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貴方の暗闇── 真紘の独白 ──

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本当は、違うんだ。


総て、違っていた。



釦の掛け違い…………


そんなモノかも知れない…………。











知らないんだろうね。


柚芽は。


実は、亜依とは俗に言う『仮面夫婦』って奴だと言う事を。

最初から俺達は、互いに愛し合って等いなかった。

俺にとって亜依は、憎しみの対象でしかなくて、亜依にとっての俺は、結芽を苦しめる為の手段だった。

それ程にお互い愛情なんて無かったのに別れる事はなかった。

俺には、深く思っていた女がいたから。

別れたら、彼女と生きる道が閉ざされる事だろう。




そう。




俺が心底愛して止まない女は、亜依じゃない。

彼女と育んでいた思い。

一つの思いで繋がっていた、俺達の心と身体。

逸れを、無情にも無理矢理引き裂き壊したのは、亜依。




柚芽が天使なら、亜依は悪魔。


彼女が光なら、あの女は闇。


亜依が惚れているのは……。


男の俺では無く、己と瓜二つの実妹。


亜依が愛しているのは柚芽。


憎んでいるのも柚芽。


柚芽の想いに気付いていた亜依は、当時、結芽の恋人だった俺を陥れ、彼女を苦しめた。





亜依は、自分だけしか愛せない女だったんだ。







ある日、俺は柚芽にプロポーズする為に、彼女を電話で呼び出した。


夜景の綺麗に見える高台。


初めて結芽をデートに誘った思い出の場所。


俺達は、本当に仲が良くって、俺自身、結芽と亜依を間違える事なんて一度もなかった。

あの2人が隣同士並んでいても、俺は結芽を間違える事はなかったんだ。

そんな俺が、簡単なミスを犯した。

結芽の携帯に電話を掛ける。

彼女を呼び出す電話。

彼女の携帯に電話してるんだから、出たのは彼女。


そう思い込んだ。


それが、俺のミス。


電話口の明るい声に、俺は柚芽だと疑わなかった。

だが、電話口に出たのは…………。


亜依。


そして、そんな事も気付かずに待ち合わせ場所を指定して、やって来たのが亜依だった。




『どういう事だ、亜依? 』

『私を選んで貰うわよ。真紘。柚芽に幸せかが来るなんてもってのほか。あの子には、泣いて、泣いて、絶望して貰うの』




可笑しそうに、楽しそうに笑う亜依に背筋が寒くなる。




『何で!? 結芽はお前の妹だろ? 』

『ええ、そうよ。どうしようも出来ない位、妹よ。私は、柚芽が憎いのよ。憎い、憎い!! 真紘、私を選びなさい、私を選ばなきゃ、結芽を殺して、私も死んでやるわ。私が死んだら、結芽は男達の中で輪姦(まわ)されて、陵辱されて、闇の世界に売られるの。あぁ、可笑しい!! 貴方にあの子は守れないわ。ふふふふ、あはははは!!』

『亜依、お前っ! 』




亜依は狂ってる。

正気と狂気の狭間で。


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