縁起のいい友達がみょうちくりんな件について

大山 策也

文字の大きさ
上 下
2 / 3
縁起のいい友達がみょうちくりんな件について

第2話

しおりを挟む
「いやいや何で犬が喋ってんの!?!?え、なにこれ私もしかして幻覚見てる!?え、死ぬ!?!?嫌だー!!やっと高校生になったばっかりなのにー!!!!!泣。」

「とりあえず落ち着きなされ...それに犬が喋ってるだけだろう?」

「全然落ち着けないよ!?だって犬が喋ってるんだよ!?!?」

「そこまで驚くことか...?えーっと何だっけ...ほら最近人の子の間で流行ってる...そうだ!いせかい?てんせい?とやらよりかはまだ現実味ないか?だってあれ、いきなり意味分からない世界に行かされてとんでもない化け物達と戦ったりしないといけないんだろう...?それよりかはまだ犬が喋ってるだけの方が、あーそんなこともあるかもなーってならないか?」

「いや、そこと比べたらそうかもしんないけど...でも普通犬は喋らないでしょうが!!」

「まぁ...わし一応神だしなぁ...」

「え、かみ...神!?え、神様なの!?ゴッド!?!?」

「うむ、一応ここの神社の御祭神をやらせてもらっておるぞ。といってもわし自身はそんな大したことはできないから、実質ただのもふもふで可愛いだけの存在だがの!」

「卑下してるのかと思ったら自己肯定感めちゃくちゃ高かったこの神様...」

「まさに、『神がかってる』だろう?」

「あ、そういうオヤジギャグ的なのは別にいいです」

「クゥン...え、冷たくない...?最近の若い子達はみんなこうなの...?」

「その発言もオヤジくさ...いや、私が変なのかも、ごめん......」

「急にどうした人の子...情緒の上がり下がりが山と谷のように凄いぞ...。もしかして何かあったのか?」

「あ、いやその...ちょっと、ね...」

「何だ何だ、悩みがあるのか?ならこのわしにいってみろ!」

「え、え?あの...」

「神だからの、人の子の悩みを聞くのには慣れておる!それにどうせやることもなくて暇だからなー、まぁ好きなように話すがいいさ。ほれ、とりあえずここにでも座るんじゃ!立って話すのは疲れるだろう?」

「う、うん...ありがとう...」

私が急に落ち込んだことに気付いた目の前の犬の神様はそう答え、前足で自分が座っている近くをポンポンと叩いてきた。隣に座って話せということだろう。
私は戸惑いながらも断りきれず、一応感謝を伝えながら促されるままに隣に座った。
座ったところは石で出来ている為、ひんやりとしていて気持ちよく、少し荒れていた心が落ち着いていくような気がしてくる。そのまま少しだけ深呼吸して、ゆっくりと悩みを話し出した。
私が所々話を詰まらせていても、犬の神様は怪訝な顔を一つもせずに隣で真剣に聞いてくれていた。

「ふむ...なるほどな。新しいところに来てこれからの生活や、友達ができるかどうか分からなくて不安だと」

「そう...私はみんなと違って不器用だし、コミュ障...えっと、話すことも苦手だからこれから先一人になっちゃって、駄目な人間になっちゃうんじゃないかって...はは、私にとってはある意味異世界転生とおんなじかも。いきなり知らない世界で立ち向かわないといけないし...」

「まぁ何事も始めは不安よな、先に何が起こるのか分からないしのぉ...」

「え、神様もそうなの?てっきり未来なんかすぐ分かって、何でも出来るのかなーと...」

「そんな訳ないだろう!未来が視える神なんてほんの数神しかおらん。しかもわし、神の中じゃだいぶ位低くて弱いのだ...人間でいうと何だったか...あー...さらりーまん?とから辺?ぐらいか...?」

「え、マジで...?知りたくなかった神様の階級事情...。じゃあ漫画とかゲームとかに出てく
る有名な神様の名前って...」

「会社の人間達で例えると...社長とか副社長なんかかの」

「やっぱそうなるんだ...何か神様の世界も世知辛いね...」

「根本的なところは神も人間もあんまり変わらん。何なら神の方が力や気が強いからの...下手したら消される...」

「消される!?え、それって...」

「文字通り存在を消されるんじゃ...まぁ端的に言うと殺されるな☆」

「絶対そんな明るく言う事じゃないよね!?」

「ははっ、でも無理にでも明るく過ごしてるほうがいいこともある。暗いのは気が滅入るし、何より怖い。でも明るくしていると誰か寄ってくるし、何より楽しい。そういうものだろ?」

