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揃う
話し合い⑥
しおりを挟む「なっ、何? フィリー? 」
思わずピクッと肩を震わせたアイセンレイトは、優雅に座ってお茶を嗜むフィリーを見やった。
この妹は、何時も何か突拍子も無い事を提案して来る。
的を射た内容も時にはあったりもするが、大概が斜め上を行くか、明後日に飛んでいったような事ばかりだ。
だからか、アイセンレイトにしてみれば、フィリーの言う事はトラブルを引き起こすであろう事としか思えなかった。
だから、
「あのねぇ、石を総て揃える必要があるんだけど、晴明おじいちゃんに女禍様の身体を造って貰うって言うのはどうかなぁ? 」
フィリーの言葉に思わず「はあ? 」と、呆れた声を上げてしまったアイセンレイト。
その態度に、周りの目が一斉にアイセンレイトに集まった。
フィリーの言った事は、当たり前だが兄妹間でしか通用しない。
だから皆アイセンレイトを不思議そうに見たのだが、話は説明される事無く進んで行った。
「お前なぁ、全部って、妲己がもって逃げた奴も含むんだよな」
「うん、そうだよ。当たり前じゃん」
「それ、無茶振りだからな。妲己の事だ、きっと女禍の欠片は取り込み済みの筈だよ」
そうアイセンレイトが言うと、フィリーは、顎に指を当ててう~んと考えている振りをした。
「だったらぁ、取り込んでるって言うなら、取り出せば良いじゃん。うん、そうだよ! 」
そう言って(最後には叫んで)、フィリーはまくし立てた。
「お兄ちゃん(ラスティエル以外の前ではにいにいと呼ばない。一応)! お兄ちゃんが取り出せば良いんじゃ無い!」
それはそれは、得意気に、良いこと思いついた!と、どや顔で言い切る妹に、珍しく兄はあからさまに嫌そうな顔を隠しもせず声を上げた。
「はぁ!? 」
フィリーの言葉が余程ぶっ飛んでいたのだろう、アイセンレイトからは耳を疑う! とでも言うような声が出た。
「無理無理無理無理、無茶言うなぁ! 」
お兄ちゃん、威厳、消し飛んでますよ。
そんなアイセンレイトの言葉と態度にラスティエルは目を見張ったが、その後、ふっと笑った。
もう一つ、ラスティエルの知らないアイセンレイトを見る事が出来たから。
気取らない、素面のアイセンレイトが其処に居た。
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