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神獣朱雀『エレオノラ』
いにしえの朱雀
しおりを挟む「おんしも我と似た存在なのかの? 」
腕と足と肋骨を折られた少女は、背中で上へと這い上がり身体を起こそうとする。
其処へ薬師が「あまり無理をしないよう」と声を掛けた。
そして少女の問い掛けに答えてやる為、口を開いた。
「いいえ、二重人格でも多重人格でも無いですよ。ただ単純に本音と建前を完全に使い分けてたらこうなっただけです」
「あはははは、本音と建前か、おんし、面白い男よのう…… 。まぁ、あの子に変わって我から礼を言おう。ありがとう」
朱雀の言葉に薬師がにこりと笑う。
「礼には及びませんよ。私は、この世界を造りし者に助けを求められただけですから」
「ほぅ、おんしからはかの君と同じ気配がすると思うとったが、成る程。そう言う事なのじゃな」
と、彼女はふむふむと頷きながら何かを納得していた。
「さて、我はまた眠るとするかのぅ。あまり長くは出ておれぬ故。我が眠ったら思う存分いちゃつくが良いぞ。おんしも難しい立場とみた故、なかなか本音も出せんのであろう? 」
そう言って朱雀はくつくつと笑った。
薬師は、
「はぁ…… 」
と、息を付くばかりである。
見た目は可憐な少女だが、どうやらコレ、先代の朱雀のようだった。
「眠ると言うのは? 」
今度は薬師が朱雀に質問した。
それに朱雀がふっと笑みを崩した。
「なぁに、ちょっと眠るだけじゃ。我もこの子がもうちっと朱雀らしくならねばおちおち寝てもいられぬからのぅ」
と、返答になるのだろうか?
らしき言葉を発した。
「しばしこの幼体を頼む。後、青龍と玄武も頼めんじゃろか? 我の親しい友人なものでのう」
と、伺うようにおずおずと問い掛ける姿は、まるで幼い子供のようで可愛いなと思わなくも無い。
「もとよりそのつもりですから、ご心配無く。それに朱雀の幼体の方も、看病すると言っている男が居ますので御安心を」
「そうか、そうか。あの青年じゃな。そなたと同じ位の力が有ったと思うたが、はて? 今は違うのぉ? 」
古の朱雀は、随分聡いようで、
「ふふっ、似たような者が二人も居ればその影響でこの世界が滅んで仕舞いますので、力を最小限まで封じました。貴女とこの国の民を護る程度の力は温存させて居ますよ」
薬師がそう言うと、にっこりと笑う事で満足感を表現した。
「あいや、おんしは、恐ろしい男よのぅ」
そう言って、カンラカンラと笑う朱雀もなかなかのモノですよねぇと、薬師は思ったが口にはしない。
ただ、にっこりと笑うだけに留めたのだった。
「あのぅ、薬師様。この小さなレディはどなたでしょう? 」
此処で漸くナディアが着替えを終わらせて、出て来た。
「あぁ、ナディア。彼女は朱雀の幼体ですよ。表に出ている意識は古の朱雀ですけど」
ナディアに対しては声音が優しい薬師に、古の朱雀は、目を丸くしたが、これもまた豪快に笑い飛ばした。
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お知らせ
『フォルトゥナの御使い~悪役令嬢を救う為ヒロインをザマァします~ 』
と言うお話を書いています。
見に来て頂ければ大変喜びます。
案内を載せておきますので興味を持っていただけたら幸いです。
『運命の女神フォルトゥナ』の御使いは、この世の者とは思えない神の造りし造形と呼ばれる美しい青年であった。
魂の美しさに比例して、魂が輝く度に美しさを増す彼。
だがその心は、それに反して冷たく凍り付いて行く。
女神に請われるまま、漆黒の衣装を身に纏い、顔の半分と半身を異形の仮面と変化で隠し、己の身体よりも巨大な大鎌を振り抜く彼の姿は、『死神』そのものだった。
そんな彼の初めての仕事は、『ヒロイン』と呼ばれる少女に無惨に惨殺される悲しい『悪役令嬢』の、その悲惨なループを断ち切る事。
彼は、『悪役令嬢』こと、キャサリン=レイアース伯爵令嬢を護る事が出来るのか。
心優しき『悪役令嬢』と、御使いと言う名の『死神』との、心の交流と愛情の行方を描くダークファンタジー此処に開幕!
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