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きさらぎ駅
⑥
しおりを挟む驚くのも当たり前か。
庇われた女から見て、正面の男は、他の2人が霞んでしまう程、美麗な顔をしていた。
背丈は、高身長とまではいかないが、それなりには高い。
紅を引かなくても赤い唇は、薄く引き結んでいて、目は切れ長の二重。
顔のパーヅは綺麗に整っていて、それらは見事に左右対象に並んでいた。
思わず、ぼんやりと眺めて。
女は、気付いた。
そんな美麗な彼に、唯一、不釣り合いなモノを見付けてしまったのだ。
それは、
赤い唇の端で咥えている、煙草。
女は、それにはてんで詳しく無いから銘柄は解らないが、煙草には火がついていて、く揺れているから『只の格好付け』と、言う訳では無く、本気で吸っているように見えた。
そう、
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そんな彼の視線が、自分に集中している。
女は、漸くその事に気付いて思わず顔を赤らめた。
理由は不躾に彼をじっと見詰めていた為だ。
男が、徐に咥えていた煙草を取り、携帯灰皿に煙草ごと押し込んだ。
絶妙なタイミングで現れた灰皿は、抱えられた女の掌の上に、ちょこんと乗っかっていて、これまた絶妙な動きで、彼のコートのポケットに仕舞われた。
この2人、一体、何なんだろう。
関係が解らない。
首を傾げる女に、男が話し掛けて来た。
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掛けられた声音は至極甘く、柔らかい。
高すぎず、低すぎず、耳に心地よい声音だった。
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