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社交の場

小さな粛正者くん。

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男の子がサクラから離れると、彼にアンティークドールが近寄ります。

男の子より少し身長が低い程度の人形です。

その人形がサクラを見つつ男の子のすぐ後ろで止まりました。


「ありがとね、紫苑」 

『なんの、朔夜の頼みじゃからの』


不思議な喋り方に、サクラは首を傾げます。

そしてそのまま朔夜と呼ばれた男の子を見ます。


「あのおじさんからたすけてくれたんだよね。ありがとう」


サクラはペコリと頭を下げます。

男の子がにこりと笑うと、ちょうど、振り袖の女の人と『銀色の粛正者』がやって来ました。


「ストレイン侯爵、大丈夫でしたか? 」

「あぁ、問題無い。この小さな粛正者君のおかげで娘は傷ひとつ無かったよ。ありがとう。彼自身は君の息子かね? 」


ソートの口調は何時になく柔らかい。

非戦闘員ながら、ソートも彼の同業者な訳で。

同じ釜の飯を食う仲間なのです。

声音も緩くなると言うモノですね。

厳しかった表情の彼も、顔を緩めると柔和で飄々とした雰囲気の青年に変わりました。

そのギャップに、サクラは大変驚いてしまいました。


「この子は僕の弟です。少し年の離れた弟なんですけどね」

「ほぅ、弟君かね……… 」


ソートがしゃがんで、男の子と同じ目線にまで身体を屈めます。

そして、笑顔で言いました。


「うちの娘を助けてくれて、あらりがとう『小さな粛正者』くん」

「いいえ……… 」


ソートの圧倒する美貌に、ずいっと顔を寄せられて、男の子は思わずカチンと固まってしまいます。

クスクスクス、サクラが笑いました。

だって、ねぇ、そりゃあ、サクラは慣れてますもの。

ソートの暴力的美貌と言う奴に。

男の子の兄も、ソート以上の美貌の主ですが、基本のほほん系ですから、笑顔をみせても『氷の微笑』では無いんですよね。

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