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異世界に呼ばれた聖女
第4話 神より授けられしチート能力
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時夫は無言でルミィのオデコに手を近づけた。
「ん?何か?」
ルミィは不思議そうな眼をしている。
ばちん!
「いたあ!」
良い音がなった。デコピンの精度が高まってるな。
これが神のご加護なのか?それとも魔法の力?とにかくこれからも精進せねば。
「な、な、お、おでこが……。あれ?私はいったい……?」
眼をパチクリしている。いつの間にか瞳が青灰色に戻っている。
いつものルミィに戻ったと言うことになってるとかいう設定だろうな。
「変なこと言うからだ。流石におっさんが聖女は無い」
「おっさん聖女?」
ルミィが小首を傾げた。
「おっさん聖女!?おっさんなんですか!?ええ!そんなお年で!いらっしゃる!?」
ルミィはびっくり仰天!といった風に両手を広げて眼を見開いて大袈裟に驚く。なんかムカつくな。
「おうよ。またデコピンされたいか?」
ルミィはおでこを手で押さえながら首をブンブン振った。
「でも、なんで突然怒ってるんですか!」
「なんか宗教行事の一環だったら悪いが、さっきのイタコ芸……えーっと、自分はアルマだーって言ってたのは何だ?」
ルミィはおでこを守りつつ、また小首を傾げた。
「何ですか?私そんな事言うはずないですよ!神を自称するのは不遜です!」
ルミィの目を見る。ルミィも時夫を見つめ返してくる。
うーん……嘘はついて無さそうな気がする。
「ちょっと試しに、またそこで祈ってみてくれ」
「えー?何ですか?参考にしたいんですか?良いですけど?」
むすくれた文句ありげな顔と声にしては普通に言う事を聞いてくれた。
跪いて祈りを捧げるその姿はなかなか堂に入っている。子供の頃から神殿にいると言っていたか……。なんかコイツも色々事情とかあるのかも知れないな。
そして、先ほどの光景が再現された。
ルミィの体が光り輝き始める。
そして、
「時田時夫、話の途中で変な事をしないでちゃんと最後まで聞きなさい!」
ルミィの目が再び金色になった。
ルミィ……いや、アルマがぷんぷんと怒っている。
そして、アルマの話を要約すると、
神が長時間直接的にこの世界に介入するのが難しい為に、聖女システムがあるらしい。
システムを作ったのは別の神。
アルマは現在の担当者。
アルマがこの世界で何か直接したい時は、ルミィの体を借りるしか無い。
女子高生、齋藤伊織は他の世界の中でシステム上都合が良い存在だったので、持ってくるつもりが、近くにいた時夫も来てしまった。
時夫を巻き込んでいるのに気がつくのが遅れたせいで、時夫の方に力を付与してしまった。
なので、この世界を浄化するのは齋藤伊織にはできないので、時夫よろしく。
との事だ。
「いや、俺関係ないなら元の世界に返してくれ」
「何故?魔法の無い世界から魔法のある世界に来ると、大体の人間は喜ぶのに」
アルマは不思議そうだ。
悪いと言いつつも、自分は許されるべきと思ってそうなのが頭にくるな。
しかし、見た目も体もルミィのもので、割と年下の女性にアラサーの男が本気で怒るのは対外的にどうなんだろうと思ってしまい、結局怒りは何とか自分の中で鎮める。
「生活魔法は便利だけど、便利家電の方が今のところもっと便利なんだよなー。魔法もガンガン使えれば楽しいんだろうけど、使い方わからないし、使うと意外と疲れて楽じゃ無いんだよ」
アルマは唇を尖らせつつ、不思議そうな瞳で時夫を見ていたが、急に何かを思いついたように、手をポンと打った。
「なるほど!魔法の才能も付与したはずなのにと思ったけど、それはきっと齋藤伊織の方に行ってしまったのね!
よし!では時田時夫、本当はこういうことはしないけど、改めてそなたに魔法の才能を付与してあげましょう」
「え?本当に?」
時夫はそれを聞いてワクワクが押さえられない。神から授けられるチート能力に心踊らぬ男がいようか。
「よし、目を瞑りなさい」
時夫は目を瞑った。
「少し屈んで」
屈んだ。……ちゅーとかされちゃう訳じゃ無いよな?いや、それがどうしても必要不可欠なら仕方ない事だが、しかし、ルミィの体なのに勝手にそんな……。
ばちん!「いってぇ!」
「コイツ!デコピンやり返しやがったな!何をする!」
「さあ、魔法の知識も入れておいてあげたわ。何かやってみなさい!」
え、本当に……おお、確かに何故かわかる。え、何でわかるのかわかんなくて気持ち悪い。
まあ、そのうち気にならなくなるだろ。
よし!
「あ、待ちなさい!」
時夫は良いタイミングで言われてズッコける。
「何だよ」
「念のため、開けた場所でやりましょう」
そして、少し歩いたところの草原にやって来た。
何にするかな……よし、ここは
『ファイヤボール!』
広げた手のひらに炎の熱さを一瞬感じた後、燃え盛る炎が正面に飛んでいった。
「おお!俺強いんじゃ無いか?夢が広がるな!」
ちょっと年甲斐もなくはしゃいでしまう。やはり男児たるもの最強を目指したい気持ちは心のどこかに常にあるのだ。
アルマも満足げにうんうんと頷いている。
「まあ、そんなところね。生活の不便さで困ってるみたいだったから、生活魔法に力をなるべく振っておいてあげたから。
多分あなたはこの世界随一の生活魔法の使い手よ」
時夫の夢が急速に萎んでいった。
時夫は世界一の主夫になった。
「ん?何か?」
ルミィは不思議そうな眼をしている。
ばちん!
