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長い1日の始まり

良くある話って奴ですね

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    「あ、貴方いったい何なのよ! 」


   流石男爵令嬢、言葉遣いや立ち振る舞いがどうも最悪なってない

   こんな女の何処が良かったのか、リックス皇太子よ。

   ナディア侯爵令嬢の方が、数倍も淑女だと思うが。


   薬師は、男爵令嬢のけんもほろろな第一声に、眉根を寄せた。


   まぁ、どこぞの馬の骨かと問われると、『異界の神』だとしか言えないのだけれども………… 。


と、月光にしか聞こえないようにうそぶく。

   
   「断罪を受ける者が、我の存在をいぶかしむか? 」

   「はあぁっ!? 断罪ですって!? そんなの有り得ないわよ!  私は、ヒロインなんですからね! それに、あんた何者よ! モブのくせに、うううん、あんたの存在なんて、小説ほんの中には、なかったんだからね、っとに何なのよ! 悪役令嬢は、死なないし! 何か変な邪魔は入るし、ちょっと リックス、ぼやんとしてないで、貴方も何とか言いなさいよっっ!!  」


   ふ~ん小説ほんねぇ。
   
   なんとな~く背景が解った。


   薬師がそう考えていると、月光が隣から耳打ちして来た。


   「これ、前回、人界で生活してた時、凪様が愛読していた小説の世界にすっごく、酷似してるんですけど………… 」

   「あ、お前も気付いた? 凪に無理矢理読まされたクチだろう?  」

   「は~い、そうで~す。オススメって言われて押し付けられましたっ! ナディア=シルベスタ侯爵令嬢に、リックス皇太子、んでもって、アレ、エアリアル男爵令嬢、またの名を『聖女エアリアル』ってとこですねぇ…… 」

   「お前、良く覚えてるなぁ、そんな事。俺、速攻で挫折したけど…… (くだらなすぎて)」 


   薬師が、『薬師』の仮面を落として、『櫂』と化している。

   思わず肩を落とす薬師に、月光が追い討ちを掛けた。


    「くだらなく無いっすよ。あれ、後半から面白くなってきて、意外とハマっちゃって ………… 。気付いたら、全巻制覇してました。秋月  八千代の『聖獣ルナティシリーズ』」


   逸れを聞いて、もう一度、深い溜め息を吐く薬師。

   意外とミーハーなんだなと、月光の歳若さを再確認してしまった。


  

    薬師は、その特性上、度々、己の世界にある人界に降りていた。

   光の特性のみを持つ薬師は、人界に降りる際に己の魂の一部から自分のサポートをさせる為に人型の式神を親友の元陰陽師に造らせた。

   薬師が人に権現するには、彼が内包する光は強すぎたのだ。

   其処で闇を纏った女神を造らせ、彼女と番となる事で、彼は、人界に留まれるようになったのだが、詳しい事は、また、別の機会に話す事にしよう。



 
   さて、話を戻すとしよう。

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