おっさん聖女!目指せ夢のスローライフ〜聖女召喚のミスで一緒に来たおっさんが更なるミスで本当の聖女になってしまった

ありあんと

文字の大きさ
上 下
5 / 129
異世界に呼ばれた聖女

第4話 神より授けられしチート能力

しおりを挟む
 時夫は無言でルミィのオデコに手を近づけた。

「ん?何か?」

 ルミィは不思議そうな眼をしている。

 ばちん!
 
「いたあ!」

 良い音がなった。デコピンの精度が高まってるな。
 これが神のご加護なのか?それとも魔法の力?とにかくこれからも精進せねば。

「な、な、お、おでこが……。あれ?私はいったい……?」

 眼をパチクリしている。いつの間にか瞳が青灰色に戻っている。
 いつものルミィに戻ったと言うことになってるとかいう設定だろうな。

「変なこと言うからだ。流石におっさんが聖女は無い」

「おっさん聖女?」
 
 ルミィが小首を傾げた。

「おっさん聖女!?おっさんなんですか!?ええ!そんなお年で!いらっしゃる!?」

ルミィはびっくり仰天!といった風に両手を広げて眼を見開いて大袈裟に驚く。なんかムカつくな。

「おうよ。またデコピンされたいか?」

 ルミィはおでこを手で押さえながら首をブンブン振った。

「でも、なんで突然怒ってるんですか!」

「なんか宗教行事の一環だったら悪いが、さっきのイタコ芸……えーっと、自分はアルマだーって言ってたのは何だ?」

 ルミィはおでこを守りつつ、また小首を傾げた。

「何ですか?私そんな事言うはずないですよ!神を自称するのは不遜です!」

 ルミィの目を見る。ルミィも時夫を見つめ返してくる。
 うーん……嘘はついて無さそうな気がする。

「ちょっと試しに、またそこで祈ってみてくれ」

「えー?何ですか?参考にしたいんですか?良いですけど?」

 むすくれた文句ありげな顔と声にしては普通に言う事を聞いてくれた。
 跪いて祈りを捧げるその姿はなかなか堂に入っている。子供の頃から神殿にいると言っていたか……。なんかコイツも色々事情とかあるのかも知れないな。

 そして、先ほどの光景が再現された。
 ルミィの体が光り輝き始める。
 そして、

「時田時夫、話の途中で変な事をしないでちゃんと最後まで聞きなさい!」

 ルミィの目が再び金色になった。
 ルミィ……いや、アルマがぷんぷんと怒っている。

 そして、アルマの話を要約すると、
 神が長時間直接的にこの世界に介入するのが難しい為に、聖女システムがあるらしい。
 システムを作ったのは別の神。
 アルマは現在の担当者。
 アルマがこの世界で何か直接したい時は、ルミィの体を借りるしか無い。
 女子高生、齋藤伊織は他の世界の中でシステム上都合が良い存在だったので、持ってくるつもりが、近くにいた時夫も来てしまった。
 時夫を巻き込んでいるのに気がつくのが遅れたせいで、時夫の方に力を付与してしまった。
 なので、この世界を浄化するのは齋藤伊織にはできないので、時夫よろしく。
 との事だ。

「いや、俺関係ないなら元の世界に返してくれ」

「何故?魔法の無い世界から魔法のある世界に来ると、大体の人間は喜ぶのに」

 アルマは不思議そうだ。
 悪いと言いつつも、自分は許されるべきと思ってそうなのが頭にくるな。
 しかし、見た目も体もルミィのもので、割と年下の女性にアラサーの男が本気で怒るのは対外的にどうなんだろうと思ってしまい、結局怒りは何とか自分の中で鎮める。

「生活魔法は便利だけど、便利家電の方が今のところもっと便利なんだよなー。魔法もガンガン使えれば楽しいんだろうけど、使い方わからないし、使うと意外と疲れて楽じゃ無いんだよ」

 アルマは唇を尖らせつつ、不思議そうな瞳で時夫を見ていたが、急に何かを思いついたように、手をポンと打った。

「なるほど!魔法の才能も付与したはずなのにと思ったけど、それはきっと齋藤伊織の方に行ってしまったのね!
 よし!では時田時夫、本当はこういうことはしないけど、改めてそなたに魔法の才能を付与してあげましょう」

「え?本当に?」

 時夫はそれを聞いてワクワクが押さえられない。神から授けられるチート能力に心踊らぬ男がいようか。

「よし、目を瞑りなさい」

 時夫は目を瞑った。

「少し屈んで」

 屈んだ。……ちゅーとかされちゃう訳じゃ無いよな?いや、それがどうしても必要不可欠なら仕方ない事だが、しかし、ルミィの体なのに勝手にそんな……。

 ばちん!「いってぇ!」

「コイツ!デコピンやり返しやがったな!何をする!」

 「さあ、魔法の知識も入れておいてあげたわ。何かやってみなさい!」

 え、本当に……おお、確かに何故かわかる。え、何でわかるのかわかんなくて気持ち悪い。
 まあ、そのうち気にならなくなるだろ。
 よし!

「あ、待ちなさい!」

 時夫は良いタイミングで言われてズッコける。

「何だよ」

「念のため、開けた場所でやりましょう」

 そして、少し歩いたところの草原にやって来た。
 何にするかな……よし、ここは

『ファイヤボール!』

 広げた手のひらに炎の熱さを一瞬感じた後、燃え盛る炎が正面に飛んでいった。

「おお!俺強いんじゃ無いか?夢が広がるな!」
 
 ちょっと年甲斐もなくはしゃいでしまう。やはり男児たるもの最強を目指したい気持ちは心のどこかに常にあるのだ。
 アルマも満足げにうんうんと頷いている。

「まあ、そんなところね。生活の不便さで困ってるみたいだったから、生活魔法に力をなるべく振っておいてあげたから。
 多分あなたはこの世界随一の生活魔法の使い手よ」

 時夫の夢が急速に萎んでいった。
 時夫は世界一の主夫になった。

 

 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

処理中です...