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婚約して6年が達ちました

朔夜と月読③

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「で、今回はどの位滞在するんだ? 」


朔夜が月読に問い掛ける。


「そんなに長くは居ないつもり。学会に参加する為に来日しただけだからね。たまたまメンテするかと思って学会のついで●●●に来ただけだったのになぁ。本当に腕壊してたと思わなかったよ。あんま無理すんなよ? 」


月読が眉を寄せて言った。

彼は、粛正者でも、陰陽師でも無い。

そんな力は、母親の腹の中に居た時に、総て朔夜に吸い取られた。

月読に残ったのは、必ず当たる悪い予感と少しだけ未来を見れる事と、頭の良さだった。

脳の活性力は、常人の倍近い。

だからきっと、歳を取るのは朔夜より早い事を彼は既に気が付いていた。

勿論、朔夜は知る由も無い。



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腕を直した一行が廊下に出た頃には、日が傾き空をオレンジに染め上げていた。


「ゆず~っ、俺、今日お前ん家寄って帰るから晩飯よろ」

「あ? お前、たかる気か? 」


隆弘の言葉に朔夜は首を巡らせて振り返って言い放った。


「うっわ~、人聞きの悪い、人形のメンテナンス忘れてた? 約束してたよね? ね? 」

「あ……、そうだったっけ? 」


「ゆずひど~い」と喚く隆弘を横目に朔夜は隣に立つサクラを見やった。

2人は久しぶりに出会ったと言うのに、ついついお互いに見つめ合ってしまうのは必然なのか。

長い廊下を手を繋いで歩く2人を、月読は目を細めて見ていた。


「ね、つくちゃん。あの2人が『紋章』持ちなら良いよね。睦月さんや葉月さんのように成って欲しく無いなぁって思うんだよね、俺」

「そうだな。あれが選んだ女だ。どうなったとしても、彼奴は後悔しないと思うよ。どのみち『紋章』なんて親父達以来出ていないからなぁ…… 」


其処まで言って月読は言葉を切った。

双子に産まれて姿はこんなにも似ているのに、兄の運命の半分も肩替わり出来ない自分に、いつもながらに月読はぎゅっと手を握り拳にして力を入れた。

悔しかった。


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