「そうだけど...それが出来たらこうはなってないっていうか...」

「できるさ、すぐに全部変えようとしなくていい。ほんの少しだけでも意識を変えて、ほんの少しだけ行動してみるんじゃ。」

「たとえば...?」

「うーん、そうだなぁ...お主は今友達が欲しいんだろう?」

「ま、まぁ一応...?」

「だったらまず自分の好きなことをいってみなされ」

「え、えー...?なんだろ...あ、漫画とかアニメとかゲームとか...オタクといえば!みたいなやつは好きかな...?」

「どういったものを見たり、やったりしているのだ?」

「え、っと...漫画やアニメは最近の流行ってるやつとか、動物が出てくるのは結構見ている気がする...今はもふもふ!さんぽみちっ!っていうのにハマってるかな。もふもふの柴犬、しば太郎がお散歩している時に色んな出来事や生き物たちに会うんだけど、登場人物同士の絡みが面白いし、ほんわかしてて見てて癒やされるっていうか...!私はその中に出てくる黒柴のくろすけがツンツンしてるんだけど、根は優しくていざという時頼もしいから好きで推しててー、ゲームは育成バトル系とかRPGとか好きでやってる!苦戦しながらもコツコツ頑張って成長したときの達成感ヤバいし何よりストーリーが凝ってて!!あ、ごめんついオタクトークが...」

「大丈夫だぞ、寧ろお前さんが好きなものをちゃんと伝えられる人間で安心した!」

「...え、えぇ?そんなに大した事じゃなくない...?」

「いやいや、実は自分の気持ちを素直に伝えることって凄いことなのだぞ!本心を打ち明けることは勇気のいることだ。否定されたり拒絶される可能性だってない訳じゃない。それでもお主は自分の気持ちを伝えて、こちらに歩み寄ろうとしてくれた。だから、そこまで不安になりすぎなくてもいい、お主は自分が思っている以上に駄目な人間じゃないぞ。さっきのようにお主がきちんと自分の気持ちを伝えることができたら、きっと応えてくれる者はおるはずだ!」

「そ、そんな上手くいくかな...」

「まぁ駄目だったときはそん時はそん時だ!慰めてやる!」

「いや上げて落とさないでよ!?でもまぁ...ちょっと元気出たかも!ありがとう、私頑張ってみる...!すっごい不安だけど...!!」

「お、その意気だぞ人の子!」

「その人の子っていうのやめて。何かこう...おわぁ...ってなる」

「じゃあ何と言えばいいんだ。わしはお主の名前を知らんぞ...?」

「まってそうじゃん、私達お互い名乗らずにずっと話してたの...?」

「そういえばそうだな」

「はぁ...えっと、私は渡辺結凪。渡るって字に周辺の辺の字で渡辺。結ぶって字に波のない様子を表す凪っていう字で結凪。まぁ...なかなかこの字でゆいなって読める人いないんだけど...」

「ほう...わたなべ、ゆいな...よい名だな!わしの名前はアヤメだ」

「あやめ...ってたしか植物の?」

「おぁ、よく知っておるな」

「何となく名前だけ聞いたことがあって...」

「ほら、わしの目は菖蒲色だろう?」

「しょう、ぶ,,,?」

「青みがかった紫色のことを菖蒲の花に例えてそう呼んだのだ。ちなみにアヤメ色は赤みがかった紫色だぞ。」

「えっと...だったら名前しょうぶ?にならない...?」

「実は昔、ショウブもアヤメも区別がついておらんくての...同じ漢字が当てられていたのだ。だからその名残でアヤメと名乗っておる。あとアヤメの方が何か響きが可愛いからな!」

「そんな適当な感じなの...?まぁ響きかわいいのは認めるけど...」

「そうだろうそうだろう!」


「めちゃくちゃドヤ顔じゃん」

「む、別に神だから堂々としてていいだろう!?」

「それもそっか!」

そうやって一人と一匹...あ、いや神様だから一柱なんだっけ?で、静かな境内を賑やかにしていく

どこか懐かしい感覚だと思い、ポツリと呟く

「何か...友達、みたいだなぁ...」

「神に対して友達とは...意外と肝っ玉座ってるんだのぉ...」

「だ、だって!ここに来て初めてこんなに楽しく話したし、自己紹介もしたし...こういうこと友達なる時にしない!?」

「たしかにそうか...よし、結凪!今日からわしらは友達だ!!」

「いやいきなり変なこといったよね忘れ...って、えぇ!?いいの!?!?」

「いや言い出したのはそっちだろう...?」

「そうだけど...!!急だし!!それに...本当にいいの...?神様と人間だよ...?」

「いいぞ!わしも一回人間と友達になってみたかったしな~♪」

「え、そんな簡単になれていいんだ...。じゃ、じゃあ...よ、よろしく?」

「うむ!これからよろしく頼むぞ!!」

そういって手?足?を出されたのでキュッと握り返した。
あ、肉球めっちゃあったかくて柔らかい...。癖になりそう...。
そんなことを考えながら肉球をにぎにぎと堪能していると、ピロン♪とスカートのポケットからスマホの通知音がなった。
ぱぱっと取り出し開くと、母から『もう少ししたら帰る!』というメッセージと笑った犬のスタンプが送られていたので、適当に了解と書かれたスタンプを送り返す。

