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第2部:御披露目の前

ぬい、我が道を行く

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ルナティは、テクテクと何事も無かったようにナディアの元へと歩みを進めながら、ふと『有る事に気がついた』。

そう言えば、何故彼処で国守と出会う事になったのだろうか?

と。

あまり気にはしなかったのだが、いくつもの『神気』を感じたような気がする、と。

それは、ルナティの知らない者ばかりで、でも嫌な気配では無いと。

どちらかと言うと、此方の『神気』はあちらに知られている筈なのに、気にも止められていない。

悔しいが相手にされていない、そうはっきりと言い切れる扱いであると、ルナティは感じていた。

そうであれば、まぁ、此方も気にしないでおくに越したことは無いと、ルナティは高を括ってヒョコヒョコと廊下を歩いた。

そして、徐に気付いた所で冒頭のふと『有る事に気が付いた』と成ったのである。




「もしや、この神様達の気配って、薬師様の眷属の方々なのかなぁ? そうだったら、あれっ? 薬師様、来ちゃったっての? うにゅ? お披露目って明日じゃ無かったっけ? もしかして、今日、今夜? え? あれれっ? 僕、間違えちゃった? お披露目の日にち…… 」




ぞわり、背中に悪寒が走った。




「えっと……、」




あたふたと、慌てて薬師の神気を探り出すルナティは、戻ってきた己の力の一つ、千里眼意識の目で現在の己の主を探し廻った。




『はうううっ……、いたぁ……いたぁ……、いたよぉ……、来てたよぉ……。でも、何で薬師様、白龍にくりそつなの? あれは正に真っ黒な『白龍』だよぉ…… 』




そう千里眼で薬師を見つけ出したルナティは、黒龍と形容しても可笑しくは無い薬師を見て、疑問を頭に浮かべた。

と、考えあぐねても、ルナティのおつむは短絡思考で、薬師の思惑なぞてんで脳裏に浮かばない。

そんな中、ルナティはばっちり薬師と目が合った。

千里眼で見通すルナティの心の目を認めるとは、流石は薬師如来。




「ぎゃおおっ!! 」




驚いた拍子に、思わず背中の毛がぶわっと逆立つような気がした。

その身はフェルトで出来ているから、あくまでも『気がした』だけなのだが、ルナティは思わずその場を放棄して、尻餅を着きつつ目を開けた。

目の前は変わらず廊下である。




「や、薬師様と目があっちゃったぁ。そんな事も有るんだねぇ……。うん、まぁ、これで薬師様にはナディア様は無事だと解った筈だよね。うん、大丈夫。後はお迎えを待っばかり。あっ、そうだっ、ナディア様に1日勘違いしちゃった事ちゃんと言っておかなきゃ! そうと決まれば善は急げだねっ!! 」




そうルナティは何事でもポジティブに捉える癖を最大限に発動させてルンルンタッタとステップを踏んで歩き出したのであった。


何か、それで良いのか、ルナティ!?

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