「いたあ!」
良い音がなった。デコピンの精度が高まってるな。
これが神のご加護なのか?それとも魔法の力?とにかくこれからも精進せねば。
「な、な、お、おでこが……。あれ?私はいったい……?」
眼をパチクリしている。いつの間にか瞳が青灰色に戻っている。
いつものルミィに戻ったと言うことになってるとかいう設定だろうな。
「変なこと言うからだ。流石におっさんが聖女は無い」
「おっさん聖女?」
ルミィが小首を傾げた。
「おっさん聖女!?おっさんなんですか!?ええ!そんなお年で!いらっしゃる!?」
ルミィはびっくり仰天!といった風に両手を広げて眼を見開いて大袈裟に驚く。なんかムカつくな。
「おうよ。またデコピンされたいか?」
ルミィはおでこを手で押さえながら首をブンブン振った。
「でも、なんで突然怒ってるんですか!」
「なんか宗教行事の一環だったら悪いが、さっきのイタコ芸……えーっと、自分はアルマだーって言ってたのは何だ?」
ルミィはおでこを守りつつ、また小首を傾げた。
「何ですか?私そんな事言うはずないですよ!神を自称するのは不遜です!」
ルミィの目を見る。ルミィも時夫を見つめ返してくる。
うーん……嘘はついて無さそうな気がする。
「ちょっと試しに、またそこで祈ってみてくれ」
「えー?何ですか?参考にしたいんですか?良いですけど?」
むすくれた文句ありげな顔と声にしては普通に言う事を聞いてくれた。
跪いて祈りを捧げるその姿はなかなか堂に入っている。子供の頃から神殿にいると言っていたか……。なんかコイツも色々事情とかあるのかも知れないな。
そして、先ほどの光景が再現された。
ルミィの体が光り輝き始める。
そして、
「時田時夫、話の途中で変な事をしないでちゃんと最後まで聞きなさい!」
ルミィの目が再び金色になった。
ルミィ……いや、アルマがぷんぷんと怒っている。
そして、アルマの話を要約すると、
神が長時間直接的にこの世界に介入するのが難しい為に、聖女システムがあるらしい。
システムを作ったのは別の神。
アルマは現在の担当者。
アルマがこの世界で何か直接したい時は、ルミィの体を借りるしか無い。
女子高生、齋藤伊織は他の世界の中でシステム上都合が良い存在だったので、持ってくるつもりが、近くにいた時夫も来てしまった。
時夫を巻き込んでいるのに気がつくのが遅れたせいで、時夫の方に力を付与してしまった。
なので、この世界を浄化するのは齋藤伊織にはできないので、時夫よろしく。
との事だ。
「いや、俺関係ないなら元の世界に返してくれ」
「何故?魔法の無い世界から魔法のある世界に来ると、大体の人間は喜ぶのに」
アルマは不思議そうだ。
悪いと言いつつも、自分は許されるべきと思ってそうなのが頭にくるな。
しかし、見た目も体もルミィのもので、割と年下の女性にアラサーの男が本気で怒るのは対外的にどうなんだろうと思ってしまい、結局怒りは何とか自分の中で鎮める。
「生活魔法は便利だけど、便利家電の方が今のところもっと便利なんだよなー。魔法もガンガン使えれば楽しいんだろうけど、使い方わからないし、使うと意外と疲れて楽じゃ無いんだよ」
アルマは唇を尖らせつつ、不思議そうな瞳で時夫を見ていたが、急に何かを思いついたように、手をポンと打った。
「なるほど!魔法の才能も付与したはずなのにと思ったけど、それはきっと齋藤伊織の方に行ってしまったのね!
よし!では時田時夫、本当はこういうことはしないけど、改めてそなたに魔法の才能を付与してあげましょう」
「え?本当に?」
時夫はそれを聞いてワクワクが押さえられない。神から授けられるチート能力に心踊らぬ男がいようか。
「よし、目を瞑りなさい」
時夫は目を瞑った。
「少し屈んで」
屈んだ。……ちゅーとかされちゃう訳じゃ無いよな?いや、それがどうしても必要不可欠なら仕方ない事だが、しかし、ルミィの体なのに勝手にそんな……。
ばちん!「いってぇ!」
「コイツ!デコピンやり返しやがったな!何をする!」
「さあ、魔法の知識も入れておいてあげたわ。何かやってみなさい!」
え、本当に……おお、確かに何故かわかる。え、何でわかるのかわかんなくて気持ち悪い。
まあ、そのうち気にならなくなるだろ。
よし!
「あ、待ちなさい!」
時夫は良いタイミングで言われてズッコける。
「何だよ」
「念のため、開けた場所でやりましょう」
そして、少し歩いたところの草原にやって来た。
何にするかな……よし、ここは
『ファイヤボール!』
広げた手のひらに炎の熱さを一瞬感じた後、燃え盛る炎が正面に飛んでいった。
「おお!俺強いんじゃ無いか?夢が広がるな!」
ちょっと年甲斐もなくはしゃいでしまう。やはり男児たるもの最強を目指したい気持ちは心のどこかに常にあるのだ。
アルマも満足げにうんうんと頷いている。
「まあ、そんなところね。生活の不便さで困ってるみたいだったから、生活魔法に力をなるべく振っておいてあげたから。
多分あなたはこの世界随一の生活魔法の使い手よ」
時夫の夢が急速に萎んでいった。
時夫は世界一の主夫になった。
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