんの立場が強化されたかもしれんな。
この世界唯一の同郷の存在が少し気がかりだったので時夫は少し安堵した。
これでこちらも好き勝手してられる。
「手柄取られちゃいましたよ!アレクの奴め!自分の国民からの人気取りに上手い事利用してます!」
時夫はルミィを宥める。
「いや、俺は別にいいよ。でも、アレックス王子と親しいのか?」
ルミィは心外だとばかりに反論する。
「親しくないです!あんな奴!」
……どうやら知り合いではあるらしい。やはり神官って結構地位が高いんだな。
第一王子と交流あるとか中々凄い気がするけど、世界が違えば常識も立場の強さも違う感じか?
ルミィが新聞をくしゃくしゃにして、ポイっと放り捨てた。
ゴミのポイ捨てに眉を顰めたが、通り過ぎの浮浪者っぽい人がすぐに拾っていった。まあ、有効活用してくれるだろう。
空間収納に入れたらしく、新聞はすぐに見えなくなった。
時夫が見ている事に気がついたのか、浮浪者は軽く会釈して人混みにすぐに消えた。
怒っている女性にポイ捨てを下手に注意するのは得策では無い気がするので、時夫は大人しくルミィに付いて歩く。
いつもならゴミのポイ捨てはしてないし、きっと新聞なら誰か他の人が読むために拾うとわかっててやったんだろうし。
そして……
冒険者ギルドとやらにやってきたぞ。
「こんにちは!ご用件をどうぞ!」
猫耳をぴょこぴょこ動かしながら受付のお嬢さんが愛想良く挨拶してくれる。
…………猫耳!?
ルミィにヒソヒソと小声で聞く。
「なあ……あの猫耳……」
「しっかりしてください!あれは猫じゃ無くて狐獣人ですよ」
「はあ……」
獣人というのがいるのか。
「俺の世界には獣人とかいなかったんだ」
ルミィがキョトンと時夫を見つめる。
「そうなんですか?じゃあ力仕事はどうしてたんですか?全部魔法で?時夫以外は魔法使える人が多かったんですか?」
そっか、俺がこの世界を知らない様に、ルミィも俺の世界を知らないのか。
俺が元の世界では魔法使えなかったのは説明したが、そもそも世界中誰一人使えないとは言わなかったな。
「まあ、その話は追々で」
受付嬢が中途半端な位置で立ち止まって話し始めた時夫たちを不思議そうに見ている。
フロアは結構広く、建物は2階もあるみたいだ。
2階は飲み屋になっているらしく、そこで仲間を募ったり、仲間内での作戦会議をしたりするのだと。
楽しそうだが、まずは自分の実力を知ってからだな。
レミィ曰く、身分証なんかは必要ないらしい。
結構移民や出自の怪しい人も仕事が無くて冒険者になるのはあるあるらしいので、異世界人でもそこまで細かく聞かれないそうなので安心。
「すみません。冒険者の登録をしたいんですけど」
受付嬢はニッコリ笑って水晶玉の様なものを出してきた。
受付嬢が水晶玉に手を置きながら質問を始める。
「では登録を始めます。まずお名前は?東の出身の方ですか?」
「時田時夫です。出身はそんな感じです」
つらつらと質問が続いた。
「え!?トキオって結構年上?」
ルミィが何やら言っているのは無視する。
「では、最後にこの水晶玉に手を置いてください。それで登録終了です」
ぺかー……っと水晶玉が光った。
「では、こちらが登録カードです。再発行には50ゴルダが掛かりますから失くさない様にお気をつけくださいませ」
茶色っぽい簡素なカードだ。
ランクは5?
「最初は一番低いランクからスタートするんですよ。依頼をこなしていくとランクが上がっていくシステムです」
ルミィが解説してくれる。
「ルミィは登録しないのか?」
時夫の質問に、ルミィがふふんと得意げな顔をした。
ルミィの手が閃き、魔法の様にカードが現れた!
……いや、普通に魔法で『空間収納』からカッコ付けて出しただけだな。
ランクは2
どれくらい凄いかはわからないが、このふんぞり返って小鼻を膨らませて偉そうな様子を見ると、それなりに凄いのだろう。
多分漢字検定二級くらいの凄さとか。
「トキオ一人ではランク5の依頼しか受けられませんが、私と一緒なら大抵の依頼は受けられますよ!」
「おお、そりゃ有り難いことで……さて、金も急ぎで必要だし、どの依頼を受けるべきか……」
時夫が壁の掲示物を見に行く。
「何を言っているんですか!これに決まってます!」
ルミィがビシッとある掲示物を指さした。
「追加募集!北の森の瘴気調査」
なるほど……テオールの父親も探せて一石二鳥か。
すると、病院の患者達が急に元気になったことが書いてある。
「お、ルミィ!病院のことが記事になってるぞ!」
「本当ですか!私にも見せてください」
ルミィも嬉しそうに時夫の横からひょっこり顔を出して読んでいく。
しかし、読み進めるにつれて、だんだん表情が険しくなる。
時夫としても気分は少しわかる。
「アレク!あの野郎!!」
ルミィがドスの効いた声を出した。アレク?
