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第二部:事の始まり

薬師と二匹の龍

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それらの話を香燕がつらりつらりと話して行く。

朝食を取りながらなのだが、香燕も浩宇も薬師の所作には驚かされている。

自分達の知る所作とは違うが、箸の持ち方、扱い、匙の扱いが、何処かの作法なのだろう。

二人が真似たいと思う使い方だ。

鮎など食べ方が難しいのに、魚の形を崩さずに頭と背骨をするりと引き抜いてしまうのだ。

香燕が思わず見惚れてたのか、報告の言葉が途切れた。


「どうしました? 香燕」

「いやぁ、なんか、どうやったらそんなに美しく魚が食べられるのかと。汁椀のひろうずなんか崩れずに綺麗に割ってらっしゃるし…… 」


そんな香燕の言葉に浩宇は頷き、薬師は一瞬ぎょっと目を見張った。

けれどそれも一瞬で、薬師はふと何かを思い出すように目を泳がせた。


「あぁこれは、古い友人が和食の作法にとても煩くて、そのおかげで身に付いたシロモノです。日本も箸の国ですからね、独自の作法が有るのです。あの国はわびさびの国ですから…… 」

「わびさび? 」

「私がいた世界に有る地球と言う惑星の日本と言う島国に伝わる美意識の事です。貧粗・不足の中に心の充足を見いだそうとする意識でして、閑寂の中に、奥深いものや豊かなものがおのずと感じられる美しさを言って、本来はわびさびは別の意味ですが、一つに纏められて言われるように成りましたね」


薬師がそう言っても、浩宇は首を捻る。

そりゃあそうだろう。

問い掛けた浩宇に日本のわびさびを言っても、ピンと来る筈が無い。

ましてや、まだ体験すらしてはいないのだ、日本と言っても、異界の話などあまり聞かない彼等に、体験する機会など無い。

薬師は己がやって来た世界の事と、ナディアと凪の関係と、凪の父親の晴明の事を超簡潔に話して完結させた。

その行動に香燕はぶーたれたが、深くは突っ込まずにおいた。

そうでもしなければ、後が怖い、そう感じたからだ。


「そうぶすっとしないで下さい。食べ方を勉強したいのでしたら、全て終わった時にナディアに頼んであげましょう。あれは凪の記憶を鮮明に覚えて居ますし、実は私より厳しい教師になれますよ。晴明の娘ですから…… 」


そう言ってふわっと笑った。

思わず香燕は首を左右に振った。


「何か、面倒掛けそうだからいいやっ! うん、…… 」


そう言う彼女の顔は少し青かった。



────────────────────

明けましておめでとう御座います!

ひよこで御座います!

今年も私と薬師達を宜しくお願い致します!

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