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前世の記憶と今の記憶
①
しおりを挟む私が前世の記憶を取り戻したのは、5歳の誕生日を迎えた頃だった。
前世の私は勿論女で、雛と言う名前だった。
何故死んだのか、何時死んだのか、よく解らなかったが、優しくて綺麗な姿をした夫がいた事だけは、鮮明に覚えている。
私達は本当に仲の良い夫婦で、生まれ変わってもまた夫婦になりたいねと語り合っていた。
そんな雛が死んで生まれ変わったのが私、サクラ。
そして今、彼がどこでどうしているのか、転生しているのかいないのか現段階では解らない。
私、5歳だし。
それよりも、前世の経験を生かし、今世を乗り切ろうと思いきや、定番の異世界転生だと思って、ヤリ漁り、見漁り、していたゲームに小説。
それにこの世界、一切、かすりもしていません。
あぁ、前世の記憶、今の所役にたちそうに有りません。
この世界は、異世界であってもヒロインになって王子様や他の対象者達との恋愛を楽しむ逆ハーゲームでも無いし、何冊も読み漁った小説の世界観にも似たものさえ無い。
だって、この世界には……。
私は外に出て空を見上げた。
空には逆さになった大地があった。
そして彼方にもきっと空にこの世界が浮かんでいる事だろう。
一体どんな重力法則なのか?
この世界の空には、別の世界が広がっていた。
こんな非常識な世界、大好きなゲームにも小説にも漫画にも、無かったわよ!
と、私は叫びたい。
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