「落ち着けルミィ。キャラ変わってるって。あと誰に対する怒りかわからん」
新聞では瘴気病の患者が全員回復傾向である事が大々的に書かれていた。
そして、患者達の回復前にアレックス第一王子と異世界から来た聖女サリトゥが慰問に来ていた旨が書かれていた。
聖女の力で瘴気病が治ったのだと。
「ふーん……聖女パワーなのは大正解だけどな。良かった。これなら聖女が本当は俺だとバレるにはまだ時間が掛かりそうだな」
時夫は周りから尊敬はされたいが、男なのに聖女なのはやはり嫌なのだ。
聖女の称号も力も元々斎藤さんのものだ。
これで、もしかしたら異世界人として王宮で難しい立場にいるかも知れない齋藤さんの立場が強化されたかもしれんな。
この世界唯一の同郷の存在が少し気がかりだったので時夫は少し安堵した。
これでこちらも好き勝手してられる。
「手柄取られちゃいましたよ!アレクの奴め!自分の国民からの人気取りに上手い事利用してます!」
時夫はルミィを宥める。
「いや、俺は別にいいよ。でも、アレックス王子と親しいのか?」
ルミィは心外だとばかりに反論する。
「親しくないです!あんな奴!」
……どうやら知り合いではあるらしい。やはり神官って結構地位が高いんだな。
第一王子と交流あるとか中々凄い気がするけど、世界が違えば常識も立場の強さも違う感じか?
ルミィが新聞をくしゃくしゃにして、ポイっと放り捨てた。
ゴミのポイ捨てに眉を顰めたが、通り過ぎの浮浪者っぽい人がすぐに拾っていった。まあ、有効活用してくれるだろう。
空間収納に入れたらしく、新聞はすぐに見えなくなった。
時夫が見ている事に気がついたのか、浮浪者は軽く会釈して人混みにすぐに消えた。
怒っている女性にポイ捨てを下手に注意するのは得策では無い気がするので、時夫は大人しくルミィに付いて歩く。
いつもならゴミのポイ捨てはしてないし、きっと新聞なら誰か他の人が読むために拾うとわかっててやったんだろうし。
そして……
冒険者ギルドとやらにやってきたぞ。
「こんにちは!ご用件をどうぞ!」
猫耳をぴょこぴょこ動かしながら受付のお嬢さんが愛想良く挨拶してくれる。
…………猫耳!?
ルミィにヒソヒソと小声で聞く。
「なあ……あの猫耳……」
「しっかりしてください!あれは猫じゃ無くて狐獣人ですよ」
「はあ……」
獣人というのがいるのか。
「俺の世界には獣人とかいなかったんだ」
ルミィがキョトンと時夫を見つめる。
「そうなんですか?じゃあ力仕事はどうしてたんですか?全部魔法で?時夫以外は魔法使える人が多かったんですか?」
そっか、俺がこの世界を知らない様に、ルミィも俺の世界を知らないのか。
俺が元の世界では魔法使えなかったのは説明したが、そもそも世界中誰一人使えないとは言わなかったな。
「まあ、その話は追々で」
受付嬢が中途半端な位置で立ち止まって話し始めた時夫たちを不思議そうに見ている。
フロアは結構広く、建物は2階もあるみたいだ。
2階は飲み屋になっているらしく、そこで仲間を募ったり、仲間内での作戦会議をしたりするのだと。
楽しそうだが、まずは自分の実力を知ってからだな。
レミィ曰く、身分証なんかは必要ないらしい。
結構移民や出自の怪しい人も仕事が無くて冒険者になるのはあるあるらしいので、異世界人でもそこまで細かく聞かれないそうなので安心。
「すみません。冒険者の登録をしたいんですけど」
受付嬢はニッコリ笑って水晶玉の様なものを出してきた。
受付嬢が水晶玉に手を置きながら質問を始める。
「では登録を始めます。まずお名前は?東の出身の方ですか?」
「時田時夫です。出身はそんな感じです」
つらつらと質問が続いた。
「え!?トキオって結構年上?」
ルミィが何やら言っているのは無視する。
「では、最後にこの水晶玉に手を置いてください。それで登録終了です」
ぺかー……っと水晶玉が光った。
「では、こちらが登録カードです。再発行には50ゴルダが掛かりますから失くさない様にお気をつけくださいませ」
茶色っぽい簡素なカードだ。
ランクは5?
「最初は一番低いランクからスタートするんですよ。依頼をこなしていくとランクが上がっていくシステムです」
ルミィが解説してくれる。
「ルミィは登録しないのか?」
時夫の質問に、ルミィがふふんと得意げな顔をした。
ルミィの手が閃き、魔法の様にカードが現れた!
……いや、普通に魔法で『空間収納』からカッコ付けて出しただけだな。
ランクは2
どれくらい凄いかはわからないが、このふんぞり返って小鼻を膨らませて偉そうな様子を見ると、それなりに凄いのだろう。
多分漢字検定二級くらいの凄さとか。
「トキオ一人ではランク5の依頼しか受けられませんが、私と一緒なら大抵の依頼は受けられますよ!」
「おお、そりゃ有り難いことで……さて、金も急ぎで必要だし、どの依頼を受けるべきか……」
時夫が壁の掲示物を見に行く。
「何を言っているんですか!これに決まってます!」
ルミィがビシッとある掲示物を指さした。
「追加募集!北の森の瘴気調査」
なるほど……テオールの父親も探せて一石二鳥か。
43
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる