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動き出す

フィリーの変態さん

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「兄様っ!! もうお姉様に子供作らせたのぉぉぉ~っ!? 」


殆どムンクの叫び、的な? 

そんな表情で叫ぶフィリーに、きっとアイセンレイトが聞いたら頭を抱えるに違い無い。

もっと頭を使えと、言いながら。


「違いますわ。アイセンレイト様と2人、協力し合ってこの藤華を育て、産まれさせたのですよ。藤華は桜の精霊ですのよ」


そうにっこり笑ってラスティエルが否定を口にする。


『そおお~だよねっ、フィリー、失礼ですよっ。アイセンレイト様って意外と女性にはへっぽこなんですから、結婚もせずに孕ませる何て事絶対に、無い無い』


いやいや、お前、言い過ぎです。

いくら何でも、本人がいたら首締められますって。

まぁ、ぬいぐるみだから死にませんけど。

そんな1人と1匹にラスティエルはクスリと笑うと、


「椅子も出来ましたし、お食事も並びましたわ。お二方、食事に致しましょう」


縦に三段並んだスコーンやパンケーキに、サンドイッチの皿とティーセットを見てフィリーは、目を輝かせた。


「うわっ、美味しそぉ~~っ! 」


テーブルの側にはティーセットのワゴンに侍女が独り、堂に入った手付きで紅茶を注いで居る。


「しっかし、にいにいって、いつの間にこんなに使用人揃えたの? 前に来た時はこじんまりとした家ににいにいとフェンリルのライしか居なかったのに…… 」

「アイセンレイト様が、護衛隊長の大怪我を治して下さったからですわ。皆様、元騎士で御座いますのよ…… 」


ラスティエルは、フィリーの問い掛けにわざとそう答えた。

本当は、ラスティエルの命を狙った集団で、主の報復で隊長を傷つけられた者達なのだ。

逸れを、ラスティエルとアイセンレイトの情けで隊長だけでなく自分達までも助けて貰ったのだ。

その場事実をラスティエルは無かった事にしたのだ。

侍女は泣きそうになるのをこらえ、頭を下げてその場を下がった。

フィーはラスティエルの言葉に方眉を上げたが、別に彼女の言う事を否定する必要も無いかと思い、にっこりと笑ってサンドイッチに手を伸ばしたのだった。


── お姉様がそう言うんだもの。わざわざ否定する必要も無いでしょ ──


流石にフィーとて神の端くれ。

ラスティエルの優しい嘘に気が付いていた。




食事が無事終わった頃、フィリーが何気なくラスティエルに言った。


「お姉様、私ね、お近付きのしるしに変わった石を持って来たの。加工して指輪かペンダント、どちらかにしようね? きっと似合うって思うんだぁ…… 」


と言って、逸れを身に付けたラスティエルを想像してみた。


── きっと可愛い……。尊い ── 


じゅるっと、涎が出そうだった。
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