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婚約して6年が達ちました
ひふみの祝詞
しおりを挟む朔夜が唱え始めたのは数のようで、掲げた右手に靄のような物がまとわり付き始めた。
「 よ、 いつ、 む、 なな や 、ここの たり」
靄がゆらゆらとたゆたう。
そしてその靄が金色に発光し始める。
その光景の何と美しい事か。
銀色の髪が、靄の放つ光によって金色に染まり、反射する。
辺りが光り輝くせいと、朔夜の通る声のお陰か人形二体が朔夜の所へと、戦線離脱して来た。
其処には勿論、サクラが居る。
人形の一体は、『翠』こと、睦月で、もう一体は『紫苑』だ。
『おお、サクラ嬢ちゃんではないか。久方ぶりじゃのう。妾を覚えておるかのう?』
「はいっ! お久しぶりです! 紫苑さん」
紫苑の問い掛けに、サクラは元気に答えた。
逸れを朔夜は目を細めてチラリと見やったが、詠唱中なのですぐ男に向き直る。
「布留部 由良由良止 布留部! 」
朔夜がそう祝詞を終えた後、光が右手に集約し、パリッと言う閃光の後、ドンと言う押し出されるような勢いで光が男を直撃した。
光は男を通り抜け、彼と同じ大きさの黒い物体をはじき出した。
「我が前に三つ鏡」
朔夜が言うと光が三方に分かれて黒い物体を取り囲んだ。
それは光を吸収し、再度、朔夜が放った数倍もの光を照射し、トライアングルの結界らしきものを形成した。
それがどんどん幅を狭くし、小さくなっていく。
そして黒い物体は小さく小さくなった後、コロンと地面を転がった。
それと同時に光が小さくなり、何時しか鏡も消えて無くなっていた。
其処で朔夜が初めて抱き留めていたサクラを解放した。
抱き留められていた腕と身体の温もりがスッと離れる事が、何故こんなにも寂しくなるのか。
朔夜に再会するまで、とんとこんな感情なんて無かったのに、出逢った途端こんな具合だ。
げせぬ……。
逢えない気持ちが拗れてしまったのかしら?
サクラは目線を外す事無く、麗しの婚約者殿を見つめていた。
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