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きさらぎ駅
①
しおりを挟む女は、はたと目を覚ました。
連日連夜の残業続きで、体力は限界に来ていた。
だから、帰りの電車の中でうつらうつらと寝てしまったのは、不可抗力だった。
シンッ………… 。
っと、静まり返る車内。
終電前の車内は、意外と人がごった返して朝のラッシュ時のように賑やかな筈なのに、何故だか人っ子一人居なくなっている。
今はどの辺りなのかと首を巡らし外を見ると、見知った景色が目に飛び込んだ。
さほど、眠っては居なかったようだ。
景色は、乗り込んだ駅からニ駅分しか離れて居ない場所を頭に描き出した。
時刻は、十二時前。
乗り込んだ時刻から鑑みて、時間に差違は無い。
ならば、この静けさは何だ。
人っ子独り居ないとは、異様では無いか?
女はそう考えて首を捻った。
そして、ふと思い出す。
何の話だったか、ふと頭によぎったのはインターネットの2チャンネルで、今流行りの都市伝説。
きさらぎ駅だったか。
それを思い出す程の似通った現象が、今、自分の身に起きている。
この車内には人っ子一人居ない。
終電前と言うのに、人っ子一人居ないなんて、
あ・り・え・な・い。
だから────。
ガラッと車両と車両を繋ぐドアが開いた事に、女は大層驚いたのだった。
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