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第2部:御披露目の前

さぁ、盛大に始めましょうか、宴を

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手当たり次第に気に入った女性達を攫っては、己の欲を満たす贄にする。

なまじ顔が良い分、コロリと騙される女も少なくは無い。

そんなクズが国守として優秀かと言えば、可もなく不可もなく至って普通なのである。

良いのは顔だけ。

それでも省が成り立つのは、偏に彼の婦人である三人の女性と、男の優秀な一人息子のお陰であった。

そんな彼等が客人を迎えもてなす宴において、その忙しさに迂闊にも色ぼけ国守の見張りを怠った。

そんな奴が行く所など一つしかない。

国守は鼻歌を歌いながら、妃達の居る後宮へと足を運んでいた。

そんな彼を、影からこっそりと伺っている集団が居ることに、国守は気付く事無く進んでゆく。


「あ~、本当に恥も外聞も無く後宮に入ろうとしているんだけど、あれ……。どうする? 」

「それはソレ。阻止しか無いでしょう? 」

「でも、普通に阻止したって楽しく無い…… 」

「留めは薬師様が刺したがるでしょうね、きっと…… 」

「では我等は、あ奴が死なない程度に相手をしてやろう」


まるで円陣でも組むように一丸となって話す面々は、最初に口火を切った因達羅、そして、安底羅、毘伽羅、珊底羅と続く。

最後に言葉にした昭頭羅は、ニヒルに口角を上げて笑って先程の言葉を吐き出した。

彼等は意外と残酷だ。

まるで猫がネズミを弄び、食べるための狩りではなく、嬲る為の狩りをするように、その様は楽しげだ。

それが彼等の性なのか、はたまた相手に合わせての行為なのか、感じる所は後者だ。

十二神将である彼等は国守のした事を知っている。

美しい娘を差し出さない親を、冤罪で処刑して手に入れた第三夫人。

婚姻を控えた新郎になる婚約者を事故死に見せ掛けて手に入れた第二夫人。

騙して家を没落させて、借金のかたに手に入れた第四夫人。

ありとあらゆる悪行を積み重ねて手に入れた、欲しかった女達。

祥啓と言う男は、何をしてでも欲しい物は手に入れる、そう言う男であった。

そんな男が治める省なのだから、傾き初めても可笑しくは無かった。

否、今まで反発が無かったのが奇跡なのだ。

けれど、彼は今までして来た悪事のツケを払わなければならなくなった。

いい加減にしておけばよかったものを。

彼は、祥啓はやり過ぎた。


これから、十二神将主催、薬師如来が主役の盛大な宴が始まる……。







「さて、始めますかぁ…… 」


誰からともなく掛けられた言葉に、パン、パン、パン、と、手を鳴らす音が聞こえる。

それに驚いた祥啓が音がした方向に顔を向けると、其処には見たことが無いような美しい女がゆっくりと手を叩いて居た。

祥啓は女に目が無い。

だからか、女に対して警戒心も非常に薄い。

瞬く間に、でれりと鼻の下を伸ばすのだ。

女に化けた安底羅が、


「鬼さん此方……、手の鳴る、方へ…… 」


と、宴開始の文言をゆっくりと口ずさんだとしても……。
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