無実の罪で断罪される私を救ってくれたのは番だと言う異世界の神様でした

epilogue

妖精の花園②

　くるくる、くるくる。

　花々の間を飛んだり跳ねたり。

　それがなんだか危なっかしくて、アイセンレイトがオロオロして一歩足を踏み出した時、妖精がふっと姿を消した。

　それと同じくしてドスンと言う音がして、慌てて少女のいた所に駆けつけた。

　泣きそうな、でもぐっと我慢の子のように泣かない少女の泣きそうな声を聞いて、アイセンレイトはつい声を掛けてしまった。


　「どうした……、っつ、あぁ、怪我をしたんだね…… 」


　ひと目見て、気付いてしまった。


　── あぁ、この子が僕の唯一無二だ ──


　と。

　焦げ茶の髪に、海の底を思わすような青い瞳。

　残念ながら容姿は平凡な女の子であったが、彼に取っては魅力的な容姿に見えた。

　『あばたもえくぼ』と言うよりかは、番のなせる技と言うべきだった。

　ぼぅっと見ている場合では無い。

　大事な番が怪我をしている。

　アイセンレイトは慌てたせいか、ぶっきらぼうに女の子に接してしまった。


　「ほら、口あけて」


　女の子が、ぽおぉっとしながらパコンと口を開ける。

　アイセンレイトはぶっきらぼうにしてしまった自分の態度を誤魔化すように微笑んだ。

　印象が悪いのは絶対嫌だった。

　そして、女の子の口の中に自作の万能薬を放り込む。

　それは父直伝の万能薬だったから、擦り傷なんてあっと言う間だった。

　すると、女の子の瞳からは涙が消え失せて見る見る間に笑顔が花咲いた。

　とても綺麗な笑顔に、アイセンレイトは目を奪われる。

　女の子は満面の笑顔を称えて言った。


　「ん～～っ、あま～い。こんぺいとうだぁ」


　頬に手を添えてアイセンレイトを仰ぎ見る女の子の何と可愛い事か。

　アイセンレイトは番に当てられながらも、大事な注意事項を女の子に言い聞かせた。


　「コレはお薬だから沢山食べられないんだ。ごめんね。ほら膝小僧治ったね」


　優しく頭を撫でる事で彼女に触れる事に成功する。

　何だか至福だった。

　このすぐ後に、絶望のどん底に叩き落とされる事も知らないままで、アイセンレイトは嬉しく成っていた。