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揃う

兄と妹

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『当たり前でしょ。って言うか、昔教えられたでしょ、生まれわりと、生まれしの違いについて…… 』

「あ~、何かそんな事習った気がする…… 」


テヘヘヘと頭を痒くフィリーに対し、アイセンレイトは溜め息を吐く。


『ちゃんと勉強しないとね、フィー。家には産まれ直しが居るから、面と向かった時驚かないようにと、父上に教わったと思っていたんだけど違ったのかな? 我が家の妹君は? 』

「うん、違わな~い。確かにお兄ちゃんがそうだとは聞いていたけど、聞くと見るとでは大違いだね~っ!! 」


と、フィリーのノリは如何せん軽い。

空気より軽い。


『お前は…… 』


思わず頭を抱えるアイセンレイトだが、顔をずずいっと近付けたフィリーに、思わずたじろいだ。


「にいにいは、にいにいなんだねぇ……。見た目は違っても、にいにいには変わりないね。フィーは昔のにいにいなんて知らないからな~んも解んないけど、昔のにいにいが居て、今のにいにいが有るのは解るから。うん、あたしはにいにいが大好きだよ! 」


屈託なく笑う妹に、アイセンレイトは目を見張った。

そしてゆっくりと、まるで花が綻ぶように、目を細めて口角を上げたのだ。

彼の過去を知る者が今の彼の微笑みを見れば、は変わったのだとさとる事だろう。

薬師が目論んだ、『環境に配慮し、慈しみと慈悲あいじょう持って育てれば悪神でさえ善神へと変わる』持論は、ほぼ成功と言って良いのだろう。

哪吒は変わったのだから。


『フィリー、後を頼むよ。特に、僕の番の事を…… 』

「うん、任せて~! にいにいも思う存分暴れてきて。当たって砕けろ~って!! 」

『いゃ、それ、使い所が違うから…… 』


えいえいお~!と力強く拳を振り上げるフィリーに、間髪入れずに突っ込むアイセンレイトの兄妹は、端から見ても仲が良い。

2人の様子を何気に見ていた太公望は、アイセンレイトの姿で微笑ましく表情を変えた。

はぁ、と、肩を落とし息を吐くアイセンレイトは、気持ちを奮い立たせたのか、顔を上げると太公望とフィリーに目を向けて、


『それじゃあ、行ってくる』


と、言った。

その間に、大切な番に目をやるのも忘れない。

彼女は、丁度会話が終わったのか、ピクリと身体を震わせて正気に返った所であった。

トンと軽やかに地面を蹴り上げるレイトの視線と、顔を上げたラスティエルの視線が交差する。
目を見張るラスティエルに、アイセンレイトは微苦笑の形に笑むと、大切な番に


『フィリーと一緒に、大人しく待っているんだよ』


と、一方的に言い置いて空高く駆け上がって行った。

後に残されたのは、呆然と佇むラスティエルと、彼女を案じるフィリーと太公望の2人であった。
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