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無実の罪で投獄された令嬢

投獄された令嬢③

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キャサリンの腕をお湯から引き上げて体温を感じてみれば、程良い温もりを保っていてほっとする。

零は、己の腕の上に彼女の腕を乗せるとジッと見詰めた。

細い腕に己との違いを痛感する。

くたりと身体を弛緩させ、意識を無くしている彼女を見て零は目を細めた。

後は、彼女が目を覚ますだけなのだが、このまま今目覚められたらきっと彼女はパニックを起こす。

貴族令嬢にはこの状況は『あるまじき行為』だし、牢屋に人か居ること事態、彼女には信じられない事柄だからな。

そう言った事を、零は頭の中で考察する。

お湯の温もりに思わず嘆息が漏れる。

日本は温泉大国だから、それが懐かしい。

風呂も悪くは無いが、矢張り温泉が一番。

零はそう思考しつつ、湯の中から手を出した。

すると瞬く間に冷えていく手の先。

お湯の外が異様に寒い。


これでは上がった時、身体にブローの魔法を掛けても瞬く間に風邪をひかせてしまう。

零は平気でも、キャサリンは人間だ。

この石風呂の表面を焼いた炎のように、あからさまに火魔法を使う訳にも行くまいか……。

だとしたら、さて……。

零が彼女を抱き込み直し、出した手を湯船に付けると、ぽちゃんとお湯が跳ねた。

逸れを見て、思い出した。

日本には一昔前、爆発的に流行ったものが有ったじゃ無いか。

各ガス会社の主力商品、『ヌック』と『カワック』。

どちらも未だ使われている商品である。

その『ヌック』に零は目を付けた。

さて、そうと決まれば即実行である。

零は、己の得意とする錬金術でヌックの作成に取り掛かった。

まず、転移魔法でこの城のはがねを転移させる。

そして、ありったけとは言わないが、この城にある鉄製の武器をしこたま攫って転移させ、気を失っている彼女を抱えたまま、手をお湯から引き出してその武器に当てた。

フォルトゥナから貰ったこの身体は、作り込まれて神とさせられた特別な身体だ。

だから簡単に死なないし、暑さ寒さも感じない。

それが理由で、人間の彼女には人一倍気を使った。

出来れば彼女が目を覚ます前に、湯から出して乾かし、作成した暖房器具で暖めてやりたい。

こんな風に男と二人、いくら下着を身に付けているとはいえ、湯に浸かっている姿を見れば卒倒するのは目に見えている。

そう半ば思考の海に浸かりながら、零は術式を石の床に刻む事も無く、無詠唱で鉄の武器を、床を這う管に変化させた。

それは石風呂に繋がって、中に設置した循環器によって再度お湯を温めてはパイプを循環すると言う装置として完成された。

そして、この『ヌック』の上にストレージから出した分厚い絨毯を敷く。

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