私の番は薬師という名の如来様でした

黄色いひよこ

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きさらぎ駅

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驚くのも当たり前か。

庇われた女から見て、正面の男は、他の2人が霞んでしまう程、美麗な顔をしていた。

背丈は、高身長とまではいかないが、それなりには高い。

紅を引かなくても赤い唇は、薄く引き結んでいて、目は切れ長の二重。

顔のパーヅは綺麗に整っていて、それらは見事に左右対象に並んでいた。

思わず、ぼんやりと眺めて。


女は、気付いた。

そんな美麗な彼に、唯一、不釣り合いなモノを見付けてしまったのだ。

それは、

赤い唇の端で咥えている、煙草。

女は、それにはてんで詳しく無いから銘柄は解らないが、煙草には火がついていて、く揺れているから『只の格好付け』と、言う訳では無く、本気で吸っているように見えた。

そう、

あの戦闘中にも、彼は煙草を吸っていたと、言う事になる。


そんな彼の視線が、自分に集中している。

女は、漸くその事に気付いて思わず顔を赤らめた。

理由は不躾に彼をじっと見詰めていた為だ。

男が、徐に咥えていた煙草を取り、携帯灰皿に煙草ごと押し込んだ。

絶妙なタイミングで現れた灰皿は、抱えられた女の掌の上に、ちょこんと乗っかっていて、これまた絶妙な動きで、彼のコートのポケットに仕舞われた。

この2人、一体、何なんだろう。

関係が解らない。

首を傾げる女に、男が話し掛けて来た。


「どうやら、家の馬鹿共が貴女にご迷惑をお掛けしたみたいですね。お怪我は有りませんでしたか? 」


掛けられた声音は至極甘く、柔らかい。

高すぎず、低すぎず、耳に心地よい声音だった。


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