「あ、ごめんそろそろ帰らないと...」

「そ、それは何だ...!!」

犬の神様、もといアヤメにそのことを伝えようと顔を上げると目をキラキラとさせながら興奮した様子で自分が持っているスマホを覗き込んでいた

「え、あ、これ?これはね、スマホっていうの。これを持っていると遠く離れている人と簡単に文章のやり取りやお話ができたり、調べ物ができたりするの。まぁ他にも色々出来るんだけどね」

「これが噂のすまほなのか...!ほほう...こんな薄い板一枚で凄いことが...」

と食い入るようにしてスマホを凝視していた
神様にとっては物珍しいものなのかな?まぁ神様にしては新しいものになるのか...
いやちょっと待って、何でスマホは知らなくて異世界転生は分かるんだこの神様。そっちの方がそうそう聞き慣れないでしょ...
そうやってうんうんと一人でツッコミながら唸っているとある程度スマホを見終わったのか、慌てたように声をかけてくる

「あ、すまん!帰るんだったな」

「いいよ全然。話いっぱい聞いてくれたし、楽しかったから。えっと...今日はありがとう、その...もしよかったらまたここに来てもいい...?」

「あぁ、好きな時に何時でも来い!お前さんが来てくれる方が賑やかで楽しいからの!!」

「よかった...!じゃあまたね、えっと、アヤメ...?」

「おぉ!またな、結凪!」

そういってお互いの名前を言いながら、一人は手を、一柱は前足を振って、別れを告げながら少しずつ境内を去っていく。
まさか神様に話を聞いてもらって、友達になるだなんて誰が想像できただろうか
でもとても気分は軽やかで、今ならちょっとのことぐらい何とかなりそうな気さえしてくる
不安だったこれからをちょっとだけ期待して、ウキウキしながら家へと帰った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

error (男1:女2)声劇台本

あいすりぅ
キャラ文芸
〖 時間〗  10分程度 〖配役〗 •ウイルス:(女)年齢不詳。正体不明。14才ぐらいの幼い容姿。 •アキト:(男)16才。ヒカリの幼馴染。 •ヒカリ:(女)16才。アキトの幼馴染。 ーーーーーー 楽しく演じてくださったら嬉しいです。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

一人じゃないぼく達

あおい夜
キャラ文芸
ぼくの父親は黒い羽根が生えている烏天狗だ。 ぼくの父親は寂しがりやでとっても優しくてとっても美人な可愛い人?妖怪?神様?だ。 大きな山とその周辺がぼくの父親の縄張りで神様として崇められている。 父親の近くには誰も居ない。 参拝に来る人は居るが、他のモノは誰も居ない。 父親には家族の様に親しい者達も居たがある事があって、みんなを拒絶している。 ある事があって寂しがりやな父親は一人になった。 ぼくは人だったけどある事のせいで人では無くなってしまった。 ある事のせいでぼくの肉体年齢は十歳で止まってしまった。 ぼくを見る人達の目は気味の悪い化け物を見ている様にぼくを見る。 ぼくは人に拒絶されて一人ボッチだった。 ぼくがいつも通り一人で居るとその日、少し遠くの方まで散歩していた父親がぼくを見つけた。 その日、寂しがりやな父親が一人ボッチのぼくを拐っていってくれた。 ぼくはもう一人じゃない。 寂しがりやな父親にもぼくが居る。 ぼくは一人ボッチのぼくを家族にしてくれて温もりをくれた父親に恩返しする為、父親の家族みたいな者達と父親の仲を戻してあげようと思うんだ。 アヤカシ達の力や解釈はオリジナルですのでご了承下さい。

後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符

washusatomi
キャラ文芸
西域の女商人白蘭は、董王朝の皇太后の護符の行方を追う。皇帝に自分の有能さを認めさせ、後宮出入りの女商人として生きていくために――。 そして奮闘する白蘭は、無骨な禁軍将軍と心を通わせるようになり……。

おっ☆パラ

うらたきよひこ
キャラ文芸
こんなハーレム展開あり? これがおっさんパラダイスか!? 新米サラリーマンの佐藤一真がなぜかおじさんたちにモテまくる。大学教授やガテン系現場監督、エリートコンサル、老舗料理長、はたまた流浪のバーテンダーまで、個性派ぞろい。どこがそんなに“おじさん心”をくすぐるのか? その天賦の“モテ力”をご覧あれ!

AIアイドル活動日誌

ジャン・幸田
キャラ文芸
 AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!  そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

処理中です...