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第二部:事の始まり
神殿での暴挙
しおりを挟む朱雀達が語った話はこうだった。
事は全員が揃って暫くしてからであった。
賊は、此処で集まりがある情報を何処からか手にしていて、女ばかりの神殿に押し入って来た。
普通なら有り得ない事が、有る意味、この神殿だから起きてしまったとでも言おうか。
四獣神の中でも、人と最も繋がりが深い朱雀の神殿は、首都王城の敷地内にあった。
今回は、その立地条件が仇となった。
その日、朱雀の守護するルイボス王国は、現代で言えば、建国記念日とも言えるお祭りの前日祭だった。
その日は、街に常駐する警邏隊だけでは人手が足りず、王城警備兵や近衛兵らまでが駆り出される始末であった。
だから自ずと神殿の警護も手薄と成っていた。
それが仇と成ったのだ。
朱雀、青龍、玄武の揃うテーブルの上に、実はちょんと乗せられた緑の鬣と黄色い身体のぬいぐるみなる物体。
ナディアの連れてきた白虎は、女達の格好の玩具と成り果てていた。
テーブルの中心にナディアに置かれた途端に、右から来た手に掴まれなでくり回され、左から伸びた手に掴まれこねくり回される。
『うう~お願いだから、二人共やめてぇ~』
と、情け無い悲鳴を上げる。
白虎の威厳など、皆無に近い。
こんな和んだ状況下の中の暴挙と言えた神殿への攻撃は、誰でも良かったらしい賊共には、後に後悔する事になるとは思いもしなかった。
戦利品は、暗紅色の髪と天色の瞳を持つ品の良い女性と三十センチ大のぬいぐるみ。
それが後に嫌、正確にはその誘拐の後に、地獄を見る羽目になるとは、彼等も思いもしなかったであろう。
薬師は、しっかりと実行犯にも制裁を加える。
何せ、彼は神様、如来様だから。
悪い事には手厳しい。
「馬鹿だねぇ、お前達。地獄に落ちるか? どの地獄かは、お前達次第だがな…… 」
そう言わせる程には、薬師は、手厳しかった。
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