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動き出す
恋人達
しおりを挟む所変わって、此処はラスティエルの居室である。
すっかり人数の増えたアイセンレイトの屋敷は(家から屋敷の規模に拡大してしまった。それも1日で)、夕方であっても賑やかだった。
そしてラスティエルには、彼女専属の侍女が出来た。
まだまだこの家では、侍従や侍女は数が少ないのに、専属など悪いと思ってアイセンレイトに言ったのだが、「仮にも公爵令嬢を預かっているのだから、専属侍女は必要です。護衛も兼ねてね」と、言われ首を縦に振らざるおえなかった。
主であるアイセンレイトには侍従は付いて居ないと言うのに、と、ラスティエルは思ってしまう。
そんなアイセンレイトが、ラスティエルにもう一人、護衛に来るとラスティエルに言ったのは、食後のデザートを頂きながらの合間であった。
その人物はアイセンレイトの実の妹さんであると聞いてラスティエルは不安になった。
「嫌われたりしないでしょうか? 」
「大丈夫だよ。ラスならフィリーもきっと気にいるし、ラスもフィリーを気に入るよ。きっと。何せあれは、可愛いものと愛くるしいものには目が無いからね」
そう言われて、ラスティエルは首を捻った。
コキンと首を倒した仕草が可愛い。
人によってはあざといと言うかもしれないが、彼女からはそんな風には読み取ることは、出来なかった。
要するに、天然なのだ。
「さて、此処からが本題。僕は2、3日此処を留守にする事になった。森に少し異変が生じて、その調査になるんだが、レイも一緒に連れて行くから、君にはこの屋敷を管理していて欲しい。此処はもう君の家だからね。騎士達や、ギディウスやスウェンも居るけど彼等はあくまでも人間だ。何が起こるか解らないからフィリーを呼んだ。あの子はあれでも神の一員だからね。あの子を、そう簡単に倒せる生き物は居ない。だからあの子と一緒に居て…… 」
じっとラスティエルを見詰める瞳は、艶を放ち赤く瞬く。
ラスティエルは思わずその瞳に捕らわれ、吸い込まれそうになった。
「はい。アイセンレイト様の仰る儘に…… 」
そう返事を返すラスティエルに、アイセンレイトは柔らかな微笑みを見せると、彼女の額に唇を落とした。
翌日の早朝、アイセンレイトはレイを伴って屋敷を出た。
窓辺から、彼を見送る姿をアイセンレイトはふと見止めると、手を振りながら、とんっと大地を蹴って天空を飛翔した。
その様子を彼女は目を見張り、そして、にこりと笑って、
「行ってらっしゃいませ。アイセンレイト様。御武運を…… 」
そう言って手を振り返えした。
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