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動き出す
アイセンレイトと伏義
しおりを挟む「ちょっと待て……。太公望って、あの? 」
「ふむ。あのでは解らんが? 」
「姜子牙? 」
「うむ」
「伏義? 」
「お主、良く知っておるのう…… 」
「嫌、ちょっと待て、それって『封神演義』…… 」
呆然とした儘掛け合いを続けていたが、アイセンレイトは太公望が放った次の言葉を聞くと、妙に脱力感が沸いてきてがっくりと、気を落としてしまった。
その位、あっけらかんと言われてしまったのだ。
「その話は既に終わっておる。此処に来たのは、まだ記されてもおらん、儂でも先が見えん物語じゃよ……。何じゃ、此処は世界規模に比べて神が多いのぅ。え~、お主、名は何という? 」
と。
勿論、この御仁、ふざけて等いない。
太公望と言う男は、書外こういう男なのだ。
「アイセンレイト……ですけど…… 」
と、微妙な間を開けて名を言う彼も、嫌々感丸出しだった。
「あからさまな嫌がり方じゃのう。だが、そなたも否応無く巻き込まれる事になる。そなたの奥方が妲己に狙われておるからの」
「は? それって、どう言う事だ? 」
アイセンレイトに取って、それは聞き捨てなら無い事だった。
何で妲己が此処にいる? そう考えるが答えは見えて来ない。
何せアイセンレイトは、今日此処で初めて太公望と会ったのだ。
この箱庭世界で何が起ころうとしているのか、解る筈が無い。
それに、ラスティエルが妲己に狙われる理由もだ。
何せ接点が皆無なのだから。
「まぁ、妲己とは言ったが、本当の所、アレが本当に妲己なのかも解らんしのぅ…… 」
「全く話が読めない。知ってる事を総て吐け! 」
アイセンレイトは痺れを切らして太公望に掴み掛かる。
些か乱暴では有ったが、番が絡んだのでは致し方有るまい。
「まてまて、コレでは話にならん。手を離すのだ。順序立てて話すから、掴んだ手を離すのだ。アイセンレイト」
言われてアイセンレイトは掴んだ手を放す。
太公望はフゥーッと息を吐くと、アイセンレイトを見て釣り竿を置いた岩場に座り込んでポンポンと隣を叩いた。
お主も座れと言う合図だった。
「さて、何処から話したものかのぅ。やはり、儂の妹にして、妻でもある女禍の事から話せばなるまいか…… 」
そう言って太公望は、基、伏義はアイセンレイトを見やった。
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