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第二部:後宮

目覚めたら……

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ナディアが目覚めた時、目の前にはライオンのぬいが超アップで視界いっぱいに広がっていた。

一般的に人は驚くと悲鳴を上げると言われるが、それは嘘だと思う。

実際は、ひっ、と言う声しか出ない。

と、ナディアは思考する。

嫌、その思考すら肝が座っているとひよこは思うのだが、意外とナディアはその辺り気付いていないようである。


「あ……、ルナティちゃん…… 」


ぼやぼやとしたナディアの言葉にルナティが眉尻を下げたように思えたが、今の彼では有り得ない。

何せ彼はぬいだ。

表情なんて出る筈が無い。

それなのに、無い眉尻を下げたように見えるのは彼が生きて動いているせいなのか、そうナディアは不可思議に思う。

そして何故ルナティがそんな顔をするのか、彼女はそれすら皆目見当も付かないようであった。


『ナディア様がご無事で良かったですぅ~、目を覚まさないから、どうしたものかと思ってたんですぅ~』

そう涙をちょちょぎらせながら、ルナティは嘆きの声をあげた。

言葉と裏腹な心を抱えて。

ルナティは何が寂しかったのか。

それは、己が呼ばれた言葉。

ちゃん付けの他人行儀、それがやけに寂しかった。


── ルナティ、子供達をお願いね ──


そう言って、笑顔で出掛けて行ったナディアが恋しい。

他人行儀な目が寂しい。

ルナティとて、解ってはいるのだ。

けれど、気持ちがついて行けない歯がゆさに、彼は泣き笑いをナディアに向けた。

薬師様が、この目を向けられていなくて良かったと、思いながら。

ルナティは、ナディアに言った。


『ナディア様は、飛空挺から落ちてから、3日も眠ってたんですよ。その間にこの城も把握しておきましたし、俊傑とリーリアの捕らえられてる場所も、見つける事が出来ましたから、なるべく早く脱出しましょうね。ナディア様は、早く記憶を取り戻して帰らなくっちゃ、いけませんからっ! 』


その言葉に何か違和感を拭えないナディアは、気になる言葉もありはしたが、この場では何も言わず、コクンと頷くだけにしておいた。


「ルナティちゃんは、此処が何処なのか解っているの? 」


其処は広すぎず狭すぎない程度の部屋の中だ。

インテリアは白を基調とする女性向きの部屋である。

見た目は貴賓室に見えるのだが、そうでもないと言う違いが何かと言えば、窓に鉄格子がはまっていると言う事だろうか。

そんなこの場所は、まるで貴族用の牢屋のようであった。


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