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婚約して6年が達ちました
朔夜の右腕
しおりを挟む当たり前だ。
良く考えてみよう。
朔夜は、普通科の生徒が着る制服を着ている。
大学生なら私服の筈で、勿論この学園にもエスカレーター式の大学が有るが皆、私服なのだ。
因みに、由衣には兄もいて、その兄はこの学園の大学生である(補足説明)。
「ねぇ、姿を変えるのは何故? 」
そう問い掛けたのはサクラだ。
勿論、単純な疑問で他に意味は無い。
「1つは日常生活において無駄に目立つから。もう1つは、『扇』と『柚木』の区別を付ける為。サクラ、この姿は嫌か? 」
「ヘ? 何故? 」
本当に疑問に思ったサクラは軽く首を捻り、朔夜はバツの悪い顔をする。
髪の色と瞳の色を変えただけなのに寒々とした雰囲気が一層されている。
簡潔に言えば、人間味が有る。
「生前の睦月に似なくなる」
朔夜のその言葉にサクラは眉をしかめた。
そして、ハッキリと言い放つ。
「私が好きなのは朔夜さんです。睦月さんでは無いですよ。本当に、朔夜さんは昔から馬鹿なんですから。私言いましたよね「あなたの事が大好きよ。一目惚れなの」って。忘れてましたか? 」
そんなサクラの言葉に朔夜は泣き笑いのような複雑な表情で、
「そうだったね、うん、そうだった…… 」
と、言ってサクラをそっと抱きしめた。
そしてサクラも朔夜を抱きしめ返した。
そんな甘い甘い2人の邪魔をする声が。
「なぁ、お取り込み中悪いんだけど、ゆず、お前右腕動くか? 」
「無粋だな、孝弘。動くわけ無いだろ。さっきの『ひふみ祝詞』で霊雲を集めすぎた。この腕、思った以上に通電が良すぎる。お陰で神経を繋ぐ回路がショートした」
と、朔夜は孝弘と2人しか解らない会話を、サクラの頭の上で繰り広げた。
サクラも、呆然と2人の会話を聞いていた訳では無い。
所々気になる言葉を拾い上げて組み立て、ある事に気が付いた。
朔夜が戦う前までは、彼は私を両手で抱き締めていた。
でも今は左腕だけでサクラを抱きしめている。
右腕はダラリと垂れ下がってぴくりとも動いていない。
「朔夜さん、まさか右腕…… 」
「ん~? 」
惚けた声を出す朔夜の態度に、サクラは確信してしまった。
── 何故か解らないけれど…、朔夜さんの右腕が動いていない。どうして? ──
と、言う事実